このフリージアの花には忘れ得ぬ思い出がある。
私が20才の頃のこと。まだお付き合いを始めて間もない頃に、
彼がプレゼントしてくれた花である。
「通りがかった花屋さんできれいだったから・・・」と言葉を添えて。
生まれて初めて男性から花を贈られた。
夢見る乙女は、情熱的な赤いバラを差し出し、「君を愛している」なァ-んて
言われるのが、素敵だと思っていた。
だが、人にも個性や人格があるように、花にもそれなりの個性や花格があるのだ。
お付き合いを始めたばかりの二人には、情熱的というより優しい雰囲気の親しみやすい
花の方がふさわしかった。
そのフリージアの花はふんわりとよい香りがして、黄色い花色が一人暮らしの部屋を
温かい部屋にしてくれた。
また、その彼はフリージアの花がよく似合っていた。
素朴で優しくて誠実そうで・・・・。(あとから分かったことだが、花言葉は「誠実」だった。)
そして、その彼とのお付き合いは5年続き、生涯を共にしようと結婚することになった。
その二人の結婚披露宴の時、出席者全員のスピーチ(全員が勝手に喋りはじめたのである)が
終わり、サプライズで新郎新婦に歌を歌ってもらいましょうということになった。
選んだ曲は加山雄三の「君といつまでも」だったのだが、出だしのキーが高すぎて、
私は途中から声が出なくなってしまった。
結果、彼一人が声高らかに歌ったのであった。
♪二人を夕やみがつつむ・・・・
君のひとみは星とかがやき 恋するこの胸は炎と燃えている
大空染めていく 夕陽いろあせても
二人の心は変わらない いつまでも
「しあわせだなァ.... 僕は君といる時が一番幸せなんだ
僕は死ぬまで君を離さないぞ いいだろう...」
ピューッー ピュー ビュー
ワーワー パチ パチ パチ (会場からの大声援)
その彼とは、もちろん今も一緒に暮らす我背の君である。
今では、私の瞳は星のように輝いていないだろうし、
昼寝姿を見て胸が炎と燃えるどころか、
小さな残り火すら消してしまうこともあっただろうが、
それでも一緒に居てくれることに感謝している。
これからは、私が「君といつまでも」を歌い、
「僕は死ぬまで君を離さないぞ、いいだろう」と言わなくてはなるまい。
そう面と向かって言えば、恐らく「勘弁してくれ! 離してくれェ!」なんて
逃げられるだろうから、このことは胸にしまっておくことにしよう。
2014-04-18
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2月8日から始まった思い出深い記事再掲載の第7回目です。
2016-02-15
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2月8日から始まった思い出深い記事再掲載の第7回目です。
2016-02-15