カンボジア経済

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2021年カンボジア経済10大ニュース

2021年12月30日 | 経済
 2021年も押し詰まりました。カンボジア総合研究所チーフエコノミスト鈴木博の選ぶ「カンボジア経済2021年10大ニュース」です。(なお、日付はブログ記事掲載日です)
(写真は、アンコールワットです)

第1位 新型コロナの猛威 市中感染拡大でロックダウン

 今年も新型コロナウイルス問題が世界中を覆いました。カンボジアは、2月20日市中感染事件により感染が一気に拡大しました。この感染は、中国人女性が隔離ホテルから賄賂を使って脱走し、クラブやサービスアパートメント等で感染を広げるという悪質なケースでした。12月26日の保健省の発表によれば、死者は累計3008名、累計陽性者数は12万449名となっています。4月にはロックダウンの導入に踏み切る等、カンボジアも様々な規制により、感染拡大防止を図りました。最も重要な対策であるワクチン接種については、カンボジアは大成功を収め、12月25日時点で成人の99%が2回以上の接種を完了し、陽性者数や死者数を激減させることに成功しています。この成果を受けて、11月には各種規制を撤廃し、入国制限も大幅に緩和しています。しかし、カンボジア経済は海外への依存度が高く、先進国や中国、周辺諸国の経済状況の悪化が直接大きく影響しました。欧米への輸出がメインの縫製業、中国等からの観光客に頼る観光業、中国等からの投資に頼る不動産・建設業等、カンボジア経済の主要エンジンは大きな打撃に直面しました。政府は、貧困世帯への現金支援、失業・一時帰休労働者への手当支援、中小企業への融資支援等を行いました。2020年の成長率はマイナス3.1%でしたが、2021年はプラスに戻し、3%前後の成長率となる見込みです。
 ブログ「カンボジア経済」では、毎週月曜日に前週の新型コロナの状況をお伝えしています。

4月19日 新型コロナ カンボジアの状況 4月19日 ロックダウンに踏み切る
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d49aae3a8902c09f9c46ec3cf22ebcf7

12月27日 新型コロナ カンボジアの状況 12月27日 治療薬の販売を開始
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/71a5aaeba25e43111c7039edb7f26dba


第2位 米中冷戦 中国軍進出疑惑に対抗して米国は制裁

 米国は、カンボジアへの中国軍進出に神経をとがらせており、「汚職や人権侵害に厳しく対処し、地域と世界の安全保障を脅かす中国軍の影響を減らすようカンボジア政府に促す」として、武器輸出の禁止等の輸出規制の厳格化や、政権幹部の資産凍結等の制裁を実施しています。特に問題となっているのは、シアヌークビル近郊のリアム海軍基地で、万一にも中国軍が進出し、中距離ミサイルや電子線部隊を配備した場合の脅威は見逃せないと米国が判断している可能性があります。米国は今後、制裁をエスカレートさせていく可能性もあり、米国・カンボジアの対応が注目されます。

12月14日 米国 カンボジア向け輸出規制厳格化 中国軍の影響拡大を問題視
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/51a0dffd7a6b644c705d7fab8a127a41

10月22日 リアム海軍基地 中国軍疑惑拡大 米国大使館が抗議声明
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6d6b73e7bcad7f97ec72e6db5c9a3b82


第3位 カンボジア初の油田 産出始まるも開発企業が破たん

 カンボジアの海上油田開発を行っていたシンガポール系のクリスエナジーは、登記上の本社があるケイマン諸島の裁判所に会社清算の申し立てを行いました。クリスエナジーは、シアヌークビル沖のミニフェーズ1Aで掘削した5本の油井からの原油生産量が予測値を大きく下回っていると発表していました。海上油田の生産開始は、カンボジアにとっても明るいニュースでしたが、残念な状況となりました。なお、タイとカンボジアで国境が画定していない海域での両国の共同開発に向けた交渉が期待されています。

6月10日 カンボジアの海上油田暗礁に 開発会社が破たん
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/a55a7a4afdddae1aced4e8df3c8ffc6c

10月21日 タイ 国境未画定海域での海上油田開発 カンボジアと交渉再開へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/2606cafb6a7a97535a88ceef0421dcbd


第4位 新投資法施行 18の投資優遇分野に優遇措置

 投資優遇分野や免税等の投資優遇策を定めた新投資法が公布されました。2003年改正投資法を、新規投資誘致、既存投資企業のビジネス拡大を一層促進する観点から改正を実施したものです。今回の新投資法では、今後のカンボジア経済の主軸として期待される分野・業種や、税制優遇の適用範囲および選択肢の拡大に関する規程がポイントとなります。また、適格投資プロジェクト関連手続の迅速化や投資家や投資資産の保護拡充などに関する規程も注目点となります。

