60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

祈りの幕が下りる時

2018年02月23日 08時49分38秒 | 映画
 
 通勤途中のラジオで「映画祈りの幕が下りる時、絶賛上映中」のCMが耳に残り、「久々に映画でも見に行こうか?」と思い立つ。この阿部寛主演で東野圭吾原作の加賀恭一郎シリーズ、小説も何冊か読んでいる。最終話ということなので、小説を読んでから見に行こうと思い、会社の帰りに書店によって同名の文庫本を買い読み始めた。 
 
昨今のTVサスペンスはマンネリで、粗製濫造の作品が多いように思う。取って付けたようなストーリーをこね回し、最後は後出しジャンケンのような結末。こんな内容で1時間は耐えられても、2時間ドラマに仕立てたものはうんざりする。そんなサスペンス作品の中で東野圭吾の作品は群を抜いて質が高いように思う。ぐいぐい引き込んでいくストーリー展開、緻密さ、意外性、一度読んでしまうと、次々に手を出してしまう中毒性も持っている。東野圭吾作品ではTVの「探偵ガリレオ」(福山雅治主演)が面白く、劇場版の「真夏の方程式」や「容疑者Xの献身」など見たことがある。今回の加賀恭一郎シリーズも、NHKのTVドラマのシリーズで「新参者」、映画で「麒麟の翼」、本としては「赤い指」など何冊かを読んだことがある。
 
 主人公の加賀恭一郎役はずっと阿部寛が演じている。本の中での主人公の描写は、初めから阿部寛を当てはめて書いてたようにピッタリとハマる。だからか本を読んでも加賀=阿部としてイメージされ、読んでいると常に阿部寛の表情が浮かび上がってくるほどである。さてこの作品、別々に存在する4つの殺人事件が、次第に接点を持ち始め、それが絡み合い複雑な事件の様相を呈してくる。4つの事件に係るそれぞれの登場人物、それを追う警察関係者、さらにそれぞれの事件が錯綜し絡み合ってくると、頭の中で整理がつかず、「この人物どこででてきたっけ?」と考え込んでしまうことになる。そんなことで、つっかえつっかえ読むから一気に読めず、今ひとつ面白さが伝わってこなかった。
 
 そして先週、映画を見に行く。複雑な事件の絡み合いを、2時間の中でどう表現していくのか?、そのあたりも「読んでから見る」時の楽しみの一つである。映画は小説で書かれている内容をうまく整理し強弱を付けながらも、作者の意図をキチット表現していたように思う。配役も小説からのイメージとの違和感もなく、大勢の登場人物も視覚で見分けるから、今度は事件の絡み合いにも意識は付いていける。小説を読んでいるから結末は分っている。しかし、そこに役者の演技に映像と音楽が加わることで、小説以上にストーリーに集中し楽しめたように思う。
 
 見終わってから「小説を読んでいなかったら、映画だけでこのストーリー展開に付いていけただろうか?」、「ひょっとしたら、小説+映画で一人前に作品を理解できたのかもしれない」と思ってみる。最近特に自分の中の読解力、理解力、集中力が衰えていることを感じるようになった。それに伴って感受性も薄くなっているのだろう。歳をとると5感(視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚)が徐々に衰えていくと同時に、第6番目の感覚(知的・芸術的な感覚)も衰えてくるようで悲観的になってしまう。老後対策として、すこし小説も読んでみよう。そのれには東野圭吾の作品は良いかもしれないと思う。
 
 
 
 

坂東33ヶ所札所巡り(4)

2018年02月15日 14時14分35秒 | 散歩(8)
 4番札所鎌倉の長谷寺から5番札所小田原の勝福寺を目指して歩き始めて3日目、今日はいよいよ目的地である。平塚駅で乗り換え、二宮駅に着いたのは9時を少し回っていた。駅を出て国道1号線を海岸線に沿って歩く。たぶん、6番札所かからは関東の内陸部に入るから、海を見る機会は無いであろう。そう思って時々砂浜に下りて海を眺めた。下関に育った私にとって、やはり海辺の感触は懐かしい。広がる視界、波の音、海の匂い、時に穏やかだったり、時に荒れていたり、海辺は大自然との接点を感じることが出来る場所である。
 
 1時過ぎに5番札所勝福寺に着いた。その後6番~8番までは厚木市や秦野市当りで、まだどういうコースをたどるか自分の中で決まっていない。帰るには少し早い時間なので、小田原に住む友人に電話をかけてみる。もう我々の歳になると仕事や家族に縛られることもないので、直ぐに応じてくれ小田原駅で会うことになった。遠くて普段なかなか会えない昔の友人知人、そんな人たちとも会うこ機会ができる。これも札所めぐりの副産物かもしれない。
                 
