2月24日(日)晴れ【塩尻和子先生最終講義】
今日は昨日の冷たい北風と違い、日中は割合に暖かい日でした。今日は納骨の方がありましたので、昨日の強い北風とは違い、助かりました。
それにしましても、昨日の風は強く、その上冷たい風でした。そのような天候でしたが、塩尻先生の最終講義には、大教場に一杯の多くの聴衆がお集まりでした。場所は、川越の霞が関にある東京国際大学です。
先生は、イスラーム研究者で、東大で「アブドゥル・ジャバールの倫理思想」で博士(文学)を取得なさっています。筑波大学を定年退職なさってからも筑波大学の副学長を務められ、2011年から、東京国際大学の特命教授、そして国際交流研究所の所長をお務めになっています。
一昨年、先生の講義を受けさせていただくチャンスがあり、今回も拝聴に伺いました。この地球上の争いやテロやイスラームに関する不穏な状況を考えますと、イスラームに関してこの時代に生きる者として、少しでも知りたい、というのが私の思いです。理解もせずにただ批判ばかりしていてはならないと考えます。私が理解したから、それでどうなることでもないでしょうが。
「イスラーム文明と近代科学」という題での講演でした。いかにイスラーム文明が高度なレベルであったかということを具体的な例をあげながら紹介していただきました。化学や数学、天文学さらに医学に関しても、かなり高度なレベルであったということです。例えば、太陽年(一年間)は、365日5時間49分15秒であると15世紀のイスラームの天文学者たちは観測していたそうです。その数値は現在の観測値よりわずか25秒多かっただけであったそうです。「イスラーム支配下では、アッバース朝(749~1258)以降、各地に展開した小王朝の時代であっても、統治者たちは、「科学アカデミー、学校、天文台、図書館」を設立して、学問を奨励した。」と塩尻先生の資料に書かれています。
「イスラーム文明」について、私の理解の中で漠然としていますので、インターネットで調べてみますと「イスラーム文明は、7世紀のアラビア半島でのアラブ人社会の中に起こった、ムハンマドを始祖とするイスラーム教によって生み出された文明、文化である。」という表現がありましたが、これは、塩尻先生の解説とは、多少違っています。ムハンマドは570年ころ~632年6月8日の生卒年がwikipwdiaに書かれています。しかし、このようなイスラム文明のとらえ方は、かなり一面的かもしれませんし、イスラム文明を誤解してしまうことになるのではないかと、塩尻先生の講演を聞かせていただいて私なりに理解したのですがいかがでしょう。
塩尻先生の資料を抜き書きさせていただくと、「融合文明:イスラーム文明は、イスラーム政権の統治下で先行する諸文明、西アジアのメソポタミア、エジプト、ヘレニズムの各文明や、征服地の伝統文化が融合し、発展したために「イスラーム文明」と呼ばれ、またアラビア語を用いて著作・研究が行われたために「アラビア文明」とも呼ばれる。」
私は、イスラーム文明について知識は乏しいですが、西洋の文明より劣っているのではないか、という印象を持っていました。しかし、先生の講演によって、そうではなく、イスラーム文明が、ルネッサンスの展開にも刺激を与えた、ということがわかりました。どちらが優位かということは、争いを起こす元になりますが、お互いに学びあい、刺激しあい、地球の文明が発展し、人類にとってそれこそ有為になることが、望ましいことだと痛感いたします。
「イスラーム文明はアラビア半島から起こって西アジアに広がったものであるが、西アジアにとどまらず、周辺のヨーロッパや中国の文明にも大きな影響を与えた。イベリア半島のトレドやシチリア島を通してキリスト教世界である中世ヨーロッパ文化に影響を与え、さらにルネサンスの展開の刺激となった。」(塩尻先生の資料より)
他にもいろいろとご紹介したいのですが、とても私の力では及びませんので、先生のご著書をwikipediaより紹介させていただきます。
- ヨルダン=野の花の国で 未來社 1993
- イスラームの倫理 アブドゥル・ジャッバール研究 未來社 2001
- イスラームの生活を知る事典 池田美佐子共著 東京堂出版 2004
- リビアを知るための60章 明石書店 2006
- イスラームを学ぼう 実りある宗教間対話のために 秋山書店 2007
- イスラームの人間観・世界観 宗教思想の深淵へ 筑波大学出版会 2008
難民を助ける会や、シャンティ国際ボランティア会や、国境なき医師団などなどから送られてくる難民の人たちの情報、殊に子どもたちの生活について目にしますと、まことに平和を望まないではおられません。
高い文明を持っていた、持っている、イスラーム世界の人々の平穏な日常が取り戻されますようにと願わずにはおられません。私の年齢から考えますと、あの世に帰る日もそれほど遠くはないのですから、この世にいる間に少しでも理解をして、あの世に帰っても世界の平和の為にエールを送りたいのです。
イスラーム文明を理解し、敵対することなく、お互いの文明を認め合って、この狭い地球で暮らしあうことを、心から願ってやみません。 シリアにもアフガニスタンにも、他の紛争の地にも一日も早く平和がもたらされますように祈ります。
(会場となりました東京国際大学。60カ国以上の国からの留学生が学んでいるそうです。)
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