■6■
「婚姻届」
上田「アホか!!何考えてるんやお前!!」
水口「キャーッ!上田君に腕つかまれた~!」
「男の人に体触られたんは初めてや~!」
「キャーッ!責任とってよーっ!」
こりゃぁタチが悪い・・もう無視無視。
前の席の『富長』が声を掛けてきました。
「ひゃーっ、水口ちん大胆ん~、上田君もう結婚しぃ~」
「ところで上田君、コーチって何のコーチ?」
『富長』は三重県出身のブリっこ女子です。
いつも白塗りの顔でハイテンションでした。
「ぷっつん」とか言われていました。
「そのコーチじゃないよカヨちゃん、高知、高知」
その横から割って入ってきたのは
岡山出身の『中崎』でした。
南田洋子のようなオカッパ頭の『中崎』は、
女の子グループの中では一番普通に見えました。
「何か上田君モテモテやなぁ~、微笑ましいワ~」
後ろからおばちゃんが喋りました。
おばちゃんは地元大阪の『玉居さん』でした。
37歳の『玉居さん』は数年前に旦那さんが亡くなり、
小学生の息子さんのために資格をとって働くのだそうです。
「南ちゃんも上田君のこと好きやって言うてたで~」
前列で顔を真っ赤にしている女の子、
『南ちゃん』は中卒の大人しくて可愛らしい女の子でした。
ほとんど喋りません。
ノートの文字は平仮名だらけでした。
朝飯はいつもカール(菓子)だそうです。
「上田君、ええ子そうやもんなぁ~」
同じく後ろから『堀江さん』が言いました。
24歳の『堀江さん』はアクセサリー業からの転身でした。
制服のスカートが短かったり、
甘ったるい声に大人の色気を感じましたが、
アゴのしゃくれたお姉さんでした。
休み時間に中卒の女の子が近づいて来ました。
『山田』という目の細いガタイのいい女の子で、ボヘミアンヘアーは茶色に染まっていました。
山田「上田君、チクリン君といつも帰ってるやろ~」
「付き合いたいって言ってくれへん?」
上田「・・・ええよ、(無理やと思うけど)」
数日後、チクリンと山田は付き合うようになりました。
上田「・・・(チクリンえらい!)」
学校でのお昼は弁当派と食堂派に分かれました。
チクリンと一緒に5階の食堂に向かいました。
食堂は多くの生徒でごったがえしていました。
うどん・親子丼・定食、いい匂いが充満しています。
「美容科」の連中が偉そうに縄張りをつくって威嚇していました。
少数の「理容科」は隅のほうで静かに食べました。
食後にトイレに行きました。
美容科の悪そうな3人組が堂々とタバコを吸っていました。
入り口付近で「色白の金髪君」が足をかけてきました。
少しバランスを崩した僕は、反射的に睨みました。
横にいた「小柄なパンチパーマ君」がイキがって聞いてきました。
パンチ「おまえ理容科やろ、歳何ぼじゃ」
上田「・・・(こいつら中卒やろ)」
無視して小便器に向かい、背中を向けて小便しました。
パンチ「聞こえとるんか!コラ!」
とその時、
遅れてチクリンが入ってきました。
チクリン「おうおう、何かオモロそうやんケ」
チクリンは岸和田暴走族として名があるらしく、3人組は大人しく出て行きました。
教室に帰ってくると、理容科もタバコの臭いがしました。
(タバコとケンカは即退学らしいです)
下校時は、
3階教室から1階下駄箱まで階段を下り、靴に履き替え、細い通路を通って学校を出ます。
通路横には「実習室」という調髪料金600円の散髪施設があります。
その実習室を教室として使っている「組」がありました。
「理容科秋組」
「秋組」は秋入学・秋卒業です。
何らかの事情で学校を中退した人達などが3・4人いました。
その中に「江島」という怪物がいます。
関美歴代ナンバー1のワルだそうです。
先生達みんなが、「目を合わさないように!」と注意を促すほどの危険人物です。
1階通路を通るときだけは左側実習室を見ないように、
みんな顔を右に向けて帰るのでした。
何ちゅう学校や・・・
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