 
        池袋から乗った湘南新宿ラインの列車は平塚止まり          
        一旦平塚駅で降りて構内のカフェドクリエでモーニング
 
    
 
              JR東海道線 二宮駅
           二宮駅に着いたのは9時15分
 
        
 
            駅から国道1号線へ出て西へ
 
        
 
        
 
             左手に海が見えるので降りてみる
 
    
 
                梅沢海岸
 
    
 
              今日は海は少し荒れている

    
 
          サーフィンには良い波なのだろうが、
          このあたりにはサーファーはいない

         
 
                再び1号線へ
 
   
 
      海へつながる道は車1台が通れるような細い道が多い
 
       
 
                1号線
 
       
 
    

       オーシャンビューの一戸建て、こんな家が私の理想
 
    
 
    
 
    
 
            公園でペタンクをする人達
     フランス発祥の球技、目標球に金属製のボールを投げ合って、
          相手より近づけることで得点を競う。
 
            
 
          
 
    
 
              再び海岸線へ出てみる
 
    
 
       次回から海岸を離れ内陸に入るから海も見納め
 
         
 
         
 
              交差点を右折すれば国府津駅
 
    
 
              JR東海道線 国府津駅
 
         
 
         
 
             線路に沿って細い道を歩く
          ここからはグーグルマップの指示で歩く
 
         
 
             東海道線の下をくぐり左折
 
         
 
            今度は線路を左に見て歩く
 
         
 
                県道718号
 
    
 
          やはり小田原、富士山が近くに見える
 
         
 
         このまま歩けば五番札所に着くのが12時頃、
       マナーとしてお昼時はご朱印は控えた方が良いとの
       ことなので、何処かで1時間ほど休んで行くことにする
 
    
 
            鴨宮シティーモールで昼食
 
         
 
         
 
                県道718号
 
         
 
               星乃珈琲でお茶
 
    
 
               本を読みながら休憩
 
         
 
              東海道新幹線の鉄橋
 
          
 
               「じゅんれいかいどう」の石碑
           この札所巡りで初めての巡礼道の名残
 
    
 
         この県道718号はどこまでも真っ直ぐな道
 
         
 
         
 
             右手にお寺の塀が見えてきた
 
    
 
            坂東五番飯泉山 勝福寺 仁王門
 
    
 
                  本堂
 
    
 
                青銅の水鉢
        銘文によれば宝永元年(1704年)作
 
       
 
             樹齢700年の大イチョウ
 
    
 
            本堂に手を合わせている像
 
            
 
               手を合わせているのは二宮金次郎
 
         
 
                      納経所
 
         
 
              勝福寺の境内は広々としている
 
    
 
                勝福寺梅林
 
         
 
     ここで小田原にいる友人へ電話、小田原駅で会うことにした
 
         
 
       グーグルマップで小田原までのルートを検索する。
       歩いて伊豆箱根鉄道大雄山線の五百羅漢駅に行き
           小田原まで出るのが近いようである。
 
    
 
                 酒匂川
 
         
 
         
 
                 飯泉橋
 
   
             
             酒匂川(さかわがわ)
 
        
 
         
 
              大雄山線 五百羅漢駅
 
    
 
              伊豆箱根鉄道大雄山線




仏像

2018年02月09日 08時44分54秒 | 日記
 お正月に妻の実家に行ったとき、床の間に仏像が置いてあった。昨年11月に義母がなくなったから、同居している末の娘が置いたのであろう。この仏像、元々は私が持っていたものである。それが紆余曲折あって今ここにある。話せば長くなるが順序だてて書いてみる。
 
 私が独身時代の27か28歳の頃、会社の研修旅行で台湾に行ったことがある。研修と観光が半分づつで移動は全てバス、行く先々で土産屋に立ち寄る。私はお土産を買うタイプではないので、店内をぶらぶらしながら皆が買い物する様子を眺めていた。そのとき棚の上にポツンとあったこの仏像が目に止った。大量生産されたお土産でもないし、雰囲気が中国風の仏像とも違うように感じる。興味が湧いて店員に棚から下ろしてもらい値段を聞いた。しかし普通のお土産品と違い、かなり高い値段を言われたように思う。値切ってみたが、相手も譲らず物別れになり買わずにその場を去った。その後も店内をウロウロしていたが、やはりあの仏像が気にかかる。再びその場に行って再交渉、結局当時のお金で1万円前後(今の価値で3万円程度か?)で買ったと記憶している。
 
