東芝がHDDVD事業から全面撤退した。つい最近まで、次世代録画機はSONY・パナソニック陣営のブルーレイか東芝陣営のHDDVDかと言われていただけに、あまりにもあっけない幕引きであった。
ソフトメーカーであるハリウッドの一部の映画会社や小売業大手などが、最近相次ぐブルーレイ支持の表明した流れに、東芝は素早く対応した経営判断だと、巷間高い評価を受けている模様だ。今までの日本型経営手法では考えられない極めて異例早さでの事業撤退の決定をしたといえると思う。ただし、米国型経営手法ではよく見られる事業撤退のやり方に極めて近い。
「少ない経営資源を他の効率的な部門へ振り替える」
「消費者に無用な混乱を拡大させない」
いずれの説明に対して、特に異論は聞かれない。「儲からない商売となりそうだから、さっさとやめます!」「これ以上、HDDVDを売って、かつてのベータ方式のように購入者からの非難を浴びたくない!」という事なのだろう。
このような米国型経営手法で、あっさりと事業を撤退する日本企業は極めて珍しい。「断腸の思いで、この度苦渋の決断を致しました。」なんて、撤退発表の記者会見をする企業が今まで多かっただけに驚きである。
勿論、東芝は巨大企業であるから、このHDDVD事業撤退による巨大工場閉鎖による大幅な人員削減といった雇用問題などの二次的な影響も少ない。だから、東芝経営陣の素早い決断は高く評価されているだと思う。
しかし、私個人の感覚でいえば、”本当にこの米国型経営手法の撤退という決断で正しかったのだろうか?”と思ってしまうのである。それは、買収、撤退を繰り返しながら、とうとう世界一の座を譲り渡した米国GM社と、いまだに日本型経営手法にこだわり続けて、とうとう世界一の座を得てしまったトヨタ自動車の事が頭に浮かんでくるからである。
この東芝の決断が、今後の日本企業の経営手法にどのような影響を及ぼして行くのか。そして、これが他の日本企業の将来をどのように左右して行くのか?是非とも後世の歴史で検証して貰いたいものである。