エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■43■「お化け屋敷」

2018年01月25日 | エルソル大阪物語

■43■

武ちゃん「ウチの美容院でパーティーするからおいで~や」

「武ちゃん」は大阪北部の千里中央の美容院を辞めて、
東住吉区針中野駅前の美容院に勤めていました。
武田先生時代の教え子「梅やん」の親が経営する繁盛店に誘われたようです。

「福嶋」を誘いました。
福嶋は白いホンダプレリュードで迎えにきてくれました。

上田「ホンマにお前の車か?マトモすぎやん・・」

福嶋「大人やけんのう」
  「窓も電動や、閉めてみ!」

上田「おお~!」(窓を閉める)

福嶋「・・・・んんッ」
  「プ~~~ッ、プスプス~」

上田「んむむっっ、カチッ、カチ、カチカチ・・」(開かない・・)

福嶋「窓ロックもついとんねん!恐れ入ったか!」

福嶋「ハハハ!ようし行くぞー!」

武ちゃんが勤める「ラーク美容室」は針中野駅前の一等地にあり、
お店も広く、たくさんのスタッフがいました。

「梅やん」は僕と同い年でしたが、僕が関美で助教師をやっていたのを知っていて、
しばらくの間「上田先生」と呼びました。

後に僕が「アドロ」と名付けたファンキーな明るい女性スタッフは、
僕の事を漫画「ハイスクール奇面組」のゴウ君に似ていると、
しばらくの間「ゴー君」と呼びました。

武ちゃん、梅やん、アドロ、
明るいスタッフがいるラーク美容室はアットホームで好感が持てました。

美容室でのパーティーは定期的にやっているようで、
店内にはカラオケ機器までありました。

福嶋「一番行かさしていただきます!」

酒が飲めない福嶋はカラオケで目立とうとしました。

福嶋「♪あ・な・た・が・わ・た・し・に・くれたもの~♪」
脇をワキワキしながら場を盛り上げます。

福嶋「♪だいすきだったけど~~~っっ!!ブホッ!」
福嶋の口元から前歯の「差し歯」がぶっ飛びました。

「ギャハハハハ!!」店内は大ウケでした。

福嶋「探スてくれ~」
カラオケを止めて、全員で福嶋の「差し歯」を探しました。
しばらく探したけどなかなか出てきません。

「あ、アレちゃう?」
梅やんが四つん這いの福嶋の靴を指しました。
福嶋の「差し歯」は、自分の靴の裏に貼りついていました。

汚れた「差し歯」を簡単に水で流しただけで、再び元の位置に差し込みました。

上田「お前、それ汚いワ!」
福嶋「ねえ(無い)よりマシや!」

美容室パーティーではモノ足らず、
近くのカラオケボックスになだれ込みました。

みんなで焼きソバを食べた後、福嶋が立ち上がりました。

福嶋「一番行かさしていただきます!」
  「と、その前に・・・」

予防として自ら「差し歯」を抜き取り、空の皿の上に置きました。

福嶋「♪きぃ~みぃ~がぁ~いた なぁ~つぅ~わぁ♪」

「歯抜け」の顔は反則で、みんな腹を抱えて笑いました。

最後まで歌い終えた福嶋が席に戻って言いました。

福嶋「オレの歯がねえ(無い)!」

歌っている間に「差し歯」を乗せた空の皿は店員に下げられたようです。

「ギャハハハハ!!」

歯抜けの福嶋が部屋を出てダッシュしました。

上田「あきらめろーー!!」

福嶋の「差し歯」は戻ってきませんでした。

カラオケも時間になり、
福嶋のプレリュードに乗り込みました。

福嶋「上田、今日ウチに泊まってくれるか?」
  「お化けがおるんよ、怖くてな~」

上田「見たんか!?」

福嶋「いや、お化けは見てねえ」
  「寝とったらな、天井の板が開いたんよ」
  「ス~って」

上田「風ちゃうんか?」

福嶋部屋に泊まる事になりました。
3階のアパートには躊躇せずに土足で上がりこみました。

部屋の中は随分と片付いて、ダンボールが目立ちました。

福嶋「マスターとケンカしてな、店変わるんよ」
  「この部屋も怖いしなぁ」

上田「で、天井の何処が開くんや?」

壁に手をつかせ、福嶋の肩に立ち上がり、
「開いた」という天井部分の薄い板を横にずらしてみました。

天井板は重く「ズズズー」と砂をかむ音がしました。

懐中電灯を照らし、屋根裏に首を突っ込み辺りを伺いました。
天井板が重かったのはレンガが乗せられていたせいでした。

天井裏はクモの巣も無く、梁が複雑にクロスしていて
人間が通るのは不可能でした。
埃もたくさん積もっていて猫や鼠が通った形跡も見当たりません。

上田「何もないぞー」
  「お前の差し歯、ココにも無いぞーハハハハ」

とりあえず開けた天板をそのままに福嶋の肩から降りました。

福嶋「おかしいのう、確かに開いたんやけどなぁ」
  「何か重シでも乗せるかのう・・」

上田「え?あの重シ、お前が乗せたんちゃうんか?」

福嶋「何のことや?」

上田「開いた天井板の上に赤いレンガが乗せてあったぞ・・」

福嶋「・・・・前の住人か」
  「やっぱりこの部屋、何かあるワ・・」

上田「んなわけあるか、風やって」

もう一度福嶋の肩に乗り、天井板の真ん中にレンガを乗せて
しっかりと元に戻しました。

上田「これでもう大丈夫や!」
  「寝るぞ~!」

福嶋「お前勇気あるのう、来てもろうてよかったワ」

上田「【北】はどっちや?北枕だけはやめておくワ」

座布団を二つ折りした枕で仰向けに横たわりました。

福嶋「じゃあ電気消すぞ」

真っ暗な部屋で天井を気にしながら見ていました。
(確かに、誰が何の目的でレンガを置いたんやろう・・)

「ズ」

暗闇の静寂のなかで、少し砂をかむ音がしました・・
視線を天井板に集中しました。


「ズズズズー」

上田・福嶋「ワァ======!!」

逃げるように二人で部屋を飛び出しました。

上田「ハァハァ、アカン、今日はウチに泊まれ・・」

次の日、福嶋は引っ越しました。

■43■

福嶋と・・


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