この訃報には驚きました。
世界的に活躍したジャズ・トランペット奏者(いや、トランペットだけではないですが)の近藤等則氏が、10月17日、71歳で死去したというニュースが流れました。氏の公式ホームページに書かれています。
勝手なイメージなのですが、日本で一番のトランペット奏者(ジャズの)は近藤さんではないかと思っています。しかもトランペットの枠にとらわれないところもよいのです。
私は、1980年代にFM東京で土曜日の21時から放送されていた渡辺香津美さんの番組「グッド・ヴァイブレーション 渡辺香津美ドガタナワールド」で、近藤さんの演奏を知りました。タイトルなどを覚えていませんが、たしかチベタン・バンドの当時の新作「空中浮遊」であったと記憶しています。中学生の私には、とにかく凄いとしか表現しようのない演奏でした。
その後、高校生時代に六本木WAVEで、今はない冬樹社から刊行された「東京ミーティング」というカセットブックを買いました。高橋悠治、渡辺香津美、坂本龍一、仙波清彦、ビル・ラズウェル、ペーター・ブロッツマンなど、錚々たるメンバーによる2日間の即興演奏大会(たしか会場は渋谷のパルコ)の録音です。私は、とくにB面の1曲目に収録されていた近藤さんと高橋さんのデュオをよく聴いていました。メガホンか何かを持った近藤さんの歌も面白かったし、高橋さんがピアノを弾きながら、ブレヒト作詞・ヴァイル作曲の「人間の努力は長続きしない」を歌い(但し、日本語)、そこへ近藤さんが色々な楽器で合いの手を入れたりするところが面白かったのです。
それからまた少し経ち、大学生(学部生)になってから、近藤等則IMA「ヒューマン・マーケット」をCDで手に入れました(買ったのではありません。入手経路を書くのは恥ずかしいのでここでは記しません)。これも何度聴いたやら。当時、フジテレビであったと記憶していますが歌番組にIMAが出演し、近藤さんが「Tokyo Girl」を歌ったのをたまたま見ていますし、深夜番組でも近藤さんの演奏を見たりしています。どう考えてもジャズ・フュージョン系の人が出演するような番組でもなかっただけに、驚いたのでした。「ヒューマン・マーケット」には近藤さんのヴォーカル曲がいくつか入っていますが、曲によって声の高さから歌い方から変えていたことにも興味を惹かれました。
1970年代から80年代までのフュージョンには、乱暴な分け方をすればジャズ系と非ジャズ系(ジャズ寄りとポップス寄り)があったのですが、私はジャズ系のフュージョンが好きでした(ウェザー・リポートなど)。先鋭的であったし、アドリブが楽しかったからです。近藤さんの場合はフリー・ジャズの流れが濃厚であったため、一般的な理解は得られなかったかもしれませんが、一度はまれば……というところです。
どこかに前衛的な、あるいは尖ったところがないと、音楽はつまらない。10代、20代の私はそう思っていましたし、実は今でもそうです。