1月31日(水)晴れ【光をくれた少年】
今日はなんとなく体がだるく、そのせいもあるが、なんとなく憂鬱な一日だった。こんな日は勤めに出かけるのも億劫な気がしたが、休むわけにもいかないので気力を振り絞って勤めに出かけた。稀ではあるがこんな日もある。
帰りのバスで一番後ろの座席に腰掛けた。その私の隣に小学3,4年生ぐらいの少年がすっとやって来て腰掛けた。バスはかなり混んでいたが、私たちの前の席だけが一つ空いている。バスの前の方にいる年取った婦人は、それに気付かずにつり革をつかんでいた。
私がすぐに動ければ教えてあげたいのだが、少年に動いて貰わなくてはならない。「坊や、あのおばちゃんに、この席が空いてることを教えてあげて」と横を向いて少年に頼んだ。
少年はすぐにさっとその婦人の傍に行って「あの、後ろの席が空いています」と声をかけた。「有り難う」と婦人は答えた。少年は隣に帰ってきた。「有り難う」と私は言った。少年は静かに頷いた。
この婦人がバスを降りるとき、「どうも有り難う」と、少年に嬉しそうな笑顔をして降りていった。少年は静かに誇らしくそれを受けているように見えた。
「ぼくはどこまで行くの」と尋ねると、「○○……」と答えた。「私は××よ」と言った。私の停留所が近づくと、少年は空いた前の席に移動してくれた。「気を付けて帰ってね。またね」と声をかけてバスを降りた。
窓から少年が見ていた。私は手を振った。少年も手を振った。
それだけの話。帰りのバスでの話です。
今日はなんとなく体がだるく、そのせいもあるが、なんとなく憂鬱な一日だった。こんな日は勤めに出かけるのも億劫な気がしたが、休むわけにもいかないので気力を振り絞って勤めに出かけた。稀ではあるがこんな日もある。
帰りのバスで一番後ろの座席に腰掛けた。その私の隣に小学3,4年生ぐらいの少年がすっとやって来て腰掛けた。バスはかなり混んでいたが、私たちの前の席だけが一つ空いている。バスの前の方にいる年取った婦人は、それに気付かずにつり革をつかんでいた。
私がすぐに動ければ教えてあげたいのだが、少年に動いて貰わなくてはならない。「坊や、あのおばちゃんに、この席が空いてることを教えてあげて」と横を向いて少年に頼んだ。
少年はすぐにさっとその婦人の傍に行って「あの、後ろの席が空いています」と声をかけた。「有り難う」と婦人は答えた。少年は隣に帰ってきた。「有り難う」と私は言った。少年は静かに頷いた。
この婦人がバスを降りるとき、「どうも有り難う」と、少年に嬉しそうな笑顔をして降りていった。少年は静かに誇らしくそれを受けているように見えた。
「ぼくはどこまで行くの」と尋ねると、「○○……」と答えた。「私は××よ」と言った。私の停留所が近づくと、少年は空いた前の席に移動してくれた。「気を付けて帰ってね。またね」と声をかけてバスを降りた。
窓から少年が見ていた。私は手を振った。少年も手を振った。
それだけの話。帰りのバスでの話です。