気付いたのは今日(2021年8月21日)ですが、昨日(2024年8月20日)の夕方にJR九州に関する報道がなされていました。gooに、昨日の19時40分付で「JR九州、利用者減の在来線で赤字55億円 線区別収支を公表」という記事が掲載されており(https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20240820k0000m020249000c.html)、これは毎日新聞のサイトに昨日の19時40分付で掲載された「18区間赤字55億円 JR九州、低輸送密度路線」という記事(https://mainichi.jp/articles/20240821/ddp/041/020/003000c)からの転載です。また、朝日新聞社のサイトには昨日の20時0分付で「JR九州、1日2千人未満18区間で赤字55億円 23年度収支公表」という記事(https://digital.asahi.com/articles/ASS8N3D6FS8NULFA00LM.html)が掲載されています。そして、JR九州が昨日付で「2023年度 線区別ご利用状況等の公表について」(https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/news/newtopics/__icsFiles/afieldfile/2024/08/20/240820_2023_senkubetsu.pdf)という文書を公開しています。
まず、goo転載記事を取り上げると、同記事には「JR九州は20日、利用者が減少している在来線の2023年度線区別収支を公表した。対象は輸送密度(1キロ当たりの1日平均乗客数)が2000人未満の13路線18区間で、営業赤字は総額約55億円に上った。18区間のうち自治体や鉄道事業者が要請して国が設置する『再構築協議会』の目安とされる輸送密度1000人未満は13区間だった」と書かれています。また、同記事には2023年度に営業赤字額が最も大きかった路線・区間として日南線の田吉駅〜油津駅(7億300万円)、輸送密度が最も低かった路線・区間として同じ日南線の油津駅〜志布志駅(179人)とあげられています。また、goo転載記事には日田彦山線BRTの輸送密度も書かれており、2016年度のそれが131人、2023年度のそれが164人であると書かれています。
次に、朝日新聞社記事です。この記事には「1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)2千人未満を基準に収支を公表したのは12路線の18区間。コロナ禍からの回復もあり、22年度より2区間減った。ただ、収支の厳しさは続いている」と書かれており、「18区間の営業損益は、宮崎空港線田吉―宮崎空港を除く17区間が赤字で、合計では約55億円の赤字だった。前年度と比較可能な17区間の損益は約1.5億円悪化した」と続いています。そして、赤字幅が大きかった路線・区間として日南線の田吉駅〜油津駅、日豊本線の佐伯駅から延岡駅(5億3300万円)、指宿枕崎線指宿駅〜枕崎駅(4億6200万円)が挙げられています。赤字幅が最も大きかったのは日南線田吉―油津の7億300万円。日豊線佐伯―延岡(5億3300万円)、指宿枕崎線指宿―枕崎(4億6200万円)が続いた。また、同記事には輸送密度が低い路線・区間として日南線油津駅〜志布志の他に豊肥本線宮地駅〜豊後竹田駅の193人が書かれています。
JR九州が公表した文書も見てみましょう。この文書ですが、平均通過人員(とりあえず輸送密度と同じと考えておきましょう)については全路線・全区間のそれが示されています。JR九州発足年度である1987年度と2023年度とが示されているので読んでみると、興味深いことに、1987年度より2023年度のほうが平均通過人員の数値が高くなっている区間があります。次の通りです。
①鹿児島本線
全線(門司港駅〜鹿児島駅):1987年度は25138、2023年度は30838。←1987年度においては、現在の肥薩おれんじ鉄道の営業区間である八代駅〜川内駅も鹿児島本線でした。
小倉駅〜博多駅:1987年度は68929、2023年度は74753。
博多駅〜久留米駅:1987年度は46908、2023年度は60889。
鹿児島中央駅〜鹿児島駅:1987年度は9962、2023年度は10936。
②日豊本線
国分駅〜鹿児島駅:1987年度が9875、2023年度は10250。←これ以外の区間では減少しています。そのため、全線を通じての数値も低くなっています。
③篠栗線
吉塚駅〜桂川駅:1987年度が109875、2023年度は10250。
吉塚駅〜篠栗駅:1987年度が13712、2023年度は32551。
篠栗駅〜桂川駅:1987年度が8698、2023年度は13634。
④長崎本線←以下の2区間以外は減少しているので、全線を通じての数値も低くなっています。
鳥栖駅〜佐賀駅:1987年度が24187、2023年度は27881。
喜々津駅〜浦上駅:1987年度が2640、2023年度は4182。←おそらく、長与駅経由(いわゆる旧線)でしょう。
⑤筑肥線
姪浜駅〜伊万里駅:1987年度が7557、2023年度は9265。←全線を通じての数値が高くなっているのですが、それは次の区間の数値が高くなったためです。
姪浜駅〜筑前前原駅:1987年度が13593、2023年度は42727。
⑥佐世保線
江北駅〜佐世保駅:1987年度が5651、2023年度は7313。←西九州新幹線の開業が数値を押し上げた可能性が高いでしょう。
⑦香椎線
西戸崎駅〜宇美駅:1987年度が3299、2023年度は6566。
西戸崎駅〜香椎駅:1987年度が2921、2023年度は5078。
香椎駅〜宇美駅:1987年度が3690、2023年度は8102。
⑧久大本線
久留米駅〜日田駅:1987年度が3040、2023年度は3931。←これ以外の区間では減少しています。そのため、全線を通じての数値も低くなっています。
⑨大村線
早岐駅〜諫早駅:1987年度が3197、2023年度は4203。
⑩豊肥本線
熊本駅〜大分駅;1987年度が2963、2023年度は3172。←全線を通じての数値が高くなっているのですが、それは次の区間の数値が高くなったためであり、それ以外では激減しています。
熊本駅〜肥後大津駅:1987年度が4902、2023年度は12889。
(日南線南宮崎駅〜田吉駅および田吉駅〜油津駅の平均通過人員は2129ですが、この頃には宮﨑空港線が開業していなかったので南宮崎駅〜油津駅の平均通過人員として書かれています。2023年度の南宮崎駅〜田吉駅は3621、田吉駅〜油津駅は948となっています。南宮崎駅〜田吉駅では増えていることになりますが、これは宮﨑空港線のためでしょう。)
次に2023年度の平均通過人員が2000人を下回る路線・区間をあげていきます。参考までに、カッコ内に1987年度の数値も示しておきます。
①日豊本線
佐伯駅〜延岡駅:907(←3428)。
都城駅〜国分駅:1368(←2029)。
②長崎本線
江北駅〜諫早駅:908(←9108)。西九州新幹線の開業に伴うものであることは明白でしょう。
③筑肥線
唐津駅〜伊万里駅:224(←728)。
④宮﨑空港線
田吉駅〜宮﨑空港駅:1792(宮﨑空港線は1996年度に開業しました)。
⑤筑豊本線
桂川駅〜原田駅:384(←2981)。
⑥後藤寺線
新飯塚駅〜田川後藤寺駅:1319(←1728)。
⑦唐津線
久保田駅〜西唐津駅:1808(←3528)。
久保田駅〜唐津駅:1861(←3649)。
唐津駅〜西唐津駅:833(←1315)。
⑧豊肥本線
肥後大津駅〜宮地駅:935(←2711)。
宮地駅〜豊後竹田駅:193(←1028)。
豊後竹田駅〜三重町駅:863(←2384)。
⑨肥薩線
八代駅〜隼人駅:479(←1400)。
