「可愛い子には旅をさせよ」という諺もあるくらいで、人間は旅だの旅行だのをしなければ成長しないだの何だのと言う人が多いようです。
まあ、当たっている部分もありますし、多くの人間は旅なり旅行なりで見聞を広めるのですが、外れているところも少なくないでしょう。
世の中には、旅や旅行をしたことが皆無または僅少であっても優れた人がいるのです。逆に言えば、旅や旅行をしなければ人間は成長できないなどとのたまう人は、成長できる方法を十分に知っている訳ではないのでしょう。
その代表が、哲学者のイマヌエル・カント(Immanuel Kant, 1724-1804)でしょう。彼はケーニヒスベルク〔Königsberg.現在はロシア領カリーニングラード(Калининград)〕に生まれ育ち、この都市およびその近郊以外の場所に赴いたことがなかったそうです。それで「純粋理性批判」、「人倫の形而上学」などの業績を残したのです。ケーニヒスベルクという都市の環境による恩恵もあるのかもしれませんが、彼の意識によるところが大きいでしょう。勿論、カントの著作には様々な限界がありました。そのことを念頭に置いたとしても、旅なり旅行なりは人間の成長にとって絶対的に必要なものでないことがわかります。
よく、「みんなが知っている」、「知らない人はいない」というような表現が使われます。しかし、こういうことが実際には皆無である、または皆無に近いことでしょう。一人でも知らない人がいれば、こうした表現は意味をなさなくなります。私は、仕事の関係もありますが、このような表現を(なるべく)使用しないようにしています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます