昨日の日本経済新聞夕刊12面4版に「大阪学院大 法科大学院の募集停止 14年度から 全国7例目」という記事が掲載されていました。朝日新聞のサイトにも「大阪学院大、法科大学院の募集停止 14年度から」という記事(http://www.asahi.com/national/update/0603/OSK201306030053.html)が昨日の18時37分付で掲載されていましたが、明らかに大阪本社版の記事であり、東京本社版の夕刊には掲載されていません(東京本社版の朝刊には記事が掲載されていますが、小さいものでベタ記事と言ってよいでしょう)。
日経夕刊の記事では「今春、定員に占める入学者の割合(充足率)が全国で最も低い7%となるなど低迷していた」と書かれており、朝日の記事には「08年度から定員割れが続き、13年度は定員30人に対し入学者は2人。司法試験の合格率も低調で、昨年は5.6%だった」と書かれています。これでは募集停止となるのもやむをえないでしょう。少人数教育の重要性が声高に叫ばれていますが(実はこれに対して私は疑問を抱いていますが)、あまりに少ないのも問題で、教育効果はほとんどないものと思われます。
大阪学院大学のサイトには、昨日付で「法科大学院の学生募集停止について」という文書が掲載されており、さらに詳しい内容がPDFファイルとなって掲載されています。
全国的にも法科大学院の状況は厳しく、定員割れが続出しています。大東文化大学も例外ではありません。74の法科大学院のうち、既に姫路獨協大学のそれは廃止となっており、既に募集停止を表明している6校についても、再開は考え難いので廃止ということになるでしょう。
これは、私にとっても他人事ではありません。私自身が(前期だけですが)法科大学院の講義を担当していますし、法科大学院の影響が法学部にも及んでいるからです。全国的に見ても法学部の人気が落ちています。また、大学院法学研究科は、かなり早い段階で影響を受けており、将来の大学教育を担う者の減少という問題も抱えています(もっとも、これは法科大学院の影響だけではないのですが)。
また、大阪学院大学は昼夜開講制を謳っていますが、大東文化大学などもそうです。法科大学院構想が打ち出された頃には、入学者の多様性が前面に押し出されていたのですが、いつの間にかその理念は影を薄くしていました。実際のところは「そうならざるをえない」ということでしょうか。
その一方で予備試験の人気が高いことも事実です。いつの報道であったか、予備試験経由の受験者のほうが、法科大学院修了者よりも司法試験合格率がはるかに高いという話が出ていました。こうなると、一体どちらが本筋なのかわからなくなります。法科大学院の学生が予備試験を受けて合格し、その上で司法試験に臨んだりしていますから、なおさらです。本来であれば、予備試験はあくまでも予備であり、本筋ではありませんから、合格率の高さはともあれ、受験者数が多かったりするのはおかしいということになるのですが、法科大学院に行かなくともよいのであれば、予備試験のほうが人気を得るのも当然でしょう。旧司法試験と同様に、誰でも受けられる制度であるからです。
そういえば、私は、一時期、「ロースクール研究」(民事法研究会)という法科大学院向けの雑誌を購入していました。青葉台で偶然見つけたのがきっかけで購入し始め、バックナンバーまで注文していたのです。これも昨年12月発行の20号をもって休刊となりました。書店の中には、法科大学院生向けの書籍・雑誌よりも裁判員向け書籍のほうが売れているのではないかと思うような揃え方をとっているところもあるようです。
いずれにせよ、法科大学院、およびそれを前提とする新司法試験制度は、スタートから10年を経過しないうちに破綻しました。全体としての見直しは不可欠であると思われます。