昨日記事の続きです。
わかりやすい例として、
電波は
国有の土地のような存在です。つまり国民の共有財産です。
土地の完全国有化は、理想共産主義の失敗で実現されませんでしたが、電波は眼に見えないし、存在を一般市民は気がつかないために幸い「私有化」はされずにきました。ある種の電波は遠距離まで届くため、他人や隣国に雑音妨害を与えます。そのため古くから国際条約と国際機関によって国同士で調整を図ってきました。国内的には総務省が管理しています。(あくまで管理人であって、オーナーは国民)
さて、時代が変わって電波需要が急拡大しています。
今から70年前の技術で固定されてきたアナログテレビ電波には、別の場所(周波数)に引っ越してもらって、使いがってのよい「駅前の1等地」には高層ビルを建てる、ショッピングモールを作る、災害対策の準備基地にするなど、大きく発展させることにしました。
ちなみにアナログテレビ電波の空き地を「ホワイト・スペース」(更地)と呼んでいます。
これが「テレビの地デジ化」なんです。
・電波は、国民の共有財産
・有効利用して、その利便性と利益は国民に還元
この基本的目的をしっかり説明していなかったと感じます。
やれ、外国の先進国では既に実施していて早くやらないと日本は出遅れるとか、デジタルになると画面がきれいになる、情報の双方向性が増す(それらは事実ですが)とか、目先の利益ばかり強調したのです。
すると、反論として、今のままのアナログテレビで不自由していない、つまらない番組が多くてニュース程度しか見ないので古い方式で困らないとかいう意見が出てきます。
もし、東京駅正面の丸の内や大阪駅前の梅田が、全部、国有地でその大部分が草ぼうぼうで、まばらに平屋建て御殿(NHK、民放)だけがぽつんと建っていたら、「もったいない」「国民の資産を有効に使え」「税金の足しにしろ」となるでしょう。
「電波は国民の共有財産」、国有土地と同じと広く認識されると色々な既得権益が明るみにさらされて困る人々がいるからかもしれません。(共有のはずが時代の役割が変わっても占有し続けて大きな利益を得ているかもなど)
ホワイトスペースが活用されると、将来は、モバイル・コンピューティング、ワイヤレス・クラウド、防災情報、道路交通情報化など大きく発展できると楽しみにしています。
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脚注:
電波の発見は、19世紀後半であると昨日記事に書きました。もう少しその時代のエピソードを述べることにします。
電気と磁気の相互作用に関する原理を考察し、数学的に表現したのは1864年のマクスウェル(英)でした。しかしその論文は難解いな数式で埋まり長大なページ数があったため、論文が本質的に理解され、実用的な意義が再認識されるのにはさらに20数年かかったのです。
1888年になって、ヘルツ(独)がマクスウェルの論文を再検討して電波の存在を確信し、証明のため実験をしました。現代と違って、電源や特殊電気回路も全て独自に作成する必要があったのです。
ほぼ同時期の1884年にはヘヴィサイド(英)がマクスウェルの方程式をわずか4つの微分方程式に書き改めている。現代の無線通信技術者・研究者にとってこの方程式はバイブルとなっています。
帰納法的な発見や発明が多かった当時において、理論が先にあってその物理現象が発見された例として稀有であったと思います。
さらに、その数年後、電波を真に実用化したのはマルコーニ(伊)という起業家でした。彼は数mの距離の無線実験から始め、英仏海峡の横断、さらには大西洋横断の英国とアメリカ・ボストン郊外までの無線通信に成功しました。映画タイタニック号でも、遭難時の無線通信士はマルコーニ社員でした。