「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

淳一、 意識障害 ……「生死命(いのち)の処方箋」 (38)

2010年10月08日 21時54分52秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○図書館

  机に本を積み上げて 勉強している世良。

  大きな溜め息をつく。

世良 『知れば知るほど 分からなくなるな、

 脳死というやつは……』

  大きく伸びをする。

  しばし考え込む世良。
  

○佐伯家・ 食卓

  美和子、 テーブルに食事を並べている。

美和子 「ジュン、 ごはんよ、 おいで」

  淳一が来る。

  顔色がよくない。

  淳一、 何もない所でつまずく。

  美和子、 それを見て取る。

  何事もなかったように 席に着く淳一。

淳一 「……… (食欲がない)」

美和子 「ジュン、 具合が悪いの……? (心配

 そうに)」

淳一 「え……?  何でもないよ…… (無理に

 笑う)」

美和子 「さっき つまずいたけど……」

淳一 「……まぁ、 青春の蹉跌だよ……」

美和子 「淳一、 まさか ……?」

淳一 「………」

美和子 「ジュン、 こっち向いて」

淳一 「何 ?」

美和子 「(人指し指を 淳一の前に出し)

 フィンガー・ トゥ・ フィンガー」

淳一 「いいよ、 ETごっこは」

美和子 「(真剣に) やって!」

淳一 「(しぶしぶと) ……へい」

  淳一、 美和子の指先に 自分の人指し指を

  合わせようとする。

  が、 指と指が すれ違ってしまう。

淳一 「!! …… (動揺を隠す)」

美和子 「! …… (息を呑む)」

淳一 「(笑ってごまかす) ジョークジョー

 ク」

美和子 「ジュン、 もう一度!」

淳一 「………」

  淳一、 再度試みる。

  …… が、 できない。

淳一 「ち、 ちょっと、 目が疲れてるだけだよ

 ……」

  淳一、 席を立って 部屋へ戻ろうとする。

美和子 「ジュン」

  淳一、 バランスを崩して テーブルクロス

  をつかみ、 食器が音を立てて落ちる。

美和子 「ジュン …… !?」

  淳一の手が 小さな痙攣を起こす。

美和子 「(淳一の手を押さえ) ジュン ……

 !!」

淳一 「…… !! (愕然)」
 
(次の記事に続く)
 
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