「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

自傷行為という体験

2013年08月26日 22時19分45秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 対人関係での喪失体験が、 それが現実でも想像でも、 自傷の引き金となります。

 その体験の解釈 (認知) において 自責や自己非難が生じ、

 統制が失われて、 自傷行為が起きます。

 激しい辛さが、 解離によって 感覚麻痺に陥りますが、

 辛さも感覚麻痺も 耐えがたいプレッシャーなので、

 自傷行為によって 解放感を感じたり、 感情のバランスを取り戻します。

 痛みを感じると 自傷行為をやめる人もいます。

 血を目にすると 悪い感情から解き放たれたと感じて、 自傷行為が止まる人もいます。

 自傷が 不快感を緩和すると言われますが、

 これは 自己懲罰による罪悪感の解放など 心理的要素と関係があります。

 ひとつの痛みが 別の痛みによって解消するという、 生理的メカニズムがあります。

 自傷行為によって エンドルフィンが生じ、 痛みを緩和するとも考えられています。

○ 認知と認知的要因

 自傷行為を行なう人は、 自傷行為に良い点があると 信じ込んでいますが、

 これは 「歪んだ認知」 です。

 彼らは、 感情的苦痛より 身体的苦痛なら耐えられると 思い込んでいます。

 ネガティブな感情を取り除くのは 自傷しかないと信じ、

 それで自分をコントロールできると 信じています。

 怒りのために 自傷行為する人にとっては、

 怒りを人に向けるのは 悪いことで、 自分を傷つけるほうが 良いことなのです。

 自分を罰したい人は、 自分が苦しんでしかるべきと 信じています。

○ 解離, 自傷行為, 痛みの経験

 自傷行為の最中に 痛みを感じない人は、

 うつ, 不安, 衝動性, 心的外傷, 性的虐待など、

 障害が重いと考えられます。

 無痛感覚は、 神経感覚的要因と心理的要因の 両方に関係があるともされます。

○ 生物学的要因と神経認知的要因

 自殺企図者は セロトニン機能が低下し、

 衝動性と攻撃性が高まることが 知られています。

 また、 ストレスに対する 神経内分泌系の過剰反応によって 自傷行為が起こり、

 コルチゾンの分泌が高まっています。

 自傷行為をする人の脳脊髄液の中では、 脳内麻薬物質の濃度が変化し、

 痛みの調整に 重大な障害が起きているとうかがえます。

 以上のことから、 全ての自傷行為に 生物学的基盤があると言えるでしょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 
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