「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

成年後見  量も質も不足 -- 認知症  長寿国の現実 (3)

2012年07月05日 20時56分00秒 | 介護帳
 
 「息子に殴られる。 助けてください」

 認知症の80代の女性が、 ショートステイの職員に訴えました。

 体のいたる所に あざがあります。

 自治体の担当者が 女性を特養に入居させ、 親子を離しました。

 長男は 熱心に介護していましたが、

 病状が進む母を 受け止めきれず、 暴力に走ってしまったのかもしれません。

 別の80代の女性は、 本人が分からない間に、

 1000万円以上あった預金が 3年でほぼゼロになっていました。

 息子が 借金の返済に使ったのです。

 認知症の被害者は、 高齢者の家庭内虐待の 半数を占めます。

 背景には、 家族の介護負担があります。

 高齢者の判断力の 低下部分を補い、 できるだけ 自立した生活を送るため、

 成年後見制度が導入されました。

 けれども 認知症高齢者が200万人を超え、 一人暮らしも増加するなか、

 量も質も追いついていません。

 ある80代の女性は、 NPOと 「任意後見契約」 を結びました。

 将来、 判断力が落ちたとき 後見人になってもらうため、

 170万円あまりを預けました。

 しかし 約束は果たされず、 6年後 アパートの部屋には、

 腐った食べ物が散乱し、 尿臭がこもる中に 女性が座りこんでいたのです。

 預金が頻繁に引き出され、 健康状態も悪化していました。

 弁護士らが協力して NPOと契約を解除、 社会福祉士が後見することになりました。

 成年後見の申し立ては 年3万件を超えましたが、

 制度を悪用した 詐欺事件などが相次ぎます。

 財産の着服は 2年足らずで550件、 被害総額は約55億円に上ります。

 98%は親族が後見人ですが、 法律家の不正も目立ちます。

 ケアを家族任せにせず、 第三者の後見人に 繋げる仕組みが必要です。

〔読売新聞より〕
 
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初期の症状を把握  集中支援 -- 認知症  長寿国の現実 (2)

2012年07月05日 20時55分25秒 | 介護帳
 
 台所の床に 魚の骨が散らばり、 浴室には汚れた衣類が 積まれていました。

 「上の階から水が漏れている」  という苦情で、

 地域包括支援センター 〔*注〕 の職員が、

 90才代の夫婦が暮らす アパートを訪れたときのことです。

〔*注: 市町村が設置する 福祉の総合相談窓口。〕
  
 問題はないと 夫は言いましたが、 妻の肌着は 便を漏らした跡で 汚れています。

 二人とも 認知症の疑いがありますが、

 その自覚がなく、 介護保険の利用も断られました。

 早めの支援があれば、 普通の暮らしが続けられるのに。

 支援が乏しく 在宅で暮らせない 現状を変えるため、

 国は 認知症の新対策を発表しました。

 5年間で、 看護師や作業療法士などによる  「初期集中支援チーム」 を

 全国に配置します。

 地域包括支援センターが拠点となって、

 認知症が疑われる高齢者宅を 訪問して支援を行ないます。

 激しい症状が出た際に 往診などに当たる、

 「身近型認知症疾患医療センター」 も整備します。

 福井県では、 11年前から  「初期集中支援」 に取り組んでいます。

 65才以上の高齢者がいる 家庭を訪問し、

 認知症の可能性や 生活状況などを調べます。

 疑いがあれば受診を促し、

 介護サービスや財産管理などの 福祉サービスの利用も勧めます。

 認知症が進むと出やすい 徘徊などの症状や、

 介護疲れしないための サービスなども説明します。

 しかし こうした取り組みを 全国で行なうには、

 人材確保や育成など 課題もあります。

 2000年に介護保険が始まりましたが、

 認知症に関しては  「空白の10年」 と言われています。

〔読売新聞より〕
 
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