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ディノスシネマズ札幌劇場にて「鑑定士と顔のない依頼人」を見る。
両親を亡くし、若い女性が一人で住んでいる屋敷はお城のようなたたずまいで、家具・調度品・美術品の数々はどれも格調の高さを物語っていた。この女性は広場恐怖症を患い、何年も部屋に閉じこもったままという。天才鑑定士もまた、食事中も手袋を外せない潔癖症であり、職業柄から収集した古今東西の女性の肖像画を秘密の部屋の壁にところせましと飾り、一人で悦にいっている。しかし、生身の女性とは無縁のようで初老の今も独身を通している。
この鑑定士の知り合いである若い技術者のお店はゼンマイや歯車などの部品が並び、興味のある方にとっては魅力的だろう。このお店のシーンも何かの映画で見た記憶がある。この青年はたいていのものは修理でき、また、作り出せる腕をもっているが、謎めいている。もっとも謎めいているのは映画の途中でやっとその姿を見せる、若く美しい鑑定依頼人なのだが、彼女の手の込んだ作為に終焉まで本意が分からないままだった。他の登場人物についても不思議な部分を残したまま、映画を見終えることになった。
事前学習も何もなく、素のままに映画を見ることになり、見終わってからネットで調べてみたところである。公式サイトの解説では、ジュゼッッペ・トルナトーレ監督のミステリー映画で、ゴージャスな骨董品や名画の数々を散りばめて紡ぎあげたものとあった。一流オークショニアの天才鑑定士が、姿を見せない依頼人の若い女性に惑わされ、謎に魅入られていく姿を描き出していると。
天才鑑定士を演じたジェフリー・ラッシュであるが、どこかで見たことがあると思ったのは、「英国王のスピーチ」で国王の吃音を矯正する教師で友人の言語障害の専門医役を担っていたからだと知った。あの時も名わき役を演じていて記憶に残っていたが、この度の映画では主役として、変わり者であるが味のある、ロマンスグレーの役を魅力的に演じていた。