11月4日 新投資法施行 18の投資優遇分野に優遇措置
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/1344cf992103e16a71584e8cbb5a7186


第5位 カンボジアも 石炭火力発電所の新規開発停止

 カンボジア鉱業エネルギー省のスイ・セン大臣は、在カンボジア英国大使との面談で、今後新規の石炭火力発電所の建設を行わない方針を伝えました。英国で開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)を意識した発言と見られます。スイ・セン大臣は、今後、発電燃料を液化天然ガス(LNG)や水素に転換していくとともに、太陽光発電等の再生可能エネルギーを振興するとしています。策定中の電力開発計画においては、再生可能エネルギーによる発電の比率を59%にまで高める方向で検討中であるとのことです。これは、これまでの開発計画に比べると温室効果ガスの排出量を34%減少させる効果があるとしています。

11月10日 カンボジアも 石炭火力発電所の新規開発停止
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/4ed955ad5ac4edc79d44f579fb8c5949


第6位 自由貿易協定に期待 RCEP、中国FTAが2022年1月1日に発効へ

 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が、2022年1月1日に発効することとなりました。RCEPは、関税の削減などを通じて貿易の自由化を進める協定で2020年11月に15カ国(ASEAN10か国、日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド)が署名しました。また、カンボジアと韓国は、自由貿易協定に調印しました。中国との自由貿易協定も2022年1月に発効の予定です。RCEP等の自由貿易協定が、カンボジアにどの程度の輸出拡大効果をもたらすかは、今後の推移を見守る必要があるものと見られます。

11月11日 RCEP 2022年1月発効へ 各国の批准手続き進む
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/3b623f4e9fb41deca27d181af33d6664

11月3日 カンボジアと韓国 自由貿易協定に調印
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/5c8633d7f002e62d866af99b1f8b6374


第7位 カンボジア ついに国債発行へ 来年度予算に3億ドル相当計上

 2022年度予算法において、初めて国債を発行するとしており、3億ドル相当を発行する計画としています。政府では、国債によって調達した資金は、エネルギー、灌漑、インフラ等の公的投資事業35件に使用するとしています。国債を使った民間からの借り入れは、金利も高く、返済期間も短いものとなるため、政府の資金繰り安定化や金融機関のリエル使用促進といったことを目的とした限定的発行とすることが当面は必要となるものと見られます。

11月2日 カンボジア ついに国債発行へ 来年度予算に3億ドル相当計上
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/a190b52e93718e997aeff95317b4272c


第8位 ラナリット殿下 ご逝去

 11月28日、ノロドム・ラナリット殿下は、滞在先のフランスでご逝去されました。77歳でした。ラナリット殿下は、故シハヌーク前国王陛下の次男として1944年にプノンペンで生まれました。国際連合カンボジア暫定統治機構の下で1993年に実施された総選挙では、結成して以来率いていたフンシンペックが外部の予想に反して第1党となりました。第2党となったフン・セン氏率いる人民党との妥協の産物として、ラナリット殿下が第1首相、フン・セン氏が第2首相という2人首相制となりました。フンシンペック党やラナリット党党首を務める等して、王党派を率いることを目指しましたが、人民党の力には抗しきれず、晩年は政治的には不遇となりました。しかし、国外追放や政治からの引退宣言等に負けず、最後まで粘り強く戦う姿勢を見せられていました。

12月1日 ラナリット殿下 ご逝去
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/153677f15d3239a6cddd3e9db382050e


第9位 パリ和平協定締結30周年 カンボジア和平に日本は大きく貢献

 10月23日は、1991年にパリ和平協定が締結されて30周年となりました。あまり知られていないことですが、カンボジアの和平とその集大成であるパリ和平協定への道は、日本の協力なくしては実現できなかったと言っても過言ではありません。ソ連(当時)や中国の横やりを防ぎつつ、米国の反対を抑え、タイやベトナムといった周辺諸国の同意を取り付けていった日本の独自外交の成功例と言えます。

10月28日 パリ和平協定締結30周年 カンボジア和平に日本は大きく貢献
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/ce21d535ed2d470248bff6ece8524742


第10位 カンボジア・デジタル経済社会政策枠組 発表

 カンボジア政府は、新たな経済成長のエンジンとして、勃興するデジタル経済の基盤を整備すべく、今後15年間を対象とする「カンボジア・デジタル経済社会政策枠組2021年~2035年」を策定して発表しました。この枠組では、カンボジアの情報通信技術(ICT)セクターに新風を吹き込み、一気にデジタル時代にジャンプするためにその開発速度を上げることが期待されています。

6月17日 カンボジア・デジタル経済社会政策枠組 発表
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/3f235eb8cbc11f89103325bcc750f367

9月15日 国家デジタル経済社会評議会を設立
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/9bb3bd19a82032987a7b8d8c420c0da4


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