ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

2008年8月4日、方南町駅周辺

2020年09月23日 00時00分00秒 | まち歩き

 最初のお断りです。今回は、「待合室」の第279回「方南町駅周辺(その1)」(2008年8月10日〜17日掲載)、第280回「方南町駅周辺(その2)」(2008年8月17日〜23日掲載)および第281回「方南町駅周辺(その3)」(2008年8月23日〜30日掲載)を一本化して再掲載します。なお、文章の内容は2008年8月当時のままとしています(丸ノ内線は2020年に大きく変わりました)。

 

 (その1)

 神奈川県の北東部、川崎市に生まれ育った私は、現在までの約40年間、何かと言えば多摩川を渡り、東京都内に行き続けました。そのためなのか、東京都内で、地下鉄などで行ける場所であれば、取り上げてみたくなります。

 もっとも、東京都内の地下鉄の全路線を利用したことがあるとは言え、その全ての駅を利用した訳でもありませんから、知らない駅もあります。また、周囲を歩いてみても面白くもなさそうな駅も少なくありません。そのような中で、今回取り上げる、杉並区にある小駅の周辺は、なかなか味わいのある場所です。私はおよそ10年ぶりに訪れましたが、あまり変化がなかったのがうれしく感じられました。

 今年の4月から、大東文化大学大学院法学研究科博士課程前期課程(修士課程)には、私を指導教員とする院生が数名おります。その院生諸君と、この小駅の近くにある租税資料館(中野区にあります)へ行きました(ちなみに、この小駅に集合ということにしておりました)。その折、少し早く着いたので、駅の周りを歩いてみることにしました。

 東京メトロ丸ノ内線については御存知の方も多いでしょう。池袋から、後楽園、御茶ノ水、東京、銀座、霞ヶ関、新宿を通り、荻窪へ走る路線で、東京で2番目に開業した地下鉄です。しかし、この路線に、途中の中野坂上から方南町までの支線があるということを御存じない方は少なくないのではないでしょうか。知っていても利用したことがないという方も多いはずです。

 中野坂上で本線の電車を降りると、真ん中に3両編成の電車が止まっています。これに乗ると終点の方南町に到着します。途中駅は全て中野区にありますが、この方南町駅だけは杉並区にあります。もっとも、この駅から東へ5分ほど歩けば、中野区に入ってしまいますが。

 上の写真は、方南町駅の東口(中野富士見町側)を撮影したものです。地下鉄の駅なのに、通りに面しておらず、路地裏に入ったような場所に入口があります。このような駅は、東京都内では珍しいでしょう。少なくとも、類例を知りません。日比谷線の広尾駅も小さく、しかも改札口は地上にありますが、外苑西通りという道幅の広い道路に面しています。しかし、方南町駅のこの入口は、方南通り(この通りの下に改札口やホームがあります)に面しておらず、商店間にある細い空間が路地裏のようになっているのです。

 少し離れて歩道から撮影してみました。上の写真ではわかりにくいかもしれませんが、手前の右側には写真店、左側には立ち食いそば屋があります。歩道がアーケード商店街になっていて、商店と商店の間から入る、まさに路地裏的な雰囲気となっています。

 このところ、首都圏では駅のバリアフリー化が進んでいます。つまり、駅の中にエレベーターやエスカレーターなどが設置されています。東急東横線は100パーセント、東急田園都市線では95パーセントほどであると記憶しています。東京メトロの多くの駅もバリアフリー化が進んでいます。その中で、この方南町駅は例外的です。そもそも、御覧いただければおわかりと思いますが、この東口にはエスカレーターもエレベーターもありません。車椅子を乗せて階段を上り下りするためのリフト装置もないようです。東口の改札口は天井が低い上にかなり狭く、自動改札機を抜けるとすぐに階段がありますが、そこにはエスカレーターがありません(エレベーターを設置 できる構造にもなっていません)。ホームをさらに進むと方南町交差点側の改札口がありまして、こちらはホームの延長のような形になっているのですが、改札口を抜けると地上までのエスカレーターもなければエレベーターもありません。トイレについても「だれでもトイレ」のようなものはないはずです。

