3月20日(金)
日本映画はよく見知っている俳優さんが演じる事が多いので、何だか嘘っぽさが感じられ、あまり好みではないのですが、今回封切りされた「FUKUSHIMA50」は東北大震災で起きた福島原発事故の実録ものなので、観なけりゃならないと思っていました。
どうせありきたりの美談もので終わるだろうと大して期待して無かったんですが、予想外に骨太で見応えのある作品でした。東北の大地震から始まった大惨事を、この映画は正面から取り上げて詳細且つリアルに描き、原発事故の恐ろしさを強く訴えています。
原発所長を演じた渡辺健さんや現場リーダーを演じた佐藤浩市さんの熱演も良かったですし、絶望的な状況で事故現場の作業をする人達の献身的、英雄的な奮闘に胸が打たれました。
それに引きかえ東京電力本社のお偉方や首相を始めとする政府関係者の泥縄且つお粗末な対応ぶりは、無能極まりないものに描かれていました。
実際にはこれらの人々もあの場で必死に頑張ったんだろうし、イラカンと言われた時の総理もトップとしての資質は欠けていたにしても、彼なりの命懸けの行動であったと推察すれば、チョット気の毒な描かれ方であったと思わぬではありません。
この映画で教えられたのは、「もしメルトダウンで炉心が爆発していたら首都圏を含む関東一円は人間の住めぬ不毛の地と化し、日本国家は破滅していただろう。」という恐ろしい現実です。
あの時の2号原子炉が爆発の起きる寸前で何故炉心温度が下がったのか、その理由が今だ判らぬというのも恐ろしい話で、危うい奇跡が日本を破滅から救ってくれたと言えるのです。
この映画を観て「幾ら便利で優れた文明の利器でも、暴走すれば破滅するまで制御できない原子力エネルギー何て、人類が操るべきものじゃない。」と強く思いました。
日本が今まで原子力に費やしてきた膨大な開発資金を、全て自然&クリーンエネルギーの開発に振り替えていたならば、これ程多くの不毛の地が生まれず、もっとより良い国になっていたであろうと悔やまれてなりません。
東北大震災そして原発事故から早や9年、計画停電や放射能汚染何て遠い昔の話になりつつあります。そんな健忘症の日本人に、ぜひこの映画を観てもらいたいものだと思います。