これは我家の愛犬「ポチ」である。
柴犬の雑種(女の子)で、我家に来る前は裏山の一人暮らしのおじいさんに
飼われていた。
おじいさんが亡くなり、ポツンと取り残されていたこの犬を不憫に思った
通りがかりの人達がエサを与えていたらしい。
その後、おじいさんの家は取り壊され、犬小屋もどこかに持っていかれてしまった。
そして、鎖をはずされ、そうとう野良犬になってしまったのである。
ある日、家族で山に散歩に行った時だ。その犬がおじいさんの家の前から
山の上までずっとついて来た時があった。
「このまま家までついてきたらどうしよう」
「そうやね、困るね」
そう言いながら、又おじいさんの家の前まで来ると、その犬はピタリと止まって、
お座りをした。
まるで私達を見送るかのように、じっと見つめていた。
振り返ってみると、まだこちらを見つめているのだった。
「あの犬かしこいなァ」
「そうやね、自分の家の前でとまったね」
「ついてこなくてよかったわァ」
など言いながら家に戻った。
その後、その犬は山から下りて、住宅地の中をウロウロするようになった。
とうとう食べるものがなくなり、下りてきたのだろう。
可哀想に・・・・ そう心を痛めていた時だ。
次女が息を切らしてかけ込んできて、
「お母さ-ん、あんね、またあの犬が来たんや!連れて来たらアカン?」
「アカンアカン、家では飼えないからね」
また数日後、次女が飛んできて、
「お母さ-ん、あの犬なァ、だんだんやせてきてるんや!可哀想や!」
「ウ-ン」(母困る)
「もう、お母さ-ん、死んでしまうわ、あの犬、連れて来てもええか?」
(もう半分泣いている)
「じゃあね、お父さんにお話しとくね」
そうして、翌日お父さんの許しを得て、次女は喜び勇んで、犬を迎えに行った。
しばらく探して、ようやく保護して帰ってきた。
その犬は知らない所に連れてこられて、居心地悪そうにしていたが、
次女は「良かったわァ」と喜んで犬をなでまわしていたのであった。
こうして、その犬は「ポチ」と新たに名づけられ、我家の一員になった。
数か月して、ポチが我家に慣れた頃、母が新潟からやって来て、ポチと対面した。
すると、ポチは母を見るなり、「ワンワン、ウ-ッ」と吠えたのだ。
それも仕方ない。我家の家族に慣れるのも数ヶ月がかかったのだから、
初対面の母を警戒して吠えたのは当然のことだった。
すると、母はポチの目をじっと見つめて、
「あのね、私はね、あんたのお母さんのお母さんなの」
(ポチはおとなしく母の言うことを黙って聞いている)
「だから吠えなくていいんだからね」
(ポチはじっと母の眼をみつめている)
それからというもの、母に吠えたことは一度もなかった。
ポチが賢かったのか、母がエラかったのか・・・・・
どちらにしても、二人の心がその時に繋がったのは間違いないのであった。
その後、ポチは18年の天寿を全うして天国へ旅立っていった。
2014-04-13
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2月8日から始まった思い出深い記事再掲載10回目です。
2016-02-18
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2月8日から始まった思い出深い記事再掲載10回目です。
2016-02-18