函館にて

2005年10月14日 | 
櫛形に並んだホームに、内地へ向かう列車や札幌へ向かう列車が並ぶ。
かつてこの駅は、連絡船の駅であった。
「連絡船」。この言葉の響きには、なぜかとても郷愁が篭っている。

青森港の岸壁を、銅鑼の音と共に、腹の底から響くような汽笛をならして出帆した連絡船は、右舷に下北半島、左舷に津軽半島を見ながら平舘海峡を北へと進む。
龍飛崎から先に、陸は無い。
太宰や阿久悠は、さすがうまく表現したものである。
津軽海峡に出ると、それまでより多少揺れを感じるようになる。
右にも左にも陸は無く、船の揺れも合わさって、この上ない不安が襲ってくる。
甲板の下には、深い青色の海が広がっている。
いつしか、はるかに函館山の影を望めるようになると、
「あぁ、北海道にきたな」という達成感というか、安心感というか、
不思議な感動を覚えるのである。
海峡は、色々な顔を見せる。
真夜中、漆黒の海の不気味さ。
沖のイカ釣り漁船の漁火の力強さ。
時にイルカが伴走し、時に人を寄せ付けぬほどの荒波で埋め尽くされる。

そんな連絡船が、かつてこの駅の片隅から出帆していた函館である。
立ち並ぶ洋館、市電、港、朝市、そして坂道。
全てがうまく溶け込んでいる。

函館山から見た夜景は、香港や高雄、神戸、横浜といった、
今まで足を運んだどんな港町の夜景にも劣らない、美しいものであった。
もちろん、どこが1番だなんて決められない。
しかし、函館山から見えたのは、ただ美しい夜景だけではなかった。
空には数え切れぬほどの星が輝いていた。
宝石箱の中に身を投げたような、そんなひとときだった。

北国でありながら、北国にありがちな厳しさや暗さは、この街には無かった。
行き交う人たちの、明るい顔が印象的な街であった。
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2 コメント

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函館 (くら)
2005-10-15 00:23:45
函館っていったことないけど良さそうだね。

この前の連休でいった神戸もよかった。

港にモザイクってショッピングモールがあって、

そこのオープンテラスでドイツ秋祭りをやってたよ。

ドイツの陽気な歌を聴きながら、ドイツビールを飲んで夜景を眺めるのはまた格別だった。
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追加 (くら)
2005-10-15 00:26:29
あ、あとリンクを貼ってくれたんだね。ありがと。

でも、紹介文で「日々のニュースのコメント」ってなってるけどあまりそれは書いてないんだよね。

メインは、ラーメンと中国茶です。

でも、最近は雑記の方が多い。。。(^^;)
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