「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

自傷行為の 理由とプラスの作用

2013年08月23日 22時41分17秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 一般に、 自傷行為は

 人の関心を集めるため, 人を操作するためにすると 思われています。

 しかし 自傷行為は隠されることがしばしばで、

 患者は自傷行為を 深く恥じていることがよくあります。

 自傷行為を図る前には、 患者はほとんど孤立しています。

 自傷行為の意図と その影響は区別すべきです。

 患者は感情に圧倒され、 人に与える影響を 気付いていないことも多いのです。

 けれども結果的に 人の注目が集まると、 元々 感情の統制が目的だったのに、

 得られる関心が望ましくなり、 自傷行為がやめられなくなることは あり得ます。

 以下は、 患者から報告される 自傷行為のプラスの作用です。

・ 感情統制

  極度の感情の緊張がほぐれて 気分が良くなるように感じられます。

・ 注意をそらすこと

  精神的苦痛を紛らわすために 行なわれることがあります。

  患者は 自己陶酔に類似した体験として 自傷行為に没頭します。

・ 自己懲罰

  激しい羞恥心, 後悔, 自分が疎外されているという、

  耐えがたい状態からの救いになるのです。

・ 精神的苦しみの具体的な確認

  目に見える証拠もないのに、 自分が恐ろしく感じているのは 信じがたいことです。

  傷痕やあざは 自分の精神状態を 具体的に証明するものになります。

・ 感情を制御すること

  患者は自傷をすると、 でき事や感情を 制御できると感じます。

  他者の行動や でき事から生じる 苦痛を制御しようとします。

・ 感覚麻痺と離人感の緩和

  この働きを 「現実回避」 と呼びます。

  BPDの人は、 感情的に過剰な負担を抱くと、

  感覚麻痺や離人感の状態に 陥るかもしれません。

  自傷行為はそれを緩和させてくれる 数少ない行為です。

・ 怒りのはけ口

  自分を傷つけることで、 怒りの感情を行動に移すのは、

  他人に向けて怒るより 安全で、 罪悪感が生じにくいと感じられます。


 自傷行為のプラスの面として 次のものがあります。

 感情的な辛さを 具体的な辛さに代える (59%), 自分を罰する (49%),

 不安と絶望感を和らげる (39%), 感情を制御できると感じる (22%),

 怒りを表出する (22%), 感覚麻痺や離人感の緩和 (20%),

 人に助けを求める (17%), 嫌な記憶を消し去る (15%)

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 
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自傷行為の背景と定義

2013年08月23日 22時40分18秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
 自傷行為には2種類あります。

 ひとつは 実際に死のうとする 意図をもって行なわれるもの、

 もうひとつは 自分にダメージを与えても 死ぬ意図がないものです。

・ 自殺企図

 故意の自己破壊的行動で、

 少なくとも部分的に 死を意図してなされるものと 定義されます。

 しかし 個人の主観的意図を知るのは 難しいことです。

 事後の報告は、 再解釈や 行動の結果の影響を受けている 可能性があり、

 自傷した時点の精神状態を 表現していない公算があります。

 自傷行為の理由は様々で、 しかも自殺の意図が曖昧なので

 不確かなことが多くなります。

 また、 患者の意図の捉え方が 歪んでいることもあります。

・ 自傷行為

 自殺の意思のない 意図的な自己破壊行動と定義されます。

 BPDに極めて特徴的なものです。

 不安定になった感情を 改善しようと企てられたもので、

 BPDの人は それをはっきりと自覚しています。

・ 自殺関連行動

 自殺の意図のあるなしに拘らず、

 結果的に死に至らなかった いかなる自傷行為も含むものと 定義されます。

 自傷行為および あらゆる自殺企図が この範疇に入ります。

○ 問題の頻度と重要性

 BPDの人の75%が 自傷行為を行ない、

 50%近い人が 少なくとも1回の 深刻な自殺企図をしていると 推定されます。

 さらに BPDの入院患者の80%が 自傷行為を示します。

 自殺企図と自傷行為は、 当人の中では別物であり、

 意図と方法が 明らかに異なっています。

 自傷行為と自殺企図の 両方を行なうBPDの人は、

 自分の致命率を 低く捉える傾向があります。

 自殺の意図が曖昧でも、 致命率が低いわけではありません。

 薬物の過剰服用は 致命率が低いと思われがちですが、

 死ぬ意図が 乏しいとは限りません。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 
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