ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

「ふるさと納税」に対する規制(?)が遅すぎる

2024年06月26日 21時45分00秒 | 国際・政治

 「ふるさと納税」の創設時から、私はこの制度に対して批判的な立場、あるいは否定的な姿勢を取り続けていました。もっと早く言えば廃止すべきであるという立場にあります。

 各地方公共団体の税財政を歪めてしまいますし、地方自治なり地方税財源制度なりの在り方として、根本的に誤っていると言わざるをえないからです。そのようなこともあって、週刊東洋経済2024年5月11日号が「喰われる自治体」という特集を組んで「ふるさと納税」の弊害などの記事を掲載しているのを知り、どこか冷ややかに見ていますし、「そんなこと、今更のように騒ぐなよ。もっと早く記事にすべきだっただろう!」とも思っています。もし、「ふるさと納税」制度の食い物にされている地方公共団体があるとしたら、悪い言葉で記せば「ざまあみろ」と書かれても仕方のないところです。

 そもそも、この制度の見直しはこの数年ほど繰り返されています。それだけ弊害が多いということですが、見直しも甘かったということでもあります。「早くやめちまえ」と言いたいところですが、麻薬や覚醒剤の味を忘れられないということと同じようなものなのでしょうか。

 そして、再び、6月25日に総務省が「ふるさと納税」のルールを見直すことを発表しました。朝日新聞2024年6月26日付朝刊24面14版に「ふるさと納税ポイント競争規制 付与サイトで募集 禁止へ」という記事が掲載されています。短いものですが、紹介しておきましょう。

 この記事は「総務省は25日、ふるさと納税のルールを見直すと発表した。利用者にポイントを付与する仲介サイトを通じて自治体が寄付を募集することを、来年10月から禁止する。利用者を囲い込むためのポイント競争が激化しており、規制の必要性が指摘されていた」と始まります。2025年10月というのは遅すぎるとしか言えませんが、やはり禁断症状の問題があるのでしょう。また、「ふるさと納税」で儲けている所のことも考えなければならないからでしょう。

 私も仲介サイトの存在は知っています。上記記事によると、「楽天ふるさと納税」、「さとふる」、「ふるさとチョイス」および「ふるなび」の4社が大手で、これで9割以上のシェアを占めているそうです(「ふるさと納税」制度の導入に反対していた総務省の偉い方は、もしかしたら「ふるさと納税」が商売の場になることを予見されていたのかもしれません)。また、こうした仲介サイトの利用で付与されるポイントの原資の一部が、地方公共団体によって支払われる手数料ですので、その手数料についても規制をかけるようです。ただ、記事には「今回の見直しで、より多くの寄付額を自治体にまわるようにする」と書かれているだけです。

 「ふるさと納税」は、とにかく問題ばかりが目立ちます。例えば、寄附金に対する返礼品は、寄附を受け付けた地方公共団体の地場産品である、というルールがあるのですが、これは守られていないと考えてよいでしょう。例えば、返礼品で家電製品やカメラという所があるのですが、そこに工場があるからというような理由で地場産品にしているが、よくよく見るとMade in China、Made in Thailandなど、要はMade in Japanでないものが多いようです。バーコードさえ貼ればよいということでしょうか。そもそも、地場産品に限定してしまうと、とても市場での競争力がありそうにもないものばかりになる可能性もあるでしょう。「総務省はこのほか、自治体に対し、返礼品を強調した宣伝広告や、寄付先の自治体の地場産品であることを証明できない返礼品を禁止する。返礼品の食品に産地偽装が相次いだことを受け、自治体のチェック体制を整えることも求める。いずれも来年10月からの措置となる」というのですが、やはり遅すぎますし、実効性はないでしょう。同じことは「宿泊施設や飲食店の利用券について、寄付先の地域との関連が認めにくいものは返礼品の対象外とする。1人1泊5万円以上の宿泊券は、その自治体がある県内の施設に対象を限定する」にも言えそうです。

 馬鹿な制度は早くやめて、まともな状態に戻す。

 これが政治なり行政なりの仕事の在り方のはずです。


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