「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

見捨てられる恐怖 (1) (対象恒常性)

2008年04月10日 20時04分58秒 | 「BPDを生きる七つの物語」より
 
 見捨てられることの恐怖は、BPDの中核的な特徴です。

 単に独りになってしまう ということではなく、

 存在そのものを破壊されるほど 根源的な恐れです。

 それは長年の生育歴に 根ざしているものです

 一般に幼児は 日々 親の愛情を得ることによって、

 2才半までに 自分がいる世界に 信頼感を発達させます。

 「対象恒常性」 といって、自分の中に 安全で心地よいイメージを描き、

 ストレスがあっても そのイメージによって 和らげることができます。

 赤ん坊は最初、母親が見えないと 不安で泣きだしますが、

 母親の姿が見えれば 安心します。

 でも育っていくにつれ、目の前に母親がいなくても、

 母親は存在していることを理解し、また戻ってくることを 予測できるのです。

 しかしBPDの人は 無秩序な養育を 経験してきたために、

 イメージが不安定で、一貫性のある感覚を 養うことができません。

 そのため 安全なイメージの代わりに、

 常に 自分を慰めてくれる 他者を必要とします。

 相手が 目に見える所にいなければ、存在しないのと同じなのです。

 孤独を補う方法として BPDの人は、

 人形やぬいぐるみなどの  「移行対象」 〔*注〕 を用います。

〔*注: 赤ん坊が母親から自立するとき 生じる不安を和らげるためのもの。〕

 手紙や写真、想い出の品などもあります。

 しかし 移行対象の有効性に 限りがあると、

 安易な性交渉を 求めたりしてしまうこともあります。

 現代社会は それが得やすい環境があり、BPDの傾向を 強化することになります。

 心子も、「もんち」 という 猿の人形と いつも一緒にいました。

( 「境界に生きた心子」 の中では、

 「ぷっち」 という犬のぬいぐるみに 変えています。)

 ただ、心子は 性的には奥手で堅く、

 不特定多数のセックスを 持つことはありませんでした。

 僕に対しても、当初は 極めて消極的でした。

 BPDの人は ひとつの恋愛関係が長続きせず、

 次々と 新しいパートナーを求めて さまようことがあります。

 心子も 絶えず僕との間に トラブルを起こして 離れていきましたが、

 しかし いつか必ず また戻ってきました。

 最初の出会いのときから 数えれば、それは 7~8年に及んだのでした。

〔参考文献: 「BPDを生きる7つの物語」 (星和書店) 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/53703551.html 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする