ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

再掲:西鉄北九州線の廃止

2017年09月09日 00時00分00秒 | 社会・経済

 お断り:以下は、私のホームページ「川崎高津公法研究室」に、2000年11月25日付で掲載した記事です(当時は大分大学教育福祉科学部に勤務していたため、「大分発法制・行財政研究」と名乗っておりました)。

 

 日本経済新聞2000年11月24日付朝刊27面に、「排ガス規制 路面電車再び」という記事があります。その記事によると、京都商議所に路面電車復活のための検討委員会を設置する他、京都市も検討を始めるとのことです。京都市は、地下鉄として烏丸線と東西線を運営していますが、地下鉄の建設費に比べれば、路面電車は安いものです。それに、広島電鉄、熊本市交通局、東急世田谷線(私、この線の大ファンです)などで低床車が走っていることからしても、路面電車は高齢者にやさしい交通機関であるとも言えるでしょう(ちなみに、以前東急玉川線を走っていて、現在は高津駅下の「電車とバスの博物館」に保存されている200形、通称ペコちゃんは、低床車の先駆的存在です)。

 京都市は、日本で最初の営業用電車が走った所であり、最初の路面電車が走った所です。1978年、京都市電が全廃されましたが、京福電鉄嵐山本線・北野線は現在も営業を続けていますので、京都では路面電車が走り続けていることになります。

 既に欧米諸国では路面電車の見直しが進んでおり、大気汚染防止、交通事故件数の低減、都市中心部の空洞化防止などに役立っております。

 しかし、そんな中、2000年11月25日を最後に、日本から、また一つ、路面電車が消えようとしております。西鉄北九州線がそれです。

 西鉄北九州線は、明治44年、九州電気軌道として、東本町二丁目(門司)~大蔵川(八幡)が開業し、さらに延長を重ね、門司から折尾まで、戸畑、枝光などにも足を伸ばしました。また、小倉の魚町から北方までの北方線は、小倉電気軌道という会社が運営していたもので、北九州線とはレールの幅が違っていました。昭和17年、九州鉄道、福博電車などと合併して西日本鉄道が誕生したことにより、九州電気軌道の路線は北九州線に、小倉電気軌道は北方線になりました。

 第二次世界大戦後、北九州線および北方線には連接車が投入されるなど、活気に満ちていましたが、モータリゼイションの進展により、陰りが見えてきます。西鉄福岡市内線は昭和54年に全廃されましたが、北九州線は残りました。しかし、北九州市のモノレール建設に伴い、1980年に北方線が廃止され、1985年には門司~砂津、大門~戸畑、中央町~幸町が廃止されます。そして、1992年10月、砂津~黒崎駅前が廃止され、路面区間(併用軌道区間)は消滅します。残されたのは黒崎駅前~折尾までの5kmほど、ほとんどの業務を筑豊電気鉄道に委託して、東急世田谷線などと同様に、道路の上を走らない路面電車として営業を続けていました。JR鹿児島本線と並行していましたが、鹿児島本線の黒崎・折尾間には駅がなかったので、存続できたのかもしれません。

 私は、今年の6月、折尾から黒崎駅前まで、北九州線に乗りました。廃止するには勿体無いような気もしました。乗客も少なくないし、何と言っても軌道線には、バスなどでは味わえないものがあり、短いながらも楽しいひとときでした。黒崎駅前からは、筑豊電気鉄道に乗って筑豊直方まで行きましたが、鉄道線とは言え、電車が路面電車型なので、少し速度を上げるとガタガタと揺れるのが、また面白いものでした。

 しかし、私が北九州線に乗った時には、既に同線の廃止が認可されておりました。黒崎駅前~熊西は、筑豊電気鉄道に賃貸されるので存続しますが、残りの区間は完全に消滅するのです。その代わり、鹿児島本線に陣原駅ができます。

 鉄道営業法などの改正により、鉄道・軌道の廃止は、これまでよりも簡単にできることになりました。路面電車に関して言うならば、高岡市周辺を走る加越能鉄道の廃止が懸念されます。

 路面電車は、自動車交通の邪魔になる、などの理由で、各地で廃止されました。しかし、残されたものは、一層激しい交通渋滞と、その結果としての大気汚染および騒音、そして都市景観の悪化ではなかったでしょうか。東急新玉川線(2000年8月6日から田園都市線に統合)沿線の住民が、玉川線が廃止されて首都高速3号線ができてから騒音が激しくなって住みにくくなった、と言っています。私も、三軒茶屋を歩く度に、人情味のあふれる街だけに、首都高速3号線がなければもっといい街なのに、と思います。玉川線の本などを読んだだけに、なおさらです。

 西鉄北九州線の全廃は、本当に惜しいことです。


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