私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

ポチのお母さんのお母さん

2016年02月18日 | 「いと をかし」なものたち


                     これは我家の愛犬「ポチ」である。
                     柴犬の雑種(女の子)で、我家に来る前は裏山の一人暮らしのおじいさんに
                     飼われていた。
                     おじいさんが亡くなり、ポツンと取り残されていたこの犬を不憫に思った
                     通りがかりの人達がエサを与えていたらしい。

                     その後、おじいさんの家は取り壊され、犬小屋もどこかに持っていかれてしまった。
                     そして、鎖をはずされ、そうとう野良犬になってしまったのである。


                     ある日、家族で山に散歩に行った時だ。その犬がおじいさんの家の前から
                     山の上までずっとついて来た時があった。

                       「このまま家までついてきたらどうしよう」
                       「そうやね、困るね」

                     そう言いながら、又おじいさんの家の前まで来ると、その犬はピタリと止まって、
                     お座りをした。
                     まるで私達を見送るかのように、じっと見つめていた。
                     振り返ってみると、まだこちらを見つめているのだった。

                       「あの犬かしこいなァ」
                       「そうやね、自分の家の前でとまったね」
                       「ついてこなくてよかったわァ」

                     など言いながら家に戻った。


                     その後、その犬は山から下りて、住宅地の中をウロウロするようになった。
                     とうとう食べるものがなくなり、下りてきたのだろう。
                     可哀想に・・・・ そう心を痛めていた時だ。
                     次女が息を切らしてかけ込んできて、

                       「お母さ-ん、あんね、またあの犬が来たんや!連れて来たらアカン?」
                       「アカンアカン、家では飼えないからね」


                     また数日後、次女が飛んできて、

                       「お母さ-ん、あの犬なァ、だんだんやせてきてるんや!可哀想や!」
                       「ウ-ン」(母困る)
                       「もう、お母さ-ん、死んでしまうわ、あの犬、連れて来てもええか?」
                        (もう半分泣いている)
                       「じゃあね、お父さんにお話しとくね」


                     そうして、翌日お父さんの許しを得て、次女は喜び勇んで、犬を迎えに行った。
                     しばらく探して、ようやく保護して帰ってきた。
                     その犬は知らない所に連れてこられて、居心地悪そうにしていたが、
                     次女は「良かったわァ」と喜んで犬をなでまわしていたのであった。
                     こうして、その犬は「ポチ」と新たに名づけられ、我家の一員になった。


                     数か月して、ポチが我家に慣れた頃、母が新潟からやって来て、ポチと対面した。
                     すると、ポチは母を見るなり、「ワンワン、ウ-ッ」と吠えたのだ。
                     それも仕方ない。我家の家族に慣れるのも数ヶ月がかかったのだから、
                     初対面の母を警戒して吠えたのは当然のことだった。


                     すると、母はポチの目をじっと見つめて、

                       「あのね、私はね、あんたのお母さんのお母さんなの」
                        (ポチはおとなしく母の言うことを黙って聞いている)

                       「だから吠えなくていいんだからね」
                        (ポチはじっと母の眼をみつめている)

                     それからというもの、母に吠えたことは一度もなかった。

                     ポチが賢かったのか、母がエラかったのか・・・・・
                     どちらにしても、二人の心がその時に繋がったのは間違いないのであった。

                     その後、ポチは18年の天寿を全うして天国へ旅立っていった。

2014-04-13

* * *

2月8日から始まった思い出深い記事再掲載10回目です。
2016-02-18

コメント (8)
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