 但し、ホームドアはあります。丸ノ内線の全駅にホームドアがあるためです。もっとも、方南町は、丸ノ内線では唯一、6両編成が入れない駅ですが。

 東口から方南通りの歩道を歩いてみます。朝の9時過ぎですが、いくつかの商店は開いています。手前に八百屋があります。肉屋、魚屋などもあります。こうした個人商店は、今、首都圏でも郊外では見られなくなりつつあります。私が現在住んでいる所でも、かつては商店街に何軒もの肉屋、魚屋、八百屋などがありましたが、現在はほんの数軒しかありません。元々は八百屋などであった店がスーパーマーケットに発展したりしているからです。

 このように、歩道がアーケードとなっているという商店街も、最近では少なくなりつつあります。三軒茶屋の商店街もこのようになっていますが、再開発で規模が縮小しました。あとは巣鴨駅前などが、このようなアーケード商店街になっています。

 この方南通りを真直ぐ進むと中野区に入り、さらに新宿のほうに出られます。逆に進むと環状7号線との交差点があり、さらに直進すると西永福に出られます。

 方南通りと環状7号線との交差点である方南町交差点です。ここは立体交差となっていて、環状7号線の本線はこの交差点の真下を通っています。さらにその下に方南町駅があるという訳です。

 この交差点のそばにも方南町駅の入口があるはずですが、上の写真には登場しません。はたして、どこにあるのでしょうか。それは、また別の機会に。

 

 (その2)

 東京都杉並区の南東のほう、東京メトロ丸ノ内線方南町支線の終点、方南町駅の周辺を歩いています。

 この駅の東口を出て、方南通りを西に進み、方南町交差点に来ました。ここに駅の西口があるというのですが、どこにあるのかわかりません。通常、地下鉄の駅というと、通りに、非常に目立つ標識があるものです。しかし、方南町駅の場合は違うようです。

 世田谷区の新代田駅(京王井の頭線)前など、渋滞箇所が多い環状7号線は、方南町交差点の辺りでも通行量が多いようです。この交差点に立つと、いかに往来が激しいか、音ですぐにわかります。

 実は、都内を車で走ることも多い私は、環状7号線をあまり使いません。単に、目的地などの関係で利用する機会がないだけですが、よく利用する目黒通りを走っていると、環状7号線の情報を東急都立大学駅付近で知ることができまして、それによるとたいてい、 電光掲示板に示される高円寺までの矢印が真っ赤に染まっています。それだけ渋滞が激しい道路でもあるということなのです。

 方南町交差点の東南に立っています。環状7号線の本線が水色のフェンスの下に通っています。奥のほうに行くと高円寺ですが、その手前のほうに、夜スペで有名になった杉並区立和田中学校があるようです。 また、立正佼成会の本部も、この交差点からそれほど離れていない所にあります。

 上の写真の手前のほうに進めば代田橋駅、新代田駅、上馬、そして大森のほうに行くことができます。交差している道路が方南通りで、方南町駅のホームはこの方南通りの真下にあります。

 ようやく、方南町駅西口を見つけました。最初の写真で言えば左側にあるのですが、とにかく目立たない出入口です。エスカレーターもなければエレベーターもありません。車椅子を乗せるためのリフト装置もありません。

 いつの頃からか、東京の地下鉄の各駅にはナンバリングが施されています。これがどの程度まで意味を持っているのか、私にはさっぱりわかりません。わざわざZ01(半蔵門線渋谷駅のこと)とかI24(都営三田線西台駅のこと)などと言いませんし、たとえば大手町駅の場合は丸ノ内線がM18、東西線がT09、千代田線がC11、半蔵門線がZ08、都営三田線がI09となっていて、これら5つの番号が同じ駅を指しているとはすぐに気付きませんので、かえってわかりにくいと思うのです。従業員のために付けられたものであっても、乗客のために付けられたものでないということがわかろうというものです。

 それはともあれ、方南町駅はm03です。mが路線記号で、03が駅番号です。丸ノ内線の路線記号はMですが、方南町支線はmとなっているのです。丸ノ内線の駅番号は荻窪がM01で、そこから順番に付けられています。中野坂上がM06です。これに合わせているため、方南町駅がm03となっているのですが、m01およびm02という駅はありません。

