BPDの人の怒りは、他の怒りとは異なって 特徴的で、
感情の自然発火とでも言うべき、突発的で 予測できないものです。
誰かに焚きつけられるのではなく、自分で自分に 火を点けてしまうのです。
怒りは常に存在しており、深層に隠れたまま 横たわっているか、
見捨てられる恐れによって 抑えられていたりします。
後者の場合、怒りは内部に溜まって 自分自身に向けられ、
自分を破壊するような行動に 形を変えてしまいます。
うつ状態のBPDの人では、怒りはそれほど激しくない 傾向があります。
うつが怒りを減少させているのか、または、
うつを防ぐために 怒りを表している可能性もあります。
怒りは BPDの症状の中で、最も長期化するものだといいます。
一番変化させにくい 症状のひとつでもあります。
ある研究では、2年間の年月で、自殺行動は 54%減ったのに対し、
激しい怒りの減少は 7%だったそうです。
また怒りは、BPDの他のDSM診断基準と 絡み合っています
気分の不安定さは、怒りを含んでいます。
破壊的な衝動性と 自殺・自傷行為は、しばしば 憎しみや怒りを伴います。
怒りと欲求不満が 共に出現する場合、
見捨てられ感や空虚感を避けるため、BPDの人は 必死の試みをします。
怒りと失望感は、理想化された人が こき下ろされる時の、
不安定な感情に見られます。
怒りは抗しがたいほど激しく、現実の解釈が 歪められてしまうほどです。
怒りの原因は、幼少時の自然な欲求が 満たされなかったために、
そのフラストレーションが 大人になって 攻撃性に変じるのだと言われます。
原因の最たるものは 身体的・性的虐待でしょう。
BPDの人が 自分自身を守るための、無意識の防衛本能が 怒りなのです。
生物学的には感情は、本能的な働きをする 大脳辺縁系に深く関わっています。
これに対して 前頭前皮質は理性的な抑制をしますが、
BPDの人では この部分に異常があることがあります。
攻撃性と抑うつ状態には、SRI (セロトニン再取り込み阻害薬) が功を奏します。
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/54483529.html
〔 「BPDを生きる七つの物語」 (星和書店) より 〕