 まだ20代の私に信仰心があったわけでも、仏教や仏像に興味があったわけでもない。では何故買う気になったのだろうか、後でその動機を考えた。思い当たるとすればTVで見た宮本武蔵のドラマに影響されたのだろう。宮本武蔵が京都一乗寺下り松で、吉岡一門との決闘で多くの門弟を切ってしまった。その後逃走しある農家の納屋に隠れ、一心不乱に仏像を彫るシーンがあった。そのシーンが印象深く残っていて、同じような仏像に惹かれたのかもしれない。買って帰ったものの一人身の小さなアパート、置く場所も無く整理ダンスの上に置いておいた。
 
 それから2、3年後、突然私のアパートに母が尋ねてきたことがある。当時母は三男(私の下の弟)を交通事故で亡くし、その後も悲しみが癒えることもなく鬱々とした日々を送っていたと思う。たぶんその気持ちを紛らわすために、東京の私のアパートまで来たのであろう。来てもどこに行くわけでもなく、私が会社に行っている間、部屋を片付けたり洗濯をしたり、夕食を作ってくれて2~3日して帰ったように思う。ただ帰るとき整理ダンスの上にあったこの仏像を胸に抱え、「これ私に頂戴よ!」と有無を言わさず持って帰っていった。
 
 その後の母の手紙にはこの仏像のことがしばしば登場するようになった。この仏様は弟の位牌がある仏壇に飾り、毎日欠かさず手を合わせているとか、法事で来たお坊さんが仏像を見て、「この仏像には魂が入っていない」と、何やらお経を唱えたあと「渇!」と言って魂を入れたとか、この仏像でどれほど私の気持ちが救われたことか、そんな内容の事が書かれていた。その後1~2年してから母は父と一緒に上京し、上野の仏具街で自分の気に入った小さな観音像を買い、2つ並べて仏壇に置いていた。
 
 さらに時は経ち私が結婚して5~6年した頃、まだ60代だった義父が亡くなった。葬儀が終わりしばらくして、たまたま九州の出張の帰りに、私は下関の自分の実家に帰ったことがある。その折り母が布に包んだこの仏像を私の前に置き、「この仏様を貴方の手から、お義母さんに渡して欲しい」と言う。母は自分の体験から夫を失った義母の悲しみを思い、それを癒してくれるものとしてこの仏像を渡す気になったのだろう。言われたとおり私は義母にこの仏像を渡した。義母の心の内は聞いていないが、しばらくは仏壇に飾られていたように思う。小さな仏壇で置き場が無かったのか、そのうち茶箪笥の上に置かれて時は過ぎていった。
 
 今回義母が亡くなった時に、この仏像は茶箪笥の上から床の間に移動していた。たぶん義妹はこの仏像の経緯は知らないであろう。しかし母を失った義妹の喪失感はやはり大きく、この仏像にすがる気持ちも有ったのではないだろうかと思う。お正月に義妹と話したとき、16年という長い間病床の義母の面倒を見ていても、いざ亡くなってしまうと、もう少し頻繁に見舞いに行ってやるのだったとか、あの時こうしとけばという後悔が残ると言う。そして遺骨の前でただただボンヤリしている自分に気づくことがあると言う。
 
 人は自分の心の支えを失ったとき、大きな喪失感に襲われる。また困難な状況になったとき、だれかにすがりたいという気持ちが大きくなるだろう。そのすがりたい気持や、癒しの気持ちを受け止めてくれるのが仏像なのであろう。ドラマの中で宮本武蔵が大勢の人を殺め、その自責の念から仏像を彫った。その思いに影響され私は仏像を買った。それ以降その仏像は人の手を渡り繋いでいく。台湾の名もない彫刻家の作品が日本で私の家族たちの心を癒してくれた。なんとも不思議なつながりのようなものを感じてしまう。
 
 
 

坂東33ヶ所札所巡り(3)

2018年02月02日 10時09分28秒 | 散歩(8)
 茅ヶ崎の駅を降りたのが午前9時、グーグルマップで調べると5番札所勝福寺まで24km、歩行時間4時間57分と出た。これでは今日も到達できない。まあ急ぐ旅でもないし今日も行けるところまで行こうと、駅の南口に出て西に向かう。所沢では15日に降った雪が、まだ道路の両端と建物の北側や芝生などにたっぷり残っているのに、茅ヶ崎には雪はどこにも残っていない。こちらはあまり雪が降らなかったのか、それとも暖かいから溶けたのか、そんなことを思いながら歩きはじめた。
 
 海岸線に沿って走る134号線に出るまで、茅ヶ崎駅から斜めに住宅地の中を歩いていく。今までの人生で茅ヶ崎駅に降りるのも初めて、ましてや茅ヶ崎の住宅地をジグザグに歩くのも初めてである。歩きながら、「これから先もこの道を歩くことは絶対にないだろう」、そう考えはじめると何となく不思議な感じになる。勝福寺を目指すという目標はあっても、前回はたまたま茅ヶ崎駅に来て、今日も茅ヶ崎駅からグーグルマップの指示に従って歩いている。そこにはどのルートを歩くという明確な自分の意思はなく、ただただ流れに乗って歩いているのである。これは流れに乗って生きてきた自分の人生に似ているような気もする。本日のスタート、景色に見るべきものが無いと、意識は内側に向いてしまうのかもしれない。
 
   
 
            JR東海道本線 茅ヶ崎駅
 
        
 
       
       グーグルマップで坂東5番札所 勝福寺を検索すると
          徒歩で4時間57分となっている
 
 
   
 
           茅ヶ崎駅南口を降り西に向かう
 
        
 
        
 
       バス停が住吉神社前となっていたので、寄ってみることにした。
 
   
 
               住吉神社
 
        
 
         グーグルの地図に従って住宅地の中を抜ける        
 
        
 
             この地区は河野外相の地元
 
        
 
        一生のうち2度とは通らないだろうと思いながら進む
 
        
 
              国道134号線に出る
     ここからは以前、日本橋⇒芦ノ湖を歩いた時に通ったことがある。         
 
   
 
                湘南大橋入り口
 
         
 
                  湘南大橋
 
   
 
                  相模川
 
          
 
   
 
              134号線を離れて海岸へ
 
        
 
        
 
        
 
           このあたりの野良猫は毛並みが良い
 
   
 
                  虹ヶ浜
 
        
 
   
 
   
 
              海を見つめるお地蔵さん
 
           
 
   
 
            茅ヶ崎(湘南)砂丘とも呼ぶらしい
 
         
 
               海岸線から134号線へ
 
         
 
                国道134号線
 
         
 
                大磯町へ入る
 
         
 
                 国道1号線
 
         
 
                 これ喫茶店
 
           
        
 
           このあたりから小田原にかけて蒲鉾店が多い
 
          
 
              これを見て海岸に出てみる
 
   
 
            ここが日本の海水浴場発祥の地
 
         
 
   
 
              鴫立庵(しぎたつあん)
       京都の落柿舎、滋賀の無名庵と並び日本三大俳諧道場の一つ
 名称は西行の歌「こころなき身にもあはれは知らなりけり鴫立沢の秋の夕暮れ」による。
 
        
 
   
 
                 鴫立庵
 
        
 
                 国道1号線
 
   
 
              東海道松並木   
 
   
 
      ここから先の沿道は駅から遠いからか空き家や廃墟が目立つ  
     
        
 
                             滄浪閣跡(大磯プリンスホテル別館)
 
             滄浪閣は伊藤博文の建てた洋館で、現在は西武鉄道が所有、
      1954年から大磯プリンスホテルの別館として営業していたが、
             2007年営業不振により閉業
 
        西武鉄道の大磯ロングビーチも昨年閉鎖したとか
 
        
 
            昔は大金持ちの別邸か?
          今は門に鉄条網が張って閉鎖されている
 
        
 
           216㎡1700万円で売りに出ている
 
   
 
               国道1号線
 
   
 
              旧吉田茂邸 内門
        屋根は桧皮葺(ヒノキの立ち木から剥いだ表皮を成型)
 
   
 
               吉田茂邸
      平成21年焼失、大磯町が再建平成29年から一般公開
 
   
 
               吉田邸庭園                      
 
   
 
        
 
        
 
            立ち止まって目的地までの距離を調べる
              あと9.3km1時間56分
 
       
 
         万歩計を見る。グラフで急に伸び始めたのが9時
        それから歩き始めて只今2時、すでに3万歩を越えた。
         あと2時間歩くのは無理と判断し、二宮の駅に向かう。
 
        
 
           グーグルマップを二宮駅に設定すると
           国道を離れ、住宅地の中を指示する。
 
        
 
            駅前の商店街はシャッター通り
 
   
 
           閑散としたJR東海道線 二宮駅