「息子に殴られる。 助けてください」
認知症の80代の女性が、 ショートステイの職員に訴えました。
体のいたる所に あざがあります。
自治体の担当者が 女性を特養に入居させ、 親子を離しました。
長男は 熱心に介護していましたが、
病状が進む母を 受け止めきれず、 暴力に走ってしまったのかもしれません。
別の80代の女性は、 本人が分からない間に、
1000万円以上あった預金が 3年でほぼゼロになっていました。
息子が 借金の返済に使ったのです。
認知症の被害者は、 高齢者の家庭内虐待の 半数を占めます。
背景には、 家族の介護負担があります。
高齢者の判断力の 低下部分を補い、 できるだけ 自立した生活を送るため、
成年後見制度が導入されました。
けれども 認知症高齢者が200万人を超え、 一人暮らしも増加するなか、
量も質も追いついていません。
ある80代の女性は、 NPOと 「任意後見契約」 を結びました。
将来、 判断力が落ちたとき 後見人になってもらうため、
170万円あまりを預けました。
しかし 約束は果たされず、 6年後 アパートの部屋には、
腐った食べ物が散乱し、 尿臭がこもる中に 女性が座りこんでいたのです。
預金が頻繁に引き出され、 健康状態も悪化していました。
弁護士らが協力して NPOと契約を解除、 社会福祉士が後見することになりました。
成年後見の申し立ては 年3万件を超えましたが、
制度を悪用した 詐欺事件などが相次ぎます。
財産の着服は 2年足らずで550件、 被害総額は約55億円に上ります。
98%は親族が後見人ですが、 法律家の不正も目立ちます。
ケアを家族任せにせず、 第三者の後見人に 繋げる仕組みが必要です。
〔読売新聞より〕