風月庵だより

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前後際断と前後裁断

2011-02-10 11:07:15 | Weblog
2月10日(木)晴【前後際断と前後裁断】

最近友人から頂いた小冊子に「前後裁断」という言葉が出てきました。前と後ろを断ち切る、ということになるでしょうか。しかし、過去と未来が断絶していることを意味するとしたら、『倶舎論』にも出てくるようですが、前際は過去のこと、後際は未来世のことで、これを断じる、ということになりますから「前後際断」のほうが、仏教語としてはよいようです。

道元禅師の『正法眼蔵』「現成公案」巻にも出てきます。
「しるべし、薪は薪の法位に住してさきありのちあり、前後ありといへども前後際断せり」

もう少し「前後際断」の意味を考えますと、単に過去世と未来世が断絶しているのではなく、「過去と未来を対立的にみる見解を截断して、絶対の現在に生きることをいう。」と『禅学大辞典』に書かれています。

なんとも仏教語は難しいですね。私も長い間「ぜんごさいだん」と聞きますと「前後裁断」だと思っていましたし、意味も単に過去と未来を裁断して、たった今に生きることくらいに理解していました。

多くの仏教語や特に禅で使われる言葉は、難しくて、言葉に振り回されてしまい、そこで仏教を学ぶことに突き当たってしまうことにもなると思います。それこそ辞書を手にしながら、一々言葉の意味を確認しながら、学んでいかなくては意味を全く取り間違ってしまうこともあります。

この小冊子の文字はもしかしたら、校正ミスかもしれません。そういうこともありますので、あまり多少の文字の違いに目くじら立てることもないですし、その人の言いたいことを理解することのほうが大事だと思います。

ただ、お坊さんは仏教を学ぶプロですから、やはり「前後際断」という言葉や漢字も知らないと困ることもありますね。私も知らない言葉がたくさんあって本当に大変です。

さて、風邪が流行っているようです。くれぐれも皆さん、お気を付けください。