漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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朝井まかて著「花競べ向嶋なずな屋繁盛期」

2015-01-20 | 
朝井まかてさんデビュー作(2008年 朝井さん49才のとき)。
いきなり長編小説を書いて小説現代長編新人賞奨励賞を受賞(発表した時の題名は『実さえ花さえ』)
その後、昨年2014年には「恋歌」で直木賞を受賞した強者。


植物の名前がたくさん登場するってだけですでにツボにはまってるのだけど、江戸時代にも苗をおさめる職業苗物屋というのがあり、品種改良もさかんに行われていて、催し物のために植物を植え込み庭造りをするなんて、今と変わりない行事があったんだね。

「野となれ山となれ」という言葉は、一生懸命やったらあとは自然がなんとかしてくれるという意味だけど、自然豊かな日本だからこその考え方なんだそうだ。
地球の多くが砂漠地帯でそんなところじゃ野にも山にもならないものね。

江戸庶民の心意気とか人情とかが、情けないかなすごく新鮮で清々しい気持ちになる。
夫婦の機微、若者の成長、切ない恋、若いころの過ち、それぞれのエピソードがいちいち胸を締め付ける。

舟遊びの舟から花火を見上げてコンペイトウをかざす雀のシーンはステキすぎる。

吉原炎上事件はTV映画でも見た記憶があるけど、こうして文章で読むと、花びらを散らす吉野桜が一層切ない。花見の季節を迎えたら染井吉野の見方が変わるなあ。
(実をつけることなく大量の花を咲かすことだけに木のエネルギーを使い切るように改良された品種。吉原の花魁「吉野」にちなんでつけられた名前)

小説界、このところのおばさんパワーはすごいデス。

朝井まかて 1959年 大阪府生まれ


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