「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

自殺関連行動の伝統的モデル

2013年08月28日 20時52分50秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 メディアが描く 自殺に至るパターンは、 BPDの人に 当てはまるとは限りません。

 うつ病の人は 何らかのストレスや喪失体験のあと、

 絶望や孤立を経験し、 生きるに値しないと感じて、 自殺企図に走ります。

 その試みが失敗すると、 動揺するのが通例です。

 このような 伝統的な自殺行動のモデルは、 BPDの人には当てはまりません。

 BPDの人は多くの場合、 自殺企図と自傷のエピソードを 同様に語ります。

 自殺企図の後、 気分が良くなったと 感じる傾向があるので、

 自傷行為と同じく 感情統制機能があると考えられます。

 あるBPDの女性は、 大切な人に 強い怒りを感じると、

 罪悪感を覚え、 自己嫌悪が生じると言います。

 その状態から逃れるため、 自分の体に痛みを与えたり、 薬を過剰に服用したりし、

 辛い感情からの 解放感が得られました。

 彼女は、 自分の状況に対処するために 自分が何かをしたという 気持ちになり、

 「コントロールが戻った」 感覚を 経験したのです。

 その結果、 恐怖感や孤独感が減って、 死にたい気持ちが消えました。

 自殺企図の悪い影響は 残りませんでした。

 このように、 うつ病の自殺関連行動の伝統的モデルとは 明らかに異なります。

 BPDの人の自殺関連行動には 感情統制機能があるのです。

 BPDの人は 自殺を図った後に 気分が良くなるので、

 自殺企図によって 人の関心を引いたり 人を操作しているという、

 誤った結論を導く 恐れがあります。

 BPDの自殺関連行動には、

 そのリスクと管理方法を 判断するために、 別のモデルが必要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 
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