ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

法律で首都圏の大学に対して厳しくしたところで

2019年05月16日 00時03分50秒 | 受験・学校

 昨年制定された「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」(平成30年法律第37号)により—というより、実は制定以前から措置として行われていたことですが—東京都23区域にある大学の定員管理が非常に厳しく規制されています。

 しかし、どれほど意味のあることなのでしょうか。

 たまたま、西日本新聞社のサイトを見たら、昨日(2019年5月15日)の6時付で「地方私大の閉校相次ぐ 自治体が誘致、計画の甘さ浮き彫りに…進む淘汰」という記事が掲載されていました(https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/510113/)。今日の朝刊に掲載されていた記事でしょうか。

 読んでみると、直接的には福岡県みやま市にある保健医療経営大学が「2020年度の新入生募集を停止することが14日、関係者への取材で分かった」ことがきっかけとなっているものです。保健医療経営大学のサイトにはまだ何も書かれていませんが、4月15日付で「資料請求をいただいた皆様へ」というページがあり、「現在、本学において調整中につき、後日、追ってご案内申し上げます」と書かれていました。少しばかりは首を傾げる表現です。

 地方公共団体が大学を誘致し、あるいは設置に関わることは少なくありません。とくに1980年代以降に「地域活性化」のために行われたことです。どこかで最近聞いたような話ではないでしょうか。「地方創生」と言葉は変わっていますが、行われていることは30年前と変わらないということでしょう。

 しかし、大学の誘致が「地域活性化」につながったかといえば、控え目に口にすれば「必ずしもそうではない」ということになります。さしあたり、昨年の2月に公人の友社から刊行された高寄昇三『「ふるさと納税」「原発・大学誘致」で地方は再生できるのか』をお読みいただくことといたしましょう(私は、刊行されてすぐに、田園都市線青葉台のブックファーストで見つけ、購入しました)。

 上記西日本新聞社記事によると、保健医療経営大学の場合は、元々、瀬高町(2007年1月に山川町および高田町と合併してみやま市になりました)が用地を無償提供する予定であったそうです。皮算用という言葉を使ってよいものかどうかわかりませんが、660人の学生が集まり、学生向けのアパートが建設されるなどということでおよそ16億円の経済効果が見込まれたといいます(ちなみに、入学定員は80名で収容定員は320名です。660人という数字はどこから生じたのでしょうか)。しかし、実際には全くその通りにならなかったという訳です。むしろ、最初から見通しが甘いと思われたのでしょう。2007年3月に行われたみやま市長選挙で新市長が選ばれた結果、用地の無償譲渡は貸与に変更されました。

 福岡県では、2007年度に東和大学(福岡市南区)が募集停止(2011年に閉校)、2011年度に福岡医療福祉大学(太宰府市。当初は第一福祉大学)が募集停止(2014年に閉校)、2015年度に福岡国際大学(太宰府市)が募集停止(2018年に閉校)となっています。事情は様々でしょうが、厳しい状況です。

 以前、このブログでも成美大学→福知山公立大学(2016年4月より)の話を取り上げました。他にもいくつかの例があり、公立化したことで志願者が増え、倍率もアップしたそうです。しかし、この手を使える所は、もうそれ程多く残されていないでしょう。また、長期的な効果の有無も不明です。

 上記西日本新聞社記事の図表を見てわかることですが、2010年度以降に文部科学省が廃止を認可した大学は各地方に存在しています。東京都では日本伝統医療科学大学院大学(新宿区)、映画専門大学院大学(渋谷区)、聖母大学(新宿区)および東京女学館大学(町田市)があります。また、兵庫県では神戸ファッション造形大学、聖和大学、聖トマス大学および神戸夙川学院大学があります。そう言えば、最近、神奈川県は大和市にある聖セシリア女子短期大学が学生募集の停止を決めました。東京圏だから、京阪神地区だから、という理由で学生が集まるとは言えないことはおわかりでしょう。

 20世紀中にも大学や短期大学の閉校の例はありましたが、21世紀に入ってから多くなったのは事実でしょう。目に付くところは首都圏および京阪神地区以外の地方です。しかし、だからといって東京圏の大学を集中的に狙うことは、端的に的外れと表現せざるをえません。

 いつにもまして、まとまりのないものとなりましたが、今回はこれにて失礼をいたします。

コメント (5)
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