「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ドナー遺族の悔悟 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (36)

2010年10月06日 19時50分16秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
(前の記事からの続き)
 
○木下宅

  幸枝の遺影。

  美和子と世良が 幸枝に焼香している。

  後ろに控えている 直哉。

  幸枝の霊前には、 臓器提供者に対する

  厚生省大臣からの感謝状と、 腎臓移植普及

  協会から贈られた 記念品が供えられてい

  る。

  美和子、 緒方から預かった香典を 差し出

  す。

  頭を下げる直哉。

直哉「………」

美和子 「奥様のお陰で、 移植を受けた方々は

 大変お元気になっておられます。 ご好意が

 身にしみます」

直哉「…… (辛さをこらえて) 幸枝は、人様

 のお役に立てたんだからと、 自分に言い聞

 かせています ……。 これで良かったんだ

 …… 今も幸枝は、 誰かの体の中で 生きつづけ

 てるんだと ……」

美和子 「お気持ち、 お察しいたします……」

直哉「…… (顔を伏せ、 ぶるぶると震えてく

 る)」

世良 「どうなさいました ?」

直哉「(押し殺すように) …… 手術するとき

 は、 納得したはずだったのに …… !!」

美和子 「木下さん ……?」

直哉「幸枝は …… 幸枝は、 まだ生きてた

 …… !  それなのに …… !!」

世良 「どうしたんですか …… !?」

直哉「あんたたちなんかに、 私の気持ちが …

 … !  こんなものでごまかそうと …… !!

 (香典を美和子に突き返す)」

美和子 「あ …… !?」

世良 「木下さん、 落ち着いてください !」

直哉「こんなもんが 何になるってんだ …… !!

 (感謝状、 記念品を 床に叩きつける)

 こんなもの …… !!」

世良 「木下さん! (押さえようとする)」

直哉「(遺影にすがりつき) 幸枝、 幸枝~

 ~ !!  あああ~~ …… !! (号泣)」

  愕然とする美和子、 世良。

(次の記事に続く)
 
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