ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

自治体としての資格が疑わしい! 東浦町(愛知県)の問題は、徹底的に調査し、地方交付税の配分停止または

2012年03月23日 00時26分36秒 | 国際・政治

 3月3日付で「こんなことをやる町に、市になる資格はない」という記事を投稿しました(http://blog.goo.ne.jp/derkleineplatz8595/d/20120303)。今回はその続きです。

 3月22日の朝日新聞朝刊(東京本社)には掲載されていなかったのですが、デジタル版には同日3時付で「人口水増し、東浦町職員ら任意聴取へ  愛知県警」という記事が掲載されています(http://digital.asahi.com/articles/NGY201203210108.html?id1=2&id2=cabcadcc)。

 この記事によると、愛知県警は、2010年の国勢調査で東浦町の人口が意図的に水増しされた可能性があるとして捜査する方針を固めたとのことです。今後は刑事事件として立件できるかどうかが問われます。総務省は刑事告発を検討しているとのことです。

 東浦町でも2010年10月に国勢調査が行われました。これに基づいて総務省が2011年2月に速報値を発表しています。その際の人口は50万と80人でしたが、その後の調査で280人分の調査票について居住実態がないということがわかりました。結局、最終的な確定値は4万9800人で、市制移行の基準を満たせなかったこととなります。

 それでは、この280人分の、居住実態のない調査票はどのようにして作られたのでしょうか。記入ミスもあるでしょうが、総務省は96人分について記入ミスではないと判断したようです。その上で、今年の2月に東浦町が総務省に提出した報告書によると「住民票などをもとに居住実態を確かめないで同居人を書き加えたケースが50世帯74人分あった。職業や通勤手段など住民票では補えない情報を想像で書き加えたり、世帯から調査票が出されていないのに職員が勝手に作っていたりしていた」とのことです(引用は上記記事からです)。その上で、東浦町は、国勢調査への「補記」を職員が拡大解釈した、というようなことを述べていますが、それぞれの職員が、それこそ勝手に、つまり独断でやったのでしょうか。担当職員が一人しかいなければ納得できなくもないのですが、個々の職員の判断だけで出来る話ではなく、どこかの段階で組織的な判断がなされていると考えるほうが自然です。

 東浦町は、町の幹部ら4名を減給処分などとしており、これで幕引きとしたかったようです。しかし、統計法に違反し、刑法の公文書偽造罪に該当する行為です。これで終わりとするにはあまりに軽すぎます。同町が地方交付税交付団体か不交付団体かはわかりませんが、交付団体であれば、地方交付税の額にも影響してきますので、少しでも多くの金を騙し取ろうとしたということで詐欺的な行為でもあります。

 勿論、住民票が居住実態を忠実に反映しているとは言えません。3月3日付で紹介した、石川結貴『ルポ  子どもの無縁社会』(中公新書ラクレ)にも幾つかの事例が登場しています。しかし、それなら教育委員会などと連絡を取り合ったりして或る程度の調査をすればよいだけの話で、想像で書き加えるというのは公務員がすべきことではありません。

 このようなことが行われた東浦町に対して、総務省は、たとえ地方分権に反するなどと非難を受けても、断固たる措置を下すべきでしょう。そうでなくとも、今、或る意味で中央は地方にナメられています。おそらく、地方分権とは地方が中央を無視して勝手なことを自由に行ってよいことである、とでも勘違いされているのでしょう。どうかすると、中央を恫喝する地方というような光景も見られます。これに対応しているのかどうなのか、中央が地方のご機嫌を取っているかのように見えます。子どもの機嫌を取って甘やかす親のように見えます。中央が取るべき姿勢は逆です。今、地方分権が叫ばれているからこそ、中央が地方に対して厳しい態度で臨むべきなのです。多少は萎縮的な効果があるとよいでしょう。

 まず、地方交付税の配分停止が地方交付税法によって可能であれば、これを行えばよいでしょう。大幅な減額でも可としておきます。住民に不利益が生じないように配慮しつつも、自前の収入だけでは職員への人件費も賄えない自治体に対しては、その人件費の支出にも影響が出る程度の減額は必要です。

 かつての地方自治法では、機関委任事務などとの関係で、国が地方自治体の長を解任できるという規定がありました。様々な批判を受けたため、削除されてしまいましたが、重大な法律違反があった場合には解任を可能とする規定を復活させるべきかもしれません。

 平成の大合併では人口規模で線を引き(たとえば1万人という線です)、その人口以下の町村を強制的に合併させるというような案が出されたことがあります。これはかなり乱暴な案です。しかし、重大な法律違反を犯した自治体については、合併か分割を強制するのも一つの手であると思われます。地方自治体も法人です。私法人であれば、解散命令などを発することができます。公法人についても検討する価値はあるかもしれません。

 そして刑事罰です。トカゲの尻尾切りに終わらないよう、上層部を厳しく罰すべきです。

 今回はかなり過激なことも書きましたが、問題が問題であるだけに、私が考えていることを記してみました。

 ちなみに、国勢調査に関する虚偽ということでは、1970年に行われた国勢調査に関して北海道にある羽幌町が人口の水増しを行っています。当時、羽幌町は姿勢への移行を目指していたそうで、水増し件数はおよそ6千人程度だったとのことです。結末は、羽幌町長や助役らが統計法違反の罪で有罪判決を受けています。東浦町に関しても、同じような結末が望まれているのかもしれません。


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