認知行動療法では、 認識できる行動と思考に 焦点が当てられます。
パーソナリティ障害は、 生まれながらの敏感さや 早期の社会的学習,
時には 外傷的なでき事の結果、
認知や思考の障害から 非適応的反応や歪んだ信念が 生じて発生します。
固定化した 非適応的な思考の枠組みがあり、
障害された認知-対人関係が 繰り返されます。
このようなパターンは自動的になり、 当人は自覚しにくくなっています。
行動は 環境からの条件付けによって 強化されると考えられます。
不適応行動も学習されたもので、
患者は学習の中で 問題を取り戻していくことによって 回復していきます。
社会技能訓練, 自己主張訓練, 系統的脱感作療法,
リラクゼーション訓練などがあります。
認知行動療法は 行動と思考の 破壊的パターンを特定して、 修正していきます。
治療者が より指示的な介入をすることで、 治療期間が短くなります。
○ 弁証法的行動療法 (DBT)
DBTは、 自殺の素振りや自殺企図に 効果的です。
命の危険となる 行動を減らし、
治療の妨げになる行動, 生活を損なう行動を 修正します。
BPDは主に、 生物学的な敏感さと、
感情的に受け入れられなかった 早期の環境との 相互関係による、
感情統制の欠陥から 生じると考えられます。
DBTでは、 患者の変化を促す一方で、
患者の現在のあり方をも 受け入れなければなりません。
患者を肯定すると同時に、 不適応的な思考パターンを修正し、
新たな対処方法を教えていくのです。
DBTは 次の8つの想定から 治療が決定されます。
(1) 患者は患者なりに 最善を尽くしている
(2) 患者は 改善したいと望んでいる
(3) 患者は一生懸命努力し、 回復の動機付けを強めなければならない
(4) 患者は 問題を解決しなければならない
(5) 自殺の危険性がある BPDの人の命は、 今の生き方では持ちこたえられない
(6) 患者は新しい行動を 身に付けなければならない
(7) 患者は 治療に失敗することができない
(8) 治療者にも支えが必要である
患者は 週1回の個人精神療法と 週1回の集団技能訓練に、 1年間参加します。
個人精神療法はプログラムの中心で、 治療者と電話で連絡することもできます。
集団技能訓練は、
マインドフルネス (気付き。 瞬間ごとの自分に 気付いていること) ,
効果的な対人関係, 苦難を耐えること, 感情統制の問題への対応が、
目指されます。
患者が 新しい反応のレパートリーを 身に付け、
それを用いていけるように 援助します。
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より