「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「支える環境を」  切実な声 -- 認知症  長寿国の現実 (6)

2012年07月09日 18時53分51秒 | 介護帳
 
 「前頭側頭型認知症」 と診断された 70才代の母親と、 40才代の娘は、

 二人で暮らしていました。

 この認知症の特徴である万引きを、 母親は何度も繰り返します。

 徘徊で目が離せず、 暴力や暴言も激しく、 心中も考えるほどでした。

 疲れ果てた末、 母親を精神科に入院させました。

 ところが、 強い薬の影響で歩けず、 口もきけなくなってしまったのです。

 娘は 母親を思わず抱きしめました。

 母親を精神科に入院させた 61才の女性は、

 ベルトでベッドに縛りつけられた 母の姿に 涙があふれたといいます。

 病室の窓には 鉄格子がはめられていました。

 介護施設に戻るためには、 暴れないように 強い薬を飲ませるしかありませんでした。

 施設に移った母親は 動けなくなり、 昨年亡くなりました。

 「仕事があり、 在宅介護は限界だった。

 でも あれしか方法はなかったのか。

 毎日、 母の位牌の前で 謝っています」

 一方、 認知症の父親を 精神科に入院させたことのある 女性 (48) は、

 こう言います。

 「介護施設から追い出された父を、 病院は誠心誠意みてくれた。

 看護師の腕には、 患者につねられた痕が 一杯あったが、 笑顔で対応してくれた」

 別の女性 (46) は、

 「父が入院する精神科は、 ケアが行き届き、 家にいる時より元気。

 母が入所していた特養より ずっといい」  と強調します。

 共通するのは、 在宅介護サービスの貧しさと、

 激しい認知症の症状を 受け止めきれない介護施設の実態です。
 

 「市民後見人」 を活用すべきという 声もあります。

 研修を積んだ市民を 市町村に登録し、

 家庭裁判所が 後見人として選任する仕組みです。

 地域の事情に詳しく、 身近な人が 必要な知識を身に付け、

 いざという時に 支える体制が必要です。

〔読売新聞より〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする