2019年4月18日16時33分付で掲載した「三度目が見えてきた?」の続きのような記事になります。
今日(2019年5月11日)の朝刊には掲載されていないようですが、朝日新聞社が今日の1時9分付で「萩生田氏、消費増税『決まったからやる、ではない』」として報じています(https://digital.asahi.com/articles/ASM5B7R22M5BUTFK01X.html)。
この記事には「自民・萩生田光一幹事長代行(発言録)」という小見出し(?)も付けられています。どうやらインターネット番組での発言のようで、引用(?)の引用になってしまいますが、消費税・地方消費税の税率引き上げについて「決まっているから、なりふり構わずゴールテープを切るという姿勢はよくない。どんな小さな数字の変化も政府は謙虚に受けとめるべきだ」という趣旨の発言がなされたようです。また、「新たな経済対策や税の仕組みの見直しなど、消費税が上げられない環境になったとしても、政策が足踏みしないようにしないといけない」、さらに「アベノミクスを続けてきて、地方や中小企業にうまくタッチできていない部分があって、微調整をしないといけないと思う。国民のみなさんに税負担をお願いするのは謙虚でないといけない」とも述べたようです。
萩生田氏はアベノミクスが成功しているという立場をとるのでしょうが、それなら何故、統計で改ざんなどが行われたのかを説明してほしいものです。それは脇に置いておくとして、内容そのものは大筋で正しいとも言えるでしょう。「決まったから必ずやらなければならない」というものでもなく、むしろ大局を見極めて舵取りを調整しなければならないからです。
しかし、発言内容の評価は、周囲の状況とも合わせて行われなければなりません。科学的な正しさと政治的な正しさとは異なるということです。付け加えるならば、再々延期ではなく、中止を選択し、その上で仕切り直しをすべきです(このことは、私が自治総研464号(2017年6月号)掲載論文で述べています)。
そして、仮に消費税・地方消費税の税率引き上げ再々延期を行うとしても困難性は高くなったと言わざるをえません。昨日(5月10日)の朝日新聞朝刊3面14版に「『高等教育無償化』成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決」という記事が掲載され、今日の朝日新聞朝刊3面14版に「『高等教育無償化』成立」という記事が掲載されているところからわかるように、5月10日に「大学等における修学の支援に関する法律」(内閣提出法律案第21号)が可決・成立しました。この法律は、施行について消費税・地方消費税の税率引き上げを前提としています。附則を見てみましょう。
まず「施行期日」という見出しが付けられた第1条です。次の通りです(以下、条文の引用に際しては、原文の漢数字の一部を算用数字に改めました)。
「この法律は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日の属する年の翌年の4月1日までの間において政令で定める日から施行する。ただし、次条及び附則第14条の規定は、公布の日から施行する。」
次に「政府の補助等に係る費用の財源」という見出しが付けられた第4条です。次の通りです、
「次に掲げる費用の財源は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律附則第1条第2号に掲げる規定の施行により増加する消費税の収入を活用して、確保するものとする。
一 学資支給に要する費用として独立行政法人日本学生支援機構法第23条の2の規定により政府が補助する費用
二 減免費用のうち第10条(第1号に係る部分に限る。)の規定による国の支弁又は第11条の規定による国の負担に係るもの」
今国会に提出されている法律案には、他にも消費税・地方消費税の税率引き上げが前提となっているものがあります。やはり5月10日に可決・成立した「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」(内閣提出法律案第15号)です(他にもあるかもしれませんが、今回はこの1つで止めておきます)。
子ども・子育て支援法は、その内容に国家財政・地方財政に関するものを含んでいます(当然のことです)。その改正案の第17条は「子ども・子育て支援臨時交付金の交付時期」という見出しの下に「子ども・子育て支援臨時交付金は、平成32年3月に交付する」と定めています。
〈余談ですが、今月1日の改元で「平成32年」は永久に到来しないはずですが、何故に令和2年に改めなかったのか、不思議な話です。この法律案は改元が発表された後の4月3日に衆議院内閣委員会での審査が終了しており、9日には衆議院本会議で審議の上で可決されています。その段階で修正案を出して決めればよかっただけの話であり、施行後に何度も「平成32年」=令和2年と読み替えなければならないのは面倒なことでしょう。小さいかもしれませんが立法府の怠慢というべき事態です。〉
第18条以下も「子ども・子育て支援臨時交付金」に関する規定であり、第21条は「交付税及び譲与税配付金特別会計における子ども・子育て支援臨時交付金の経理等」という見出しの下で、次のように定めています。
第1項:「子ども・子育て支援臨時交付金の交付に関する経理は、平成31年度に限り、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下この条において「特別会計法」という。)第21条の規定にかかわらず、交付税及び譲与税配付金特別会計(以下この条において「交付税特別会計」という。)において行うものとする。」
第2項:「子ども・子育て支援臨時交付金総額は、特別会計法第6条の規定にかかわらず、一般会計から交付税特別会計に繰り入れるものとする。」
第3項:「特別会計法第23条及び附則第11条の規定によるほか、前項の規定による一般会計からの繰入金は平成31年度における交付税特別会計の歳入とし、子ども・子育て支援臨時交付金は同年度における交付税特別会計の歳出とする。」
