きのうの記事に、 電話で相手の声が 聞こえにくくなったと書き、
思い出したことがあります。
拙著にも書きましたが、
電話で僕の声が 心子に全く聞こえなくなることがあった というエピソードです。
心子が電話で、 僕の何でもない一言にキレ、
さんざん僕を なじったあとのことです。
--------------------------------------
そして、 一時間後。 またまた電話が鳴った。
この時期、 どうしてか 電話の具合がおかしく、
こちらの声が 心子に聞こえないことがあった。
このときもそうだった。
心子は 痛切に泣きすがった。
「絶対泣かないって思ってたけど、 あたし長生きできないから……!
真剣に愛してたのに、 どうしてあたしのこと 傷つけるの……!?」
「しんこ? 聞こえる? もしもし」
僕がいくら声を出しても 心子には通じない。
心子は泣きじゃくって 言い続けた。
「強くならなきゃ……
あたし、 どれだけ生きられるか 分からないけど、
マーは誰かと 結婚するかもしれないけど、 私はマーのこと 本当に好き!
どうして伝わらないの!? どうしていつも独りなの!?
マーの声 聞こえないけど、 でもいい。 あたしの気持ち言いたい。
あたし、 独りでやる。
神様は 私が愛したり愛されたりすること 許してくれないの。
マーは私のこと 忘れるんだろうね。
マーの一言で 体ボロボロになって、 心もボロボロになって……
きのう発作起きて、 救急車呼ぼうと思って……
腰が痛い、 足も痛い、 今まで マーがもんでくれたのに、
もう誰も もんでくれない。
マーのこと、 ちょっとだけ恨むよ…… ほんのちょっとだけ………。
マーのこと、 大好きだよ……。
さよなら言うのよそう……… おやすみ……」
僕は泣けた。 本当に泣けた。
こんなにも 僕のことを想い、 流血し。
心子はいつでも 全霊を懸けているのだ。
気まぐれなのではない。
怒りも悲しみも、 底知れない力をもって 心子に襲いかかる。
その激震に 心子の心は 引き裂かれるのだ。
--------------------------------------
しかし、 あとになって思うと、 こちらの声が 聞こえないというのは、
もしかしたら 心子のフィクションだったのではないかと。
声が聞こえなくなるのは、 心子との電話のときだけだった という記憶があります。
心子が 上記のシチュエーションを 前もって見通していたとは思いませんが、
何か演技性を 披瀝していたのではないかという気がします。