私も会員として、参加させて頂いている
イミグレーションロー実務研究会の第11回目
セミナーが、今週18日の月曜日夜に行われた。
http://www.immigration-law.jp/seminar/2013-3-18/
テーマは、「アメリカ入国査証の解説と実務」
~アメリカへ進出する日本企業のための査証~
(全5回のうち第4回)
◆講 師: 船曳 信行 先生
船曳ビザ事務所 代表
元・駐日アメリカ大使館査証課
日本の入管法、在留資格システムのお手本にされた
アメリカの在留・査証制度を知ることは、日本の入管法による
今後の在留制度の方向性を知る上で、知っておくべき内容だ。
そこで、第3回までのセミナーで教えて頂いた知識の復習です。
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一般的には、本邦入管法の在留資格認定証明書に相当する
ペティションを米国移民局に事前に取得(米国移民弁護士
を通じての申請無しでは、事実上なかなか許可されないとことです。)
するのが基本だが、そのペティション無しに、
特例的に在外公館である在日アメリカ大使館に直接申請できる
就労査証のE査証という、日本には無い制度がある。
しかし、E査証申請については、以下の要件がある;
① 申請人が米国との条約締結国である日本国籍保有者であること。
つまり、在日韓国籍社員や中国、台湾などの国籍保有者は対象外となる。
但し、配偶者は外国籍者であっても構わない。
② 会社の国籍が日本でなければならない。つまり、株主の50%以上が、
外国人の場合、E査証申請の対象にはならない。つまり、
在日ヨーロッパ系の外資系企業も対象外となる。
なお、株主の中で、日本国籍者であっても米国永住権保有者は、
米国人とみなされるので、中小企業経営者の子弟で米国留学経営者の方や
ゴルフ会員になるためにうっかり米国永住権を取得してしまった
中小企業の株主兼幹部社員がいるような会社も、
E査証の対象外となるので注意が必要だ。
③ 設立するアメリカ子会社に相当額の投資が行われること。
④ 米国子会社へとの取引製品の50%以上が日本製品か
米国製品であること。
⑤ 査証申請者は、役員、管理職、或いは、事業運営に必須の専門家又は
技能者であること。(経験7年以上、年収7万ドル以上。MBA保有者や
ビジネス系学部卒業者や資格(日商簿記)保有者であれば更に可。)
これらの基本条件を下にして、8つの模擬事例についてご説明頂いた。
例えば、H-3査証(研修生)を取得して派遣されている文学部卒の
26歳の女性スタッフが、今後新分野での開拓を期待されて米国移民局
(日本の入管に相当)へ米国移民弁護士を通じて変更申請をして、
同移民局からE-1への在留資格変更許可を得たが、突然日本の本社
での打ち合わせの為に帰国し、再度米国に赴任しようとしたが、
在日アメリカ大使館でE-1査証が必要であると気付いたという事例
などでは、日本では在留資格変更が入管から許可された場合、
在外公館での査証申請は不要であるのに対して、
米国の制度では、改めて在日アメリカ大使館で査証を
取得しなければならないので特に注意が必要である。
つまり、米国移民局と米国国務省と、それぞれに均等に権限を与えている
今の米国の制度には特に注意が必要だ。
なお、米国移民法も、査証は飽くまでも米国入国を申請できる
資格証に過ぎず、最終的な在留許可は、米国入国審査官が、
入国時の口頭審査の結果として交付するEntry Departure Recordが
必要となる。つまり、このEntry Departure Recordの一部である
Form I-94無くして事実上の上陸許可証とはならないのである。
また、日本の上陸許可証と在留カードに相当するこのForm I-94には、
在留資格であるE-1,E-2とかL-1A,H-1Bといった
非移民系の在留資格が書かれているのである。
また、このI-94は日本の在留カードと機能と同じような機能を持っており、
常時携帯の義務もあるようだ。
このような高度な事例8つについて、一つ一つ丁寧にご説明頂いた。
一方、これに先立ち、通常は査証免除(90日)で必要のない
短期ビジネス査証:B-1査証の申請が必要なケースについても、
前回に引き続いてご説明頂いた。
今回、私が気付いたことは、日本の外務省が査証の必要性
についてどこまで法務省に対抗して要求してくるのか?
そして、1年以上の米国不在者の永住者に対しては厳しい米国の制度を、
日本政府はどこまで参考にするのであろうか?
そして、特に日本での永住権取得後、
日本に殆ど居住していない永住者既得の外国人に対して、
日本政府は今後どのような施策を展開して行くのだろうか?
という疑問点を強く感じることができた
大変有意義なセミナーであった。