エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■5■「クラスメート」

2018年01月11日 | エルソル大阪物語

■5■

関美学園300人の生徒は50人単位でクラス分けされ、
美容科5クラス(うち2クラスが中卒組)に対し、理容科1クラス(中卒混合)で、
「理容科」は圧倒的少数でした。

「美容科」には男子がちらほらいました。
美容科の男子はどこかオカマっぽいか、バリバリのヤンキーでした。
ヤンキー連中はとても「美」を極めるために入学したとは思えず、
「他に行くところが無かった」という感じでした。

「美容科」の女子はド派手に金髪にしていたり、
物凄いパーマをあてたりしていて、やはりヤンキーが多数でした。
美的センスを疑いたくなるような自己主張が目立ちました。

少数の「理容科」は飾り気も無い「ムッサイ集団」でしたが、
ちゃんと「職」として理容科を選んでいる感じで、美容科に比べると随分まともに感じました。

理容科の教室は狭い室内に長テーブルが幾つも並んでいました。
長テーブルを2・3人で共有します。

僕の隣は中卒の「仲田」という幼い顔をした男でした。

仲田「おいウエダ!え?ウエダじゃなくてウエタ?」
  「どーでもええがな!」
  「上田!お前何処の中学出身や?」

上田「ん?中卒じゃないぞ、高卒、高卒」

仲田「えー?上田、あ、上田君、高卒!?」
  「何かおぼこい感じやったから同い歳かと思うたワ」
  「えー?高校は公立!?」
  「頭ええんやな~」

初対面の年下から「君」付けされたことに違和感がありました。
田舎では年上には敬語が徹底されていて(特に体育会系)、
年下の馴れ馴れしさにはなかなか慣れませんでした。
それに「公立」=「頭がいい」という考えにも驚かされました。

最初の授業は自己紹介で始まりました。
出席番号2番の僕が「高知県出身です」と言うと、
隣の仲田が「えー!?」と言いました。

入学して一週間もすると学校生活にも少し馴染んできました。

朝、羽衣駅に電車が到着しました。
いつも乗り込む位置を3両目の前側と決めていました。
扉が開くと同じ理容科の奴が既に乗っていました。
『チクリン』と呼ばれる精悍な顔をした奴でした。

チクリン「上田君、いつもココから乗ってきてるやろ!?」
    「これから一緒に行こうや、な!」

チクリンは高校中退の年下で、ケンカの強そうなゴツゴツとした体をしていました。

チクリン「あ~眠いワ・・オレな、夜は族やってんねん」
    「上田君そんなん興味ないんケ」
    「ごっつい真面目そうやもんな」

チクリンは岸和田に住んでいて、言葉の最後に「ケ」がつく岸和田弁でした。

「暴走族チクリン」と「難波」に到着しました。
電車は「なんばCITY」というショッピングタウンの3階に到着します。

「南出口」に向かうため、少し歩いて階段を下ります。
2階改札付近が広場になっていて自販機が並んでいます。
そこには南海高野線から到着した関美理容科の連中が先に5・6人たむろしていました。

全員がタバコをふかしながら迎えてくれます。
「おう上田!おはよう!」
「上田君おはよう!」

まだ大阪弁がうまく喋れず、どうしても無口になり、
「おとなしい」とか「クール」とか言われていました。
ここで朝のタバコを共にするのは、喋れずともいいコミュニケーションになりました。

中卒の「花木」「深尾」がトイレからフラフラとした足取りで現れました。

チクリン「お前ら、またシンナー吸っとったんか!?」

(こんな奴らと毎日登校せんといかんのか・・)

一ヶ月もすると、理容科の教室の中で友達グループが複雑に出来上がりました。

「高卒グループ」(実質理容科のリーダー的存在)
「高校中退グループ」(必ず何かの問題を起こす)
「中卒グループ」(おとなしい組とやんちゃ組)
「女の子グループ」(少数のため、よくいじめられる)
「社会人グループ」(何らかの事情で会社を辞めた人達)

僕は居心地のいい高卒グループに紛れ込みました。

高卒鳥取出身の「東野君」は入学以来一度も学校に来ませんでした。
「どうしても満員電車に乗れない」という理由で学校を辞めました。

シンナーの「花木」が学校に来なくなり、そのまま辞めました。

席替えでは自分の周りは女の子だらけになりました。
すぐ隣は『水口』という福井県出身の女の子でした。

「水口」はアフロパーマのようなクセ毛で、
マネキンのような体の細さでした。
色白の顔に真っ赤な口紅が目立ちます。
男子達からは「きもいマネキン」と言われていました。

水口「上田く~ん、あの~、これに名前書いてくれるぅ~~」

両手を使って何かの部分を隠しながら白い紙を差し出してきました。
あまり関わりたくないので、
何も考えずさっさと名前だけ書きました。

水口「ありがとう~、あの~、印鑑とか持ってない~?」

何か危険なニオイを察知し、

上田「ちょっと、その手で隠してあるとこ見せて?」

水口「え!それは・・・あ、いや~~!」

強引に水口の細い両腕を掴み、払いのけました。

するとそこには「婚姻届」の文字が・・

■5■


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