(前の記事からの続き)
○皇居
美和子と世良が歩いている。
美和子 「世良さん、 このことはなるべく 控え
めに書いてほしい ……」
世良 「移植に不利なことは 表に出さないよう
に、 か?」
美和子 「知らせないほうが うまくいくことと
いうのが、 世の中にはあるわ」
世良 「いい面も悪い面も 正しく伝えるのが、
俺の役目だよ」
美和子 「世良さん、 何が目的の取材か 忘れた
の ? 移植の大切さを 訴えるためだったは
ずよ」
世良 「大切だからこそ、 下手な隠し立てを
しちゃいけないんだ。 信念があるなら 堂々と
していろよ」
美和子 「ジュンがどうなっても いいって言う
の? あなたの弟が !?」
世良 「俺は嘘までついて、 移植推進の提灯持
ちに なるのはごめんだ。 真実を伝えるだけ
だよ !」
美和子 「世良さん …… !」
× × × × ×
堀端の道を 早足気味に歩く世良。
6~7メートル離れて、 美和子が追って
歩く。
○電車の中
吊り革に掴まっている 美和子と世良。
無言。
電車が駅に着く。
美和子たちの背中側の ドアが開く。
美和子 「…… じゃあ …… (ドアのほうへ行
く)」
世良 「ああ、 また ……」
○駅のホーム
美和子が下車してきて、 電車の方に向き
直る。
乗降客の合間から 世良の背中が見える。
美和子、 手を振ろうとするが、 世良は向
こうを向いたまま。
ドアが締まり、 電車がゆっくりと発進す
る。
世良の背中を 見送る美和子。
雑踏が消えても、 ホームにたたずんでい
る。
(続く)