 方南町交差点の西側は杉並区堀ノ内です。交差点を西永福のほうに少しばかり歩きます。すぐに、いい感じのする路地が見えてきます。時間に余裕があると、こういう道を歩くのも楽しいものなのですが、あいにく、私自身が設定した集合時刻までそれほどの間がありません。

 東京には、このように道幅の狭い道路がたくさんあります。上の写真の道路は、まだ広いほうでしょう。しかし、一方通行になっていないとはいえ、とくに緊急の際に双方向から自動車が来たら大変だろうというものです。しかし、ブロック塀の内側には狭い庭に木が生えていて、突き当りにも緑が見えますし、車の通行量も少ないので歩きやすいのです。ブロック塀ではなくて生垣などであればもっと風情がありますが、それを求めるのは贅沢ですが、歩いてみるとその街(町)の雰囲気がよくわかりますし、意外な発見もあるのです。

 世田谷区や目黒区などにも、上の写真に似ている場所がいくつもあります。時々歩きますし、車で走ることもあります。時々、方向感覚を失いそうになりますし、一方通行の道路が多いと大変な目にあうこともありますが、それもまた楽しいというものです。

 ただ、この辺りの路地を歩いて、勘が働くかどうかが問題です。実は、地理的な意味で私が東京23区地域で最も苦手としているのが杉並区と中野区です。どこをどのように通るとどこに行けるのか、ということがよくわかりません。何しろ、大学生になるまで、中央本線の新宿から国立までを利用したことがなかったくらいですし、荻窪を歩いたのは学部生時代の1回だけ(しかも、中央本線ではなく、丸ノ内線で行きました)、中野駅を利用したのは院生時代の1回だけです。小学生時代と高校生時代に吉祥寺に行ったことがありますが、吉祥寺は武蔵野市にありますし、京王井の頭線を利用しましたので中野区を通っておらず、杉並区の久我山、浜田山、永福などを通過しただけです。

 鉄道路線を使うのであれば何とかなりますが、車で走るとなるとさらに大変です。メインストリートですら、あまり通ったことがありません。方南町、永福、高井戸などであればまだわかりますが、久我山で道がわからなくなったことがあるくらいで、杉並区や中野区では抜け道もよくわかりません。とくに西武新宿線の沿線のどこかまで車で行けと言われたら、地図を使って念入りに調べてから出ないと不安が募ります。

 あれこれと書いてきましたが、機会があれば、また歩いてみたいものです。

 堀ノ内から東へ歩き、方南町交差点を渡って方南町に戻り、歩道の商店街(方南銀座)を歩きます。こちらのほうには、私などがなじんでいるようなスーパーマーケットらしいものがありません(西口のほうにはあります)。個人商店が目立ちます。午前10時をまだ過ぎていませんが、既に開いている店も少なくありません。

 方南町駅東口に戻ってきましたが、どこに駅があるかおわかりでしょうか。

 上の写真でも、すぐにはわかりにくいかもしれません。アーケードの屋根から「地下鉄方南町駅入口」という丸い案内板が吊り下げられていますが、小さなものですし、少し暗いと見落としそうです。ヒカリ堂とそば屋との間を入っていくと、前回登場した東口なのですが、本当に商店街の路地を入るような形になっています。この道路の下に地下鉄の駅があるとは思えないような商店街が、もう少し続きます。

 

 (その3)

 生まれてから現在に至るまで、東京都内の地下鉄は、買い物のため、通学のため、仕事のため、その他と、何かと言えば利用しています。副都心線が今年(2008年)の6月14日に開業するまでの時点で、いつの間にか、全路線全区間の利用を済ませていました。副都心線も、東松山校舎からの帰途に利用しています 。そのほうが、高坂から渋谷までの運賃が安いからです。ただ、予想されていたこととはいえ、副都心線の利用客があまりに少ないので「大丈夫かな?」と思ってしまいますが。

 しかし、私が租税法の研究をしていなければ、方南町へ行くことはなかったでしょう。そのため、方南町支線を利用することもなかったでしょう。丸ノ内線の本線を利用することは少なくないのですが、方南町支線となると機会が減ってしまいます。今年(2008年)8月4日に租税資料館へ行くために利用するまでに、方南町支線を利用したのはたったの1回(1往復)でした。もっとも、今後は利用する機会が増えることでしょう。

