「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成31年(2019)4月16日(火曜日)弐
通巻第6043号
ものつくり大国=ニッポンは何処へ行ってしまったのか
シャープは買収されSONYに面影なく、半導体は韓国、台湾に抜かれた
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このところ日本の自動車メーカーのリコール騒ぎが相次いでいる。検査不適正が問われ、信用が失墜している。ホンダは英国から撤退し、逆に中国の製造設備を拡充している。トヨタはHV特許の無料開放に踏み切る。
いったいどうなっているのか? 日本人のものつくり精神は死んだのか?
嘗てSONYのテレビとウォークマンは世界市場を席巻し、ヴィデオも日本勢の天下だった時代があった。
それが、いまは面影もないほどに衰退した。何が原因だったのか?
日本のスマホは世界市場で失墜した。SONYのスマホは日欧市場に集約するが、いまではシェアはわずかに1%。京セラは日本でのみ強い。富士通は東芝と統合し、2018年には国内ファンドに売却した。パナソニックはインドのみ。三洋とNECも撤退した。国内で幅を利かせているのは外国製である。
5G時代を迎える通信の基地局はエリクソン、ファーウェイ、ノキア、ZTE、そしてサムソン。わずかなシェアを日本の基地局が受け持つに過ぎず、ただし米中貿易戦争によって首位のファーウェイはエリクソンに巻き返された。
とはいえ依然として世界の基地局市場で、26%のシェア、ZTEも12%のシャアを誇り、とりわけ発展途上国では廉価のため、マーケットを確保できている。
米国のファーウェイ排斥も、日本と英国が名乗りを上げたが、追随したのは豪、加、NZに過ぎない。EU諸国はまだファーウェイの排斥には至らず、EU首相国+中国(16プラス)にはギリシアも駆けつけて、「17プラス1」と陣容を強化した。
通信機器についで監視カメラはどうかと言えば、嘗て防犯カメラは回転軸がドイツ製、レンズは圧倒的に日本製だった。しかしその後は防犯設備も、プライバシー擁護という制約があって、日本とドイツがカメラ精度を制限している所為か、いまでは中国の天下となった。
監視カメラとドローンは中国が世界一。
とりわけ監視カメラによる顔面識別技術が強化され、中国のハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)、ダーファテクノロジー(浙江大華技術)、また警察軍使用の特殊無線ではハイテラ(海能達通信)が強みを見せてきた。
▲日の丸テクノロジーはいったいどうして衰退したのか?
日本の官主導の巻き返し作戦は、ほぼ失敗、もしくは頓挫中である。
半導体は韓国、台湾に市場も技術も奪われ、失地回復をはかったルネサス・エレクトロニクスは、なんと減産と人員削減である。
ルネサスは二万人従業員のうち、千名を削減する対策を発表したことは、もはや台湾、韓国にも追いつけないという悲惨な現実に直面したことではないのか。
国内需要ばかりか、中国景気の失墜で半導体市場が冷え込んだとルネサス側は、メディアの記者会見で説明しているが、一方で米国インターシル社に続き、この三月にはインタグレーテッド・デバイス・テクノロジーを67億ドルで買収するなど、内外バランスにちぐはぐな対応ぶりが目立つ、
東芝メモリーは外国勢の傘下に転落した。
鳴り物入りのJDI(日の丸液晶)は、半導体同様に、台湾と中国企業の出資を受けることになり、株式多数派を失う。JDI(ジャパンディスプレィ)は日立、東芝,SONYの液晶事業が2012年に統合した半官半民の寄り合い所帯だった。
つまり行政指導が失敗を演じていることであり、しかも誰も責任を取らず、嘗ての通産省という、アメリカの脅威だった行政機関は機能不全に陥ったかのようだ。
日本のものづくり世界一の面影はもうない。昭和は遠くなりにけり。
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