二度目の緊急事態宣言が発出されたのは2021年1月8日でした。当初は2月7日までとされていましたが、1か月延長され、また2週間延長されることとなりました。東京都、神奈川県、千葉県及び埼玉県については3月21日までということです。対象地域の限定はともあれ、時期設定については小出しの繰り返しであり、問題があると考えられます。最初から3か月程度を設定しておき、実態に応じて都道府県毎に解除するという方法がよかったのではないでしょうか。しかも、変異株の感染が拡がるかもしれないという状況ですから、油断も何もできません。
こうなると気になるのがGoToキャンペーンです。私は、このブログに載せた「驚きの令和2年度第3次補正予算の案」(2021年1月21日20時0分0秒付)において「どう見ても『今必要か?』、『本予算ならともあれ、補正予算に入れるべき事柄か?』、『そもそも継続すべき事業なのか?』と首を傾げるもの」の「典型がGo To トラベルへの1兆311億円、Go To イートへの515億円です」、「仮に、2月7日に緊急事態宣言が全面解除され、翌日からGo toキャンペーンが再開されたとします。それから3月31日までの2か月弱で補正予算に計上された金額を消化できるでしょうか」と記しました。
また、1月29日0時20分30秒付の「令和2年度第3次補正予算が成立した/財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案」においては次のように記しています。
「第一に、第2回緊急事態宣言が2月7日までに解除されず、延長されるならば、Go to キャンペーンは再開されないということです。緊急事態宣言の対象地域でない道県のみ再開するということも考えられなくはないのですが、対象地域である東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県および福岡県において再開されなければ、経済効果は薄いでしょう。」
「第二に、仮に第2回緊急事態宣言が2月7日までに解除されたとしても、全都道府県においてステージ4からステージ2まで下がるのであればともあれ、ステージ3に留まる都道府県についてはGo to キャンペーンは再開できないということになります(または一つでもステージ3に留まる都道府県があれば全国一律停止のままかもしれませんが、このあたりは不明です)。こうなると、補正予算で組まれているGo to トラベル関連の1兆311億円、Go to イート関連の515億円、もう一つあげれば観光(インバウンド復活に向けた基盤整備)の650億円のうちの多くの部分は執行されないままに終わるということになりかねません。あくまでも2020(令和2)年度の補正予算であって、基本的に2021年3月末日までに執行されなければなりませんから、未執行の額が多くなるのではないでしょうか。2か月弱で全額を執行することは困難でないかもしれませんが、第2回緊急事態宣言が解除されてGo to キャンペーンが再開され、2月中か3月中にいくつかの都道府県において再び(あるいは初めて)ステージ4に達し、第3回緊急事態宣言が発出されるようになってしまえば、やはり未執行の額は多くなります。」
「緊急事態宣言が解除されてもGo to キャンペーンが再開されなければ、何のために補正予算に1兆800億円を超えるGo to キャンペーン関連の予算〔観光(インバウンド復活に向けた基盤整備)の650億円を含めれば1兆1000億円を超えます。この他、関連する予算項目があるかもしれません〕が計上されたのか、訳のわからないことになります。3月には第4次補正予算の案が提出されるのではないかと予想したくなります。」
以上からお察しのことと思われますが、私は、令和2年度第3次補正予算のうち、少なくともGoToに関する部分は未執行で終わるのではないか、あるいは、執行したところで消化することができないであろうと予想していました。こうなると1兆1000億円超は計上したこと自体が無駄であったということになります。だからと言って他の事項に充てることは、簡単にはできません(容易に認められるのであれば、予算の意味が大きく失われます)。
「財政法講義ノート」〔第6版〕の「第2部:国の財政法制度 第5回:国家予算(2)」において記したように、財政法第33条第1項によって「移用(部局間における融通または部局内での項間における融通)、流用(各目間での融通)は禁じられ」ています。もっとも、全く移用も流用もできない訳ではなく、移用については国会の議決を経た上で財務大臣の承認を得ることにより、流用については財務大臣の承認を得ることにより、可能ではあります。これは補正予算にも通用する話なのです。私が入手した資料では項目がよくわからないのですが、第3次補正予算が移用を前提としているとは考えられないので、GoTo関係の予算を今月内に執行することは非常に難しい、いや、不可能でしょう。
このように書いてきたのは、共同通信社が2021年3月5日12時49分付で「GoTo、月内再開は『困難』 緊急宣言延長で全国停止継続」(https://this.kiji.is/740362840498798592)として報じているところを読んだからです。5日の参議院予算委員会において、立憲民主党の白真勲議員による質疑に対し、菅義偉内閣総理大臣は今月中のGoTo再開が難しい旨を答弁しており、赤羽一嘉国土交通大臣も記者会見でGoToトラベルの停止(全国規模です)を3月8日以降も継続する旨を述べています。今のところは停止の方針が述べられただけとも言えますが、実際上、停止を継続せざるをえないでしょう。場合によっては1都3県を除いて再開することも考えられますが、昨年の経験からしても経済的効果が弱まるでしょう。しかし、21日まで停止するとしても、22日からすぐに再開とはいかないでしょう。3月22日から再開したとしても31日まで10日間ほどでは第3次補正予算を執行しても未消化分が多くなることは自明です。
これまで、何度となく補正予算が編成されましたが、このように当初から社会の現況に適合しないことが明らかな部分がある補正予算はあったのでしょうか。
いつの時代にも、多少は政治と社会との間に意識の差があるものです。しかし、最近ほど落差の激しいという表現が似合うほどの状況はないでしょう。GoTo然り、お題目が震災復興からいつの間にか新型コロナウイルスに打ち勝った証にされてしまった東京オリンピック然り。
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