 さて、これまで2回にわたって朝の方南町駅周辺を歩いてきました。3回目となる今回で方南町の街を歩き終え、本来の目的地へ行こうと思いますが、まだ時間に多少の余裕がありました。

 方南町駅東口を抜け、東に少し歩きます。そして右に入りますと、上の写真のような商店街に入ります。買い物時の夕方にはどのくらいの人がここを通るのでしょうか。

 歩いていると、何となくですが戸越銀座駅前に似ているような気もしますし、戸越公園駅付近や大岡山駅周辺に似ているような気もしますし、三軒茶屋駅周辺(一丁目の)などに似ているような気もします。あるいは鵜の木駅周辺でしょうか。

 この商店街がどの程度の長さをもつのか、歩き通した訳ではないのでよくわかりませんが、たいした距離ではなさそうです。もっとも、1キロメートルを超える商店街というのは、それほど多くはありません。私が知っている限りでは戸越銀座、その近所の武蔵小山、そして川崎市中原区の元住吉くらいです。戸越銀座は東京で最も長い距離の商店街ですし、武蔵小山と言えば日本最初のアーケード商店街です。元住吉は、西口と東口を足すと2キロメートルを超えますし、西口のブレーメン商店街だけでも1キロメートルを軽く超え、時間帯によっては自転車で通り抜けるにも30分以上かかります。

 1980年代までは、このようにトタンの波板による壁や屋根の小屋がよく見られましたが、最近では珍しくなりました。 波板に貼られている広告の看板も色あせていて、かなり年月の経っているものであることがわかります。先ほどの商店街からまた路地に入り、見つけたものです。すぐ近くには団地か社宅の建物が並んでいました。

 このような波板は、ホームセンターで売り物としてよく見かけるのですが、トタンよりは塩化ビニールのほうが多いでしょうか。 川崎市宮前区や横浜市青葉区・都筑区にいくつもあるホームセンターでは、トタンなどをあまりみません。塩化ビニールのほうが加工しやすいということもあります。また、トタンですと、金属ですから雨などに弱いということもあるでしょう。

 商店街から一歩でも脇に入ると、急に閑静な住宅地になるというのは、東京23区地域ではよくあります。勿論、新宿駅前や渋谷駅前のような場所を除きます。典型的には私鉄の駅前にある商店街の話です。「当たり前だろ?」と言われるかもしれませんが、川崎市では当たり前のことと言えません。駅前の商店街が何本かあり、三角形や四角形を構成するようになっているという地域が少なくないのです。溝口がその例です。従って、商店街を突き抜けないと住宅地に入らないのです。

 左腕のデジタル時計(ちなみに、G-SHOCKです)を見て時刻を確認しながら歩きます。集合時間は10時です。私が設定したのですから、遅れたのでは話になりません。まして、こうして方南町駅周辺を歩いているのですから。

 9時過ぎから開いている書店(都内では個人経営らしい書店などでよく見かけます)に立ち寄って岩波文庫を何年ぶりかに買い、またデジタル時計を見ながら歩きます。

 先ほどの商店街を出て方南通り に戻ります。新宿方面に向かうかなり自動車が多くなっています。上の写真ではわかりにくいかもしれませんが、奥のほうにある信号(トラックの屋根のすぐ上に写っています)の手前に白地の案内板が見えます。「中野区」と書かれています。歩いてみてもわかりにくいのですが、その案内板の辺りで杉並区から中野区に変わります。さらに歩き続けると、左側に丸ノ内線の中野検車区が見えてきます。

 ここは新宿から永福までの京王バスも通る道路ですから、それなりの交通量があるのは当然です。しかし、昼頃の通行量はかなり少ないようです。 目的地である租税資料館は、この道を真直ぐ進むと中野検車区の真向かいにあります。

 中野区との境に近い場所で、方南通りから脇に入った通りです。商店街ではないのかどうかがよくわかりませんが、商店が並んでいます。もう少し時間があれば、こういう所も歩いてみるのが散歩の面白さにつながるのですが、時計は集合時間まであと何分という時刻を示していました。そろそろ駅に引き返さなければなりません。それでも、この道を真直ぐ進み、街をぐるぐると周ってみると、何かの発見があるだろうと思います。

コメント (1)
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