八代駅〜人吉駅:2023年度は被災のために運休中(←2171)。
人吉駅〜吉松駅:2023年度は被災のために運休中(←569)。
吉松駅〜隼人駅:479(←1109)。
⑩三角線
宇土駅〜三角駅:859(←2415)。
⑪吉都線
都城駅〜吉松駅:402(←1518)。
⑫指宿枕崎線
喜入駅〜指宿駅:1988(←3687)。
指宿駅〜枕崎駅:222(←942)。
⑬日南線
南宮崎駅〜志布志駅:637(←1423)。
田吉駅〜油津駅:948(前述のように、1987年度は南宮崎駅〜油津駅として2129となっています)。
油津駅〜志布志駅:179(←669)。
〔日田彦山線については、煩雑になるので省略しました。〕
そして、JR九州の文書には、平均通過人員が2000人/日未満の線区に限定しての線区別収支が掲載されています。宮﨑空港線のみ、営業曽根機が2300万円の黒字であり、他は赤字です。
①日豊本線
佐伯駅〜延岡駅;▲5330万円。
都城駅〜国分駅:▲3500万円。
②筑肥線
唐津駅〜伊万里駅:▲1570万円。
③筑豊本線
桂川駅〜原田駅:▲1000万円。
④後藤寺線
新飯塚駅〜田川後藤寺駅:▲2030万円。
⑤唐津線
久保田駅〜唐津駅:▲3940万円。
唐津駅〜西唐津駅:▲2380万円。
⑥豊肥本線
肥後大津駅〜宮地駅:▲2170万円。
宮地駅〜豊後竹田駅・▲3320万円。
豊後竹田駅〜三重町駅:▲1500万円。
⑦肥薩線
八代駅〜人吉駅および人吉駅〜吉松駅は長期運休中。
吉松駅〜隼人駅:▲3720万円。
⑧三角線
宇土駅〜三角駅:▲3050万円。
⑨吉都線
都城駅〜吉松駅:▲4280万円
⑩指宿枕崎線
喜入駅〜指宿駅:▲2320万円。
指宿駅〜枕崎駅:▲4620万円。
⑪日南線
田吉駅〜油津駅:▲7030万円。
油津駅〜志布志駅:▲4180万円。
こうして、平均通過人員が2000人/日未満の路線・区間についてのみ線区別収支を公表したのは、多くの方も推察されるとは思いますが、今後の存続に関する議論のためでしょう。現に、指宿枕崎線については、2024年8月19日に「指宿枕崎線の将来のあり方に関する検討会議」の初会合が開かれています〔朝日新聞社のサイトに2024年8月20日10時0分付で掲載された「指宿枕崎線の検討会議始まる 独自の将来像模索」(https://www.asahi.com/articles/ASS8M4HLHS8MTLTB003M.html?iref=pc_ss_date_article)によります〕。この検討会議は地域公共交通活性化再生法による法定協議会ではないのですが、何らかの方向性が示されることになるのではないかと思われます。
指宿枕崎線の指宿駅〜枕崎駅よりも平均通過人員の数値が低い路線・区間が2つありますが、このうち問題となりうるのは日南線のほうでしょう。豊肥本線の宮地駅〜豊後竹田駅も低いのですが、この区間が存廃論議の対象になるとは思えない部分があるからです。御存知の方も多いと思われますが、かつて志布志駅には日南線の他に志布志線および大隅線が通っていました。また、日南線の北郷駅〜志布志駅も本来は志布志線の一部でした。志布志駅に発着していた3路線はいずれも国鉄の赤字ローカル線であり、要件の適用の厳格性を高めたりするならば日南線が廃止されてもおかしくなかったのです。また、志布志線および大隅線が廃止されてから、日南線はかなり長い盲腸線となっていますし、沿線人口の減少の度合いなどを考慮しても、存続のほうが難しい路線であるとも考えられます。
JR九州は、現在、むしろ不動産事業などに力を入れています。そうすることによって企業の存続を図る訳ですが、鉄道事業があまりに低調になってしまうと、不動産事業にも負の影響が出てしまうことでしょう。一企業として、切り捨てられるものは切り捨てようとしているのも理解できます。
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