英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その4

2024-07-01 10:38:52 | 将棋
「その1」「その2」「その3」………大概、「その3」ぐらいで疲れてくる……)

 木村九段はここで△3一金と金を逃げたが、この手が問題だった。
 ここは、△6四飛と遊び駒の飛車を世に出すのが急所だった。
 この手に対し、飛車成りを防ぐ▲6五歩は△4四飛と切ってしまうのが決め手となる。何しろ先手の期待の4四の桂と遊び飛車の交換は、単純な駒の価値を逆転させる働きの差がある。しかも、先手は切ってくださいと、一手をかけて▲6五歩とお願いしたことになる。▲6五歩△4四飛に先手は▲同歩と応じるしかなく、そこで△4五桂が痛すぎる!この桂打ちの場所は飛車切りによって生じているのが、先手にはなんとも悔しい。
 そこで△6四飛には先に▲3二桂成と金を取る。
 以下△3二同銀▲3一銀△6九飛成▲4二金(変化図1)と後手玉に絡みつく。

 後手としては穴熊玉が引っ張り出され、守備は銀1枚で、しかも4二に金と絡みつかれ、嫌な展開だ。
 しかし、図で△6四角の王手角取りが好手。これには▲5五角と打ち返す手があるが、△同角▲同飛に再度△6四角(変化図2)と打って、ほぼ後手勝勢。

 変化図2から、先手も▲3二金△同玉▲4三銀△同玉▲4四歩△同玉▲5四金(変化図3)と強引に6四の先手の角を排除する頑張りがあるが、

 △3三玉▲6四金に△2九金▲2七玉(▲2九同玉は△4九龍▲3九合駒△1七桂以下詰み)と足場を作っておいて、△6四龍と手を戻して後手勝勢。
 上記の手順の△3三玉に▲6四金と角を取る前に▲4四角と足掛かりを作っておいて角を取る手も考えられるが、▲4四角には△3四玉と角にプレッシャーを掛けて逃げる手が巧手で、やはり後手勝勢。


 木村九段は変化図1以下の絡みつきの嫌味が気になり、△3一金と金取りを受けたが、その金は浮き駒状態で、▲5一飛成と金当たりの先手で飛車を成り込まれてしまう。上記の変化とでは、彼我の飛車の働き具合のプラスマイナスが大きく、後手"ほぼ勝勢”から"互角”に戻ってしまった。

 大きく棋勢を損じたとは言え、金取りを△4一金打と龍をはじき返した形勢は、まだ互角で、《これでも指せる》という木村九段の判断は間違いとは言い切れない。ただ、彼我の飛車の勢いの差もあり、将棋の流れは悪い。それに、こういう指し方は木村九段らしくないなあ……と。
続く

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