蓮華王院三十三間堂では、三が並ぶ3月3日に毎年「春桃会」を開催して、お堂の無料公開をおこなっています。
軒先には桃の花がずらりと飾られていて、原色の明るい旗が下がり、赤白緑のイタリア国旗のような幕に春桃会(しゅんとうえ)と書かれていました。
事情通の人々が続々と詰めかけてきました。
千体の千手観音立像が古びた黄金色に渋く10段に並び、中央には丈六の中尊、千手観音坐像がある素晴らしいお堂が拝観できました。
特に、風神雷神と二十八部衆像の造形美は素晴らしくて、これぞ国宝だと見るたびに感じます。何度も火災に遭っているのですが、よくぞ今日まで維持されたことだと思いました。
お坊さんのゆるキャラも出張してきています。
この日の目的は、瀬戸内寂聴さんの青空説法を拝聴することです。
ぴったり定刻に登場されました。
広い会場ですから、ワイヤレスマイクは使っていましたが、実にはりのあるしかっりした声で話されました。
原稿も持たず、次々と話題が進みました。現在93歳でもうすぐ94になるそうです。昨年、胆嚢を取る手術をしたがその際に全身麻酔を受けた。それが絶妙に気持ちのいい体験であったということを掴みにして、聴衆の気持ちを惹きつける技はさすがに小説家にして、経験を積んだ僧侶だと感心しました。
約50分くらいの時間にとても沢山の話題がありました。
・88歳までは頑強だった。90になるとさすがに身体に痛いところが増えた。家族、友人のほとんど全部が亡くなってしまった。
・若いとき、京都で出版社の助手をしていて文学者の家に原稿取りに出入りしていた。それをきっかけに少女小説を書き始めた。
・ドナルド・キーンさんが遊びに来て、共通の知人、三島由紀夫の話をしたのが楽しいことだった。三島にファンレターを送ったところ、異例だったが返事をもらった。自分の最初の出版作品を贈ったところコテンパに酷評された。川端康成がノーベル賞を取ったことが悔しくて、それが極右活動(楯の会)の遠因だろう。惜しいことをした。
・その頃の女流作家はみなさんブスばかりだったが、同年代の佐藤愛子さん(92歳)*だけは美人だ(父が有名な小説家、母が女優)。最近の若い女性作家はみんな美人ばかり。
・最近の安倍首相はおかしい、戦争は絶対してはいけない、・・などなど。
最後に、聴衆から質問を受付ました。
・54歳の女性から、夫と死に別れ子どももいない、これからどう生きていけばよいのか? ・・あの世はある。身体は滅亡するが、魂はあの世で生きている。あの世にいる夫の魂は今日もあなたの肩にのかって居る。悲しみにふけることなくお迎えがくるまでしっかり生きなさい。・・などなど、4人位からの質問に答えて、秘書さんに急かされて質問を打ち切りました。「来年もお会いしましょう」と言って退場されました。
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*佐藤愛子:引用 ”遠藤周作はエッセイの中で『灘中学時代、通学電車で乗り合わせた彼女は我々のマドンナ的な存在だった』と書き記している。”