■42■
新居のマンションは北野田駅から徒歩15分の所にありました。
引越し荷物を乗せた車の中では「引越し部隊」がご機嫌でした。
武ちゃん「次のトコロも1階なんやろ、楽勝やな!」
福嶋「上田太っ腹やなぁ、みんなに焼肉って・・ゴッチョー!」
しかし到着すると、上機嫌の「福嶋」が静かになりました。
『グリーンハイツヒロタ』は
下を小川が流れる崖の斜面に建っていました。
車通りの一階部分はこのマンションでは3階にあたり、
僕の住む一階は【地下2階】になるのです。
重たい荷物を持った福嶋達が
「だまされた!だまされた!」と言いながら階段を降りました。
すぐ目の前には桃山大学があり、マンションの住人の殆どは大学生でした。
部屋の横は竹やぶだったので、よくムカデが出ました。
ムカデはタバコのヤニが嫌いというので吸殻を並べました。
ドアの外にも大量に吸殻をきれいに並べたので
「変な宗教でもやってるんじゃないか?」と学生達は僕に近づきませんでした。
『ターニン河内長野店』は、
河内長野近くの駅から「211段」もの階段を登った高台にありました。
「だまされた!だまされた!」と言いながら登りました。
50坪の巨大なお店は、総ヒノキ張りでした。(四万十産ヒノキ)
店内は「理美容」にする予定だったらしく、5台のセット面が左右に分かれてありました。
OPENまでの3日間は朝からずっとポスティングでした。
新興住宅街らしく、どの家にも「猛犬注意」の張り紙があり、
ドキドキしながらチラシを入れました。
美容師さんがOPENまでに間に合わず、
OPEN直後は「理美容」というチラシを見た主婦が殺到して大変な事になりました。
バックシャンプーの出来る僕は戦力になりましたが、
久里マスターのレディースカット(特にパーマ)は評判悪く、
数日後には女性客はまばらになりました。
結局その後も美容師は入らず、チラシ効果も消えた頃になるとお店は随分暇になりました。
・新興住宅街でまだ家の建ってない区画がたくさんある
・ほとんどがサラリーマンで平日に家にいるような人がいなかった
・新しい住宅ばかりでお年寄もほとんどいない
暇になった店はマスターと僕でお客さんの全てをこなしてしまう為、
困った後輩は辞めてしまいました。
そんなある日、思いもよらない奴が突然お店に現れました。
「上田君久しぶり~、元気してた~?」
『ぷっつん女子・富長』でした。
富長「もう終わるやろ?」
「車で来たから、家まで送ったるワ~」
閉店後、赤いシビックに乗り込みました。
上田「おいおい、ちょっと待てよ~・・」
「お前、どうやってココが分かった?」
「3~4人しか知らんはずやで?」
富長「ふふふ、分かんねんって、だいたい」
上田「お前な・・相変わらず怖いぞ・・」
富長「ふふふ、まあまあ、それより家何処よ?」
「この道でええの?合ってる?」
上田「合うとるがな・・」
富長「スーパーとか無いん?ご飯作ったるワ」
上田「マジ!?」
オートロックのワンルームに富長を招き入れました。
富長「うわ~っ、出世したな~上田君」
「でも安心しいや、もっと出世すんで~」
「綺麗な部屋やな~」
富長がササッと作った野菜炒めを食いました。
上田「お前、急に来て・・何か話がありそうやな・・」
富長「うおー、分かるかー、天才ちゃう!?」
上田「もうええワ、何よ?・・ん?ウマイな野菜炒め」
富長「直球で言うわな」
「保証人になってくれへん?」
「ちょっと個人宅配やるねんけど、」
「友達保証人っちゅうのがいんねん」
「アタシ、家出して実家に帰られへんからな~」
「こんなん頼める友達そうそうい~へんのよ」
上田「今何処に住んでるんや?」
富長「男のトコよ」
「小説家の卵でな~、そのうち絶対に売れんねんよこれが・・」
「ピアノ弾きながら口説かれてサ~、ポロロンってな」
「カヨさん!小説売れたら一緒になって下さい・・いうのよ~」
「ひぃー」
上田「ちょっとしたお金なら貸せるけど・・」
「保証人はアカンな、人の保証なんか出来るほどのお金は無いワ」
富長「上田君マジメやからな~、やっぱ無理かぁ~、う~」
上田「ゴメンな」
富長「じゃあ今からSEXしよか?」
上田「・・・ヨッシャ、やろか」
富長「く~~、場数踏んどるな~、反応オモロ無いワ」
「アタシな、色々あってな、それこそ場数踏んでんねん」
「経験人数60人やで」
「ふふふ、有り得ひんやろ?」
「その辺の男はみんなオンナの体目当てや」
「生きていくために随分利用させてもらったワ」
「でも上田君は違うんよな~」
「アタシの周りで肉体関係のない男友達って上田君だけなんやで~」
「信じへんと思うけどな・・」
富長「・・・よ~し、ちょっとドライブ付き合って」
上田「何処行くんや?」
富長「お宮かな?ふふふ、今から行かなアカンねん!」
上田「はぁ!?ウソやろ?もう11時過ぎてるぞ!」
富長「か弱い乙女に一人で行かすわけにはいかんやろ」
「フフフフッ」
シビックの助手席に乗せられ、河内長野の山道を走りました。
富長「キャアーーッ!!」
突然踏んだ急ブレーキのせいで、フロントガラスにぶつかりました。
上田「な、何やっ!?」
富長「今、白いウサギが横切ったやろ?」
上田「そんなモンおらんかったワ!危ないワ!」
富長「上田君、アルビノって知ってる?」
上田「何やそれ?知らんがな」
富長「最近アタシのまわりには白い動物ばっかり出てくんねん」
上田「またワケワカランことを・・」
車は外灯の無い山道を少し走り続けました。
すると確かにお宮の階段のような石段のたもとに到着しました。
階段は山の上に長く続いています。
富長「行くで上田君!」
上田「え?オレも行かんといかんのか!?」
無言で石段を上りはじめた富長の後ろを、あわてて追いました。
富長はもう喋ってくれません・・
時刻がちょうど0時を迎える頃、石段の頂上に大きな鳥居が見えました。
富長が鳥居をくぐったその時、空に稲光が光ました。
もう怖さも限界で、富長をおいて階段を駆け下りました。
少しして富長が跳ねるように下りてきました。
富長「いや~良かった良かった、これでヨシッ!家まで送るワ、」
「ゴメンな~、さすがに一人じゃ怖いからな~、助かったワ」
車はマンションに向かいました。
「キイィィィーー!!」
急ブレーキを踏まれました・・
富長「今、白いインコが・・」
上田【もうええっちゅうねん!!!!!】
■42■
最新の画像[もっと見る]
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
- R6(2024)黒尊渓谷の紅葉 19時間前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます