ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版 第18回 個人情報保護制度

2017年10月25日 00時00分00秒 | 行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版

 以下、法律については次のように略記する。

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律⇒行政個人情報保護法

 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律⇒独立行政法人個人情報保護法

 

 1.個人情報保護

 (1)個人情報保護制度  情報公開法制度と同様に、個人情報保護制度も地方公共団体での取り組みが先行した例である。1980年代から、一部の地方公共団体が個人情報保護条例を制定していた(情報公開条例より数は少ない)。

 国の場合、1988(昭和63)年に、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が制定された。そして、2003(平成15)年に、個人情報保護法と総称される諸法律が制定され、2005(平成17)年度から施行された。

 ①個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)

 これが個人情報保護に関する基本法である(第1章~第3章)。そして、民間部門の個人情報保護に関する一般法でもある(第4章~第6章)。

 ②行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政個人情報保護法)

 ③独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人個人情報保護法

 ④情報公開・個人情報保護審査会設置法

 ⑤行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等による法律

 ②~⑤と地方公共団体の個人情報保護条例が、公的部門の個人情報保護に関する法制度である。そして、②~④は①に対する個別法としての位置づけを与えられている。以下、②を中心として扱う。

 (2)行政個人情報保護法の目的

 行政個人情報保護法第1条は、同法の目的として、行政の適正かつ円滑な運営(甲)、および個人の権利利益の保護(乙)をあげる。規定の仕方は「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護すること」となっており、甲を図ることによって乙を実現するとはされていない。このことからも判明するように、終局目標は乙であるとはいえ、甲と乙とが対立する場合もあり、甲と乙とのバランスが問題となりうる。

また、ここにいう個人の権利、とくに、個人情報保護法によって保護される権利の性質などが問題となりうる。この点については、個人情報保護法にも行政個人情報保護法にも言及がなく、自己情報コントロール権としてのプライバシー権が保護されるのか否かについては議論の余地を残している。

 (3)行政個人情報保護法の対象機関

 情報公開法の対象機関と同じである(第17回を参照)。

 (4)個人情報などの意味

 行政個人保護法において、個人情報などについては、次のように定義されている。

 ①個人情報 行政個人保護法第2条第2項により、生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日などによって特定の個人を識別できるものとされる。これは、情報公開法における個人情報と同様である。

 ②保有個人情報 同第3項により、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして、当該行政機関が保有しているもの」で、情報公開法にいう「行政文書」に記録されているものである。

 ③個人情報ファイル(同第4項)

 同第4項により、保有個人情報を含む情報の集合物で、コンピュータなどによって検索が可能であるように体系的な構成がなされたものとされている。これについては、第10条および第11条の規定があり、作成および保有をしようとするときの総務大臣への事前通知、帳簿(個人情報ファイル簿)の作成および公表が定められている。

 (5)取扱基準

 個人情報の取り扱いについては、第3条以下に規定されている。

 ①保有の制限、特定(第3条)

 利用目的の達成に必要な範囲を超えてはならない、など。

 ②利用目的の明示(第4条)

 ③正確性の確保(第5条)

 ④安全措置の確保(第6条)

 ⑤従事者の義務(第7条)

 ⑥利用および提供の制限(第8条)

 但し、第2項により、一定の要件の下において利用目的外の利用を認める。

 (6)行政個人情報保護法と個人の権利

 ①開示請求権(第12条) 未成年者または成年被後見人の法定代理人にも認められるが、開示すれば本人に不利益が及ぶおそれがある場合には不開示となる(第14条第1号)。

 原則は開示であるが、第14条各号により、不開示事由が定められる(限定列挙)。第1号以外は、ほぼ情報公開法と同様の事由が定められている。裁量開示も認められる(第16条)。

 なお、情報公開法と同様に、部分開示(行政個人情報保護法第15条)、そして存否応答拒否処分(同第16条)も定められている。

 ②訂正請求権(第27条、第29条)

 これは、自己に関する内容が事実でないと思料するときに訂正(追加または削除を含む)を請求する権利である。行政機関の長は、請求に理由があると認めるときに訂正をしなければならない(一応は義務である)。

 ③利用停止請求権(第36条)

 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に請求しなければならないとされる。

 a.保有個人情報の利用の停止または消去:保有個人情報が行政機関によって適法に取得されたものではない場合、第3条第2項に違反して保有されているとき、または第8条第1項・第2項の規定に違反して利用されているとき

 b.保有個人情報の提供の停止:第8条第1項・第2項の規定に違反して提供されているとき

 (7)救済制度(第42条)

 情報公開法と同様の規定であり、行政不服申立てについても情報公開・個人情報保護審査会への諮問手続が明示されている。


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