■43■
武ちゃん「ウチの美容院でパーティーするからおいで~や」
「武ちゃん」は大阪北部の千里中央の美容院を辞めて、
東住吉区針中野駅前の美容院に勤めていました。
武田先生時代の教え子「梅やん」の親が経営する繁盛店に誘われたようです。
「福嶋」を誘いました。
福嶋は白いホンダプレリュードで迎えにきてくれました。
上田「ホンマにお前の車か?マトモすぎやん・・」
福嶋「大人やけんのう」
「窓も電動や、閉めてみ!」
上田「おお~!」(窓を閉める)
福嶋「・・・・んんッ」
「プ~~~ッ、プスプス~」
上田「んむむっっ、カチッ、カチ、カチカチ・・」(開かない・・)
福嶋「窓ロックもついとんねん!恐れ入ったか!」
福嶋「ハハハ!ようし行くぞー!」
武ちゃんが勤める「ラーク美容室」は針中野駅前の一等地にあり、
お店も広く、たくさんのスタッフがいました。
「梅やん」は僕と同い年でしたが、僕が関美で助教師をやっていたのを知っていて、
しばらくの間「上田先生」と呼びました。
後に僕が「アドロ」と名付けたファンキーな明るい女性スタッフは、
僕の事を漫画「ハイスクール奇面組」のゴウ君に似ていると、
しばらくの間「ゴー君」と呼びました。
武ちゃん、梅やん、アドロ、
明るいスタッフがいるラーク美容室はアットホームで好感が持てました。
美容室でのパーティーは定期的にやっているようで、
店内にはカラオケ機器までありました。
福嶋「一番行かさしていただきます!」
酒が飲めない福嶋はカラオケで目立とうとしました。
福嶋「♪あ・な・た・が・わ・た・し・に・くれたもの~♪」
脇をワキワキしながら場を盛り上げます。
福嶋「♪だいすきだったけど~~~っっ!!ブホッ!」
福嶋の口元から前歯の「差し歯」がぶっ飛びました。
「ギャハハハハ!!」店内は大ウケでした。
福嶋「探スてくれ~」
カラオケを止めて、全員で福嶋の「差し歯」を探しました。
しばらく探したけどなかなか出てきません。
「あ、アレちゃう?」
梅やんが四つん這いの福嶋の靴を指しました。
福嶋の「差し歯」は、自分の靴の裏に貼りついていました。
汚れた「差し歯」を簡単に水で流しただけで、再び元の位置に差し込みました。
上田「お前、それ汚いワ!」
福嶋「ねえ(無い)よりマシや!」
美容室パーティーではモノ足らず、
近くのカラオケボックスになだれ込みました。
みんなで焼きソバを食べた後、福嶋が立ち上がりました。
福嶋「一番行かさしていただきます!」
「と、その前に・・・」
予防として自ら「差し歯」を抜き取り、空の皿の上に置きました。
福嶋「♪きぃ~みぃ~がぁ~いた なぁ~つぅ~わぁ♪」
「歯抜け」の顔は反則で、みんな腹を抱えて笑いました。
最後まで歌い終えた福嶋が席に戻って言いました。
福嶋「オレの歯がねえ(無い)!」
歌っている間に「差し歯」を乗せた空の皿は店員に下げられたようです。
「ギャハハハハ!!」
歯抜けの福嶋が部屋を出てダッシュしました。
上田「あきらめろーー!!」
福嶋の「差し歯」は戻ってきませんでした。
カラオケも時間になり、
福嶋のプレリュードに乗り込みました。
福嶋「上田、今日ウチに泊まってくれるか?」
「お化けがおるんよ、怖くてな~」
上田「見たんか!?」
福嶋「いや、お化けは見てねえ」
「寝とったらな、天井の板が開いたんよ」
「ス~って」
上田「風ちゃうんか?」
福嶋部屋に泊まる事になりました。
3階のアパートには躊躇せずに土足で上がりこみました。
部屋の中は随分と片付いて、ダンボールが目立ちました。
福嶋「マスターとケンカしてな、店変わるんよ」
「この部屋も怖いしなぁ」
上田「で、天井の何処が開くんや?」
壁に手をつかせ、福嶋の肩に立ち上がり、
「開いた」という天井部分の薄い板を横にずらしてみました。
天井板は重く「ズズズー」と砂をかむ音がしました。
懐中電灯を照らし、屋根裏に首を突っ込み辺りを伺いました。
天井板が重かったのはレンガが乗せられていたせいでした。
天井裏はクモの巣も無く、梁が複雑にクロスしていて
人間が通るのは不可能でした。
埃もたくさん積もっていて猫や鼠が通った形跡も見当たりません。
上田「何もないぞー」
「お前の差し歯、ココにも無いぞーハハハハ」
とりあえず開けた天板をそのままに福嶋の肩から降りました。
福嶋「おかしいのう、確かに開いたんやけどなぁ」
「何か重シでも乗せるかのう・・」
上田「え?あの重シ、お前が乗せたんちゃうんか?」
福嶋「何のことや?」
上田「開いた天井板の上に赤いレンガが乗せてあったぞ・・」
福嶋「・・・・前の住人か」
「やっぱりこの部屋、何かあるワ・・」
上田「んなわけあるか、風やって」
もう一度福嶋の肩に乗り、天井板の真ん中にレンガを乗せて
しっかりと元に戻しました。
上田「これでもう大丈夫や!」
「寝るぞ~!」
福嶋「お前勇気あるのう、来てもろうてよかったワ」
上田「【北】はどっちや?北枕だけはやめておくワ」
座布団を二つ折りした枕で仰向けに横たわりました。
福嶋「じゃあ電気消すぞ」
真っ暗な部屋で天井を気にしながら見ていました。
(確かに、誰が何の目的でレンガを置いたんやろう・・)
「ズ」
暗闇の静寂のなかで、少し砂をかむ音がしました・・
視線を天井板に集中しました。
「ズズズズー」
上田・福嶋「ワァ======!!」
逃げるように二人で部屋を飛び出しました。
上田「ハァハァ、アカン、今日はウチに泊まれ・・」
次の日、福嶋は引っ越しました。
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福嶋と・・
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