ハリウッドの名優で、24時間耐久レース、ル・マンのドライバーでもあったダンディーなオジサン、ポール・ニューマン氏がお亡くなりなりました。享年83歳だったようです。特に、大好きな俳優さんではないのですが、彼の出演した「明日に向かって撃て!」と「スティング」は、今でも私の大好きな映画です。
「明日に向かって撃て!」は、実際に存在した列車強盗のブッチ・キャシディーとサンダンス・キッドの物語をデフォルメして描いた映画なのですが、それをどこか面白・可笑しく、メルヘンチックに、そして、とても綺麗な映像の映画に仕立ててしまった秀作です。そして、ハリウッドにありがちな、ハッピーエンドでは終わらせなかった映画でもあったのでした。つまり、強盗は強盗として、ちゃんと滅び去るようなエンディングにした映画なのです。
ところで、ポール・ニューマン演ずるブッチ・キャシディーが、キャサリン・ロス演ずる恋人を自転車の前に座らせて、緑溢れる野原を走り回るシーンは、当時流行したB.J.トーマスの「雨に濡れても」の曲をBGMにして、まるで夢の中に居る様なシーンでした。そのシーンは、36年近く経った今でも忘れる事ができないシーンとして、私の脳裏に鮮やかに残っています。
また、スペイン語が分かるようになってから、この映画を中南米のM国で再度見た時、ポール・ニューマン扮するブッチ・キャシディーが逃亡先のボリビアで、たどたどしいスペイン語で「手を挙げろ!持っている金をすべて出しなさい!Manos arriba! Dame todos dineros que tienes !」と、どこか間が抜けた憎めない銀行強盗の台詞になっていたのを、現地の人々と共に笑い転げて見た事も思い出しました。
一方、「スティング」は、法が裁けない悪党組織を、頭脳を使った大がかりな芝居を仕立てて、見事に騙して復讐してしまうという痛快なストーリーの映画です。日本のVシネマ俳優、哀川翔のヒットシリーズであった「借王(シャッキング)」では、この映画「スティング」と全く同じ手法が模倣・継承されました。
ポール・ニューマンの出演した映画は、若い頃の「ハスラー」とか、70年代後半の「タワーリング・インフィエルノ」、80年代の評決なども見ましたが、この1970年前後に出演した頃が、彼が最も魅力的な俳優であった時期ではなかったかと、私は思っています。そして、今日、陽はいつかは必ず沈んでしまうのだなぁ!と、改めて時の流れの速さと、一つの時代の終焉を感じさせた訃報でもありました。
名優で、お洒落な俳優でもあったポール・ニューマン氏のご冥福を心よりお祈りします。