英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

棋士雑感 その1 羽生善治九段

2019-05-17 20:57:04 | 将棋
ここ1年の将棋界を振り返り、思い浮かぶ棋士について、気ままに書き連ねてみます。
(本来ならば、『棋士活躍度ランキング』を集計しなければならないのですが……)

まず、やはり、この方からですよね。

羽生善治九段
 2017年に渡辺竜王から竜王位を奪取し、『永世七冠』を達成。さらに、同年度のA級順位戦で6人によるプレーオフを勝ち抜き、佐藤天彦名人への挑戦を決めた時には、その9か月後に“羽生九段”を名乗ることになろうとは……
 まあ、その可能性も低くないと考えてはいたが、名人挑戦、棋聖位と竜王位の防衛戦の3タイトル戦にすべて敗北するとは思いたくなかった。
 「無冠の可能性が低くない」と考える要素は、いくつかあった。
・PCソフトを活用した精細な研究(2017年度の王座戦の対中村大地戦や2018年度のA級順位戦の対豊島戦など、“相手の研究のレールに乗ってしまっている”と感じることが多くなった)
・ソフトで検討することによって、今までの常識を覆す将棋の考え方、手筋、形勢判断が開発された。
・若手の棋力自体も高くなってきている
・羽生将棋の指し手もすべてが正しいのではなく、疑問手も少なくないと判明し、恐れなくなった。
・羽生本人の衰え(特に、終盤によろけることが増え、序盤の劣勢を踏みとどまり、逆転する割合も低くなった)


 と、不安要素がいくつも浮上してきた。
 が、衰えを見せ始めた2016年度(27勝22敗 .551)、2017年度(32勝22敗 .593)より、昨年度の方がより、新時代の将棋に適応してきているように感じる。
 29勝23敗 .558と勝率は上がっていないが、勝つときの将棋はやはり強く(2017、2018年度もそうだったが)、A級順位戦の対稲葉、対三浦、対広瀬戦などは流石の強さを発揮し、挑戦はならなかったものの、7勝2敗の2位で衰えたとは言わせない。2戦目の対深浦戦の執念の大逆転が大きかったように思う。これを敗れていたら、初戦(対糸谷)に続いての連敗となり、暗雲が立ち込めたかもしれない。
 また、研究にハマってしまった感も減ってきている。

 愚痴を言わせてもらうと、佐藤天彦名人との7番勝負の敗退の痛手が大きかった。
 羽生世代の棋士と異質な感覚、指し手で、佐藤名人に敗れたときのダメージは大きいような気がする。


 そこへ、“序盤、中盤、終盤、隙のない”豊島八段が棋聖位に挑戦してきてしまった。2勝3敗で敗れ、保持するタイトルは竜王のみとなった。豊島八段には王位戦挑戦者決定戦でも敗れている。
 竜王挑戦は広瀬八段。広瀬八段なら研究将棋の異質感は強くない。
 第1局の難解な将棋を勝ちきり、第2局は無理気味の仕掛けをしぶとく繋ぎ、勝利。2連勝の出だし、第2局は広瀬八段にとってダメージの残る敗局で、“タイトル100期”が見えてきたが、広瀬八段は想像以上に手強かった(まあ、第3局、第4局は羽生竜王の勝ち将棋で、どちらかを勝ちきっていれば違う結果が出ていたかもしれない。

 そんな訳で、2018年度は羽生ファンにとって(たぶん羽生九段自身にとっても)、辛い年度になってしまった。
 それでも、NHK杯将棋トーナメントで11回目の優勝を遂げ、ほんのわずかではあるが溜飲が下がった。

 一般的に持ち時間の少ない将棋は若い棋士が有利だと考えられるが、昨今の将棋事情を考えると、持ち時間が少ない対局は研究通りの局面になることが少ない。
 わずかな手順の違いが想定外の局面に進むこともあるし、わざと変化して研究を外すことも有効である(変化に対応する研究手順の準備があったとしても、短い考慮時間ではそれを活用するのは難しい)
 となると、局面に応じた深い読みや大局観が勝敗を左右することになる。そうなると、羽生世代の方が強いのかもしれない。


 それに、全てのソフト活用棋士には当てはまらないが、研究の際、変化手順や局面の形勢判断をソフトに頼ると、読む能力、考える能力が退化してしまうように思う。

 2019年度は、羽生(羽生世代)の逆襲も大いにあり得る。
 
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