今年の夏もいろいろな所へ行ったけど、いちばん心に残っているのがこの風景。世界で一番好きな場所は自分の部屋だけど、世界で二番目に好きな場所はここかもね。すいか美味しかった。
雑誌なんかで北欧の街並の写真を見ると、いかにもオシャレなバス停が映っていたりする。さすがデザイン王国だなあと感心してしまう。しかし、ここ観音崎にあるべきバス停の姿としては、これが正解ではないかと思う。周囲の環境に完璧に調和されたこのデザイン。丸い標識とのバランスも絶妙である。もちろん、デザイナーが変わればデザインも変わる。でも、もしかしたら変わらない何かもあるのではないか?多分、良いデザインというのは、物事の本質を捉えている。そこを踏まえてこそ、良いデザインが生まれるような気がする。というわけで、新たな発見がまだまだありそうなので、続きはまた来年。それにしても、今年は日に焼けたあ。
馬堀海岸駅前の住宅街を抜けて、国道16号をひたすら歩いて行くと海水浴場があって、さらに進むと釣り船の乗り場が点在しているところを通る。ここはあじが名物らしい。自分は釣りをやらない。自然の中でじっとしているのは良さそうだけど、生ものを触るのがちょっとね、無理だわ(笑)。こういう風景の中を歩きながら何を考えているかというと、特になにも考えていない。暑いなあとか、田舎だなあとか、そういう感じ。ただ、たまに引っ掛かるものが目に入って写真を撮る。そうすると、いろいろ考える。しばらくして、また何も考えなくなる。その繰り返し。しかしまあ、隣に防衛大の海上訓練場があるあたりが横須賀らしいね。
なんだかんだで、夏はやっぱ海だね。というわけで、今年もまた横須賀へやって来た。さすがに美術館は昨年見尽くしたので、今年はここへ来ることが自体が目的である。どういう目的か?それは日常から離れること。埼玉には海がないから。馬堀海岸から約1時間のウォーキングは、昨年よりずいぶん近く感じた。タモリ倶楽部に出ていた隧道を見たりしながらダラダラと歩く。そして帰り際に、昨年目を付けていた展望露天風呂に立ち寄る。屋上が露天風呂(そういえば、以前そんなの設計したことあるわ)になっていて、東京湾を一望できるという代物。ベタだけど最高に気持ち良し。「浴槽のふちを越えると外から見えてしまいますのでお止めください」下からの見上げで視線は切れるけど、みなさん気をつけて。ここはオシャレな「よこすか海岸通り」だから。
帰りの新幹線まで時間があったので、アウトレットに立ち寄って普通のストライプシャツを購入しました。いろいろと癖のある建築を見た後だっただけに、やはりデザインは普通がいちばんだなあと思います。建築にしろシャツにしろ、自分は普通のものが好きです。たまに普通って何?とか聞かれますが、そういう人には普通を理解できないと思っているので、まじめに回答しません。ひとつ教えてあげると、このMHLのストライプシャツみたいなものだよ(笑)。
中村拓志
DEC 2012
W+1F / 149m2
http://www.sakuranoki.co.jp/gallery/karuizawa/
軽井沢避暑の締めくくりは、小さなギャラリーです。以前「情熱大陸」を見て、これまたいつか行きたいと思っていました。大通りに面しているものの、前庭を挟んで一歩引いた佇まいが良い感じです。周囲の建物と比べて、スケールも設えも控えめなのですが、それが逆に目を引く存在感を醸し出していました。一般開放されていたので中も拝見しましたが、例のレースを張った壁が、想像以上に綺麗でした。ガーリーな世界。とても丁寧にデザインされているなあと思いました。
今度軽井沢へ来る時は、レーモンド巡りをしたいなあと思いつつ、新幹線で愛しの埼玉へ帰還しました。歩き過ぎて右のかかとが痛いわ。
ケンドリック・ケロッグ
1988
RC+2F-1F / 482m2
http://www.stonechurch.jp/
田崎美術館へ向かう途中、星野リゾート辺りをウロウロしていたら、ちょびさんから「石の教会を見るべし」のメールが入ったので、急遽立ち寄ってみました。そしたら、これがものすごく良かったのでした。これまた内部の撮影は禁止されていましたが、礼拝堂にも入ることができました。素晴らしい。閉鎖と開放、暗と明のコントラスト。こういうメリハリが空間を豊かにします。空間というものは、実際にそこに立たないと理解できないものですね。
構造設計は、TIS & PARTNERSだそうで。なるほど。
原広司
MAY 1986
RC+1F / 595m2
http://tasaki-museum.org/
星野リゾートから直線道路を抜けたところに建つこの美術館は、原先生の転機となった作品であり、当時建築学会賞も受賞しています。往年の名建築ということで期待していましたが、その姿を見た時は、正直驚いてしまいました。それはまるで、時代から取り残された廃墟のようでした。
中庭を囲むように配置されたプランニングやその雰囲気は、今でも十分魅力的であり、おなじみ雲型屋根のディテールも健在です。自邸やヤマトインターナショナルといった代表作を彷彿させます。しかしメンテナンス不足は歪めず、建材そのものの耐久性にも限界があるのか、かなり痛々しいという印象を持ちました。中庭の手入れが不十分なのも残念です。
築後28年というのは、決して短くない年月です。それでも「味のある建築」として使い続けられている建築は沢山ありますが、この美術館がそうであるとは、とても言えないでしょう。なぜこのようになってしまうのか?デザインの問題なのか?プログラムの問題なのか?
そして、つい先程見た軽井沢千住博美術館を思い出しました。今をときめく最先端デザインの美術館が、果たして28年後どのような姿になっているのか、ちょっと想像できませんでした。時代の寵児としての輝きを失った時、建築の本質が見えてくる。設計者が亡くなった後も建築は存在し続ける。そんなことを考えました。
西沢立衛
OCT 2011
S+1F / 1,818m2
http://www.senju-museum.jp/ja/
毎年恒例、夏休み美術館巡りの旅。今年はちょうど現場があったので、松本から長野回りで軽井沢へ寄り道することにしました。というわけで、昨年の講演会を聞いてから、是非とも行きたいと思っていた軽井沢千住博美術館です。
入口を入った瞬間、圧倒的な開放感に衝撃を受けました。明るくて広い。今までの美術館とは一線を画す空間です。緩やかなスロープ状の床も、かつて経験したことがない感覚です。これは図面や写真だけでは理解できないでしょう。結構長い時間いたのですが、あっちのベンチへ座り、こっちのベンチへ座り、真ん中を歩いたり、端っこを歩いたり、全然飽きませんでした。
これが現代建築の最先端デザインであろうことは、何となく肌で感じることができました。その一方で、集中豪雨時の中庭の排水は大丈夫だろうか?とか、ステンレス防水の屋根は大丈夫だろうか?とか、そういうくだらないことを考えてしまう自分にがっかりしました。
残念ながら室内は撮影禁止でしたので、美術館のHPをご覧くださいませ。
そしてまた松本です。
台風の影響で工事は遅れ気味。よりによって防水工事ですからね。どうにもなりません。その他に、現地調査を進める中で、建築と設備の取合いが上手く行かないところが出てきました。そして、方々で不平不満も出てきました。一昨年と同じメンバーなので、油断をしていたところがあったかも知れません。ちょっと気を引き締め直す必要があるなあと反省しました。
というわけで、また再来週来ます。