第22条は「基準財政需要額の算定方法の特例」という見出しの下で、次のように定めています。
「地方財政法(昭和23年法律第109号)第10条第33号に掲げる経費のうち、平成31年改正法の施行により増大した平成31年度における地方公共団体の子どものための教育・保育給付及び子育てのための施設等利用給付に要する費用については、同法第11条の2の規定にかかわらず、地方公共団体に対して交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入しない。」
以上は本則(の改正内容)ですが、以下は附則です。第1条は「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」の施行期日を、原則として「平成31年10月1日」としています(勿論、2019年10月1日のことですから「令和元年10月1日)と衆議院の段階で修正しておけば済んだ話です)。また、第2条は「施行前の準備」に関する規定です。
また、第12条は「特別会計に関する法律の一部改正に伴う経過措置」という見出しの下で、次のように定めています。
「前条の規定による改正後の特別会計に関する法律の規定は、平成31年度の予算から適用し、平成30年度の収入及び支出並びに同年度以前の年度の決算に関しては、なお従前の例による。」
既に施行されている「平成31年度予算」は、当然、特別会計に関する法律の一部改正を織り込んでいるはずです。そのためだけではありませんが、税率引き上げの再々々延期を行うとすれば即座に補正予算を作成し、国会の議決を経なければならなくなります。多くの法律についても措置をとらなければなりません(何本の法律について措置をとらなければならないことか)。
子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」の附則に戻ります。第16条は総務省設置法の一部改正に関する規定で、同法附則第2条第2項に掲げられる表(上の欄に示された期日までの間に、下の欄に示された事務を所掌する、というもの)を修正するものです。この改正により、同表は次のようになります(便宜のため、表の上の欄の年月日表記に西暦および令和を付加しました。また、上の欄の期日と下の欄の事務との間に「:」を打ち、下の欄の事務については「 」付きで引用します)。
2019(平成31)年3月31日:「奄美群島(奄美群島振興開発特別措置法(昭和29年法律第189号)第1条に規定する奄美群島をいう。)の振興及び開発に関する総合的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること。」
2020(平成32=令和2)年3月31日:「子ども・子育て支援臨時交付金に関すること。」
2021(平成33=令和3)年3月31日:「過疎地域(過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)第2条第1項に規定する過疎地域をいう。)の自立促進に関する総合的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること。」
(以下は省略します。)
また、「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」附則第16条は、地方財政審議会の所掌事務の特例を定める総務省設置法附則第4条の一部改正を定めています。これによると、総務省設置法附則第4条に次のような第3項が追加されます。
「地方財政審議会は、第9条及び前2項に定める事務をつかさどるほか、平成32年3月31日までの間、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。この場合においては、同条第2項及び第3項の規定を準用する。」
書きながら少しばかり思いだしたのですが、たしか昨年のこと、消費税・地方消費税の税率引き上げの目的に教育の無償化などが追加されました。「大学等における修学の支援に関する法律」は、或る意味で今国会の「目玉」とも言えます。また、「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」も通りました。ここまで外堀が埋められたら、再々々延期は相当に困難でしょう。
勿論、ちゃぶ台返しは何時でもありうることです。しかし、今回、もし税率引き上げの再々延期を行うとするならば、返された御飯やおかずの量が多すぎます。そして、延期を何度も行うような政治は、国内からも国外からも信用されません。現在の政権は或る意味で外交など国外からの目のほうを(株式市況などを除いて)国内からの目よりも重視しているため、致命傷などになりかねません。
そして、私が今回を含めてこのブログや自治総研掲載論文で記したように、再々延期ではなく、中止を選択すべきです。最後に、自治総研464号(2017年6月号)掲載論文に記したことを引用しておきます(原文に付した注は省略します)。
「現在、国の債務残高が1,223.5兆円、対GDP比で221.1%に達している。基礎的財政収支の状況とも併せれば、『経済再生なくして財政健全化なし』ではなく、『財政健全化なくして経済再生なし』と考えるべきであろう。このことからすれば、消費両税の引き上げについては、少なくとも『二度あることは三度ある』という選択をなすべきではない。これでは最初から税率引き上げの意思が欠如していたことと同義になるし、国際的にも日本は財政再建をする気力もなければ能力もないという評価を受けることとなろう。やや遅きに失し、かつ、短期的には国民生活に打撃を与えるかもしれないが、『三度目の正直』 を選択すべきであろう。
あるいは、平成29年度以降の経済情勢などに鑑みて消費両税の税率引き上げを行うことができるような状況でないというのであれば、再々延期ではなく、中止を選択すべきである。その上で、所得税制、法人税制、資産税制など、全般にわたって根本的に見直しを行うべきこととなる。」