”運も実力のうち”と、良くいわれますが、WBC決勝戦の日本代表チームで、それを3回も見ることが出来ました。
先ずは、リリーフとして登場したダルビッシュ有が連続二四死球を出した場面でした。制球に苦しむダルビッシュに、更に四死球を出されたら満塁となり、日本チームが完敗する危険が高かった筈です。しかしながら、一方では投手を交代させても、その投手が必ずしもバッターを押さえ込むという確証がある訳でもなかったのです。監督によってはピッチャー交代という選択肢を採る事も采配の一つだった筈です。
仮に、ダルビッシュが二四死球を出した後、崩れて大量失点した場合を考えると、原監督もダルビッシュも共に、優勝できなかった最大の原因として言われることは間違いないと思われます。
ところが、結果はご存じのとおり、同点にはされましたが、相手を勝たせる失点はならなかったのです。この起用方法について、原監督は褒められてこそすれ、非難されることはあまり無いと思います。
そして、二四死球の後、踏ん張って押さえたダルビッシュも評価はされても、非難されることは無いのです。勿論、打たれていれば、非難される事は必死の状況だったと思います。そうゆう意味で、二四死球を出した後、踏ん張って押さえたダルビッシュのシーンと最後のバッターを打ち取ったシーンがそれに繋がります。彼には、勿論実力もあるのでしょうが、やはり運があると私は思ったのでした。
そして、やはり極めつけはイチローです。今回のWBCは、本人も言っているように、日本チームの足を引っ張った場面や試合が確かに多々あったと思います。それが、同点延長10回の表で、あのランナー1塁3塁の場面に登場できたのです。そして、驚いた事に、1塁ランナーが2塁に盗塁して、1塁ベースがポッカリと空いてしまったのです。セオリーどおりならば、当然敬遠策が採られる筈です。ところが、韓国チームは、何故かイチローと勝負に出たのでした。
私は、この場面を見ながら、
「ここで凡打したら、イチローはボロクソに言われるだろうなぁ。」
「でも、ヒットでも打って、それが決勝打点になったら、今までの不振はすべてチャラになっちゃうんだろうなぁ。」
と、考えていたのでした。しかし、イチローはファールで粘りに粘っていたのでした。
「そうか!フォアボールでも、ここは彼の役目どおりだし、褒められても非難はされないよなぁ。」
と思っていた矢先でした。ご存じの通り、2点タイムリーヒットを打って、これが決勝打点になって、この試合のヒーローとなり、日本を優勝に導いたのでした。もし逆に、イチローが敬遠されていれば、もしかしたら韓国が勝っていたかもしれないのです。そう考えると、イチローの世界的な強運と言おうか、世界的な実力を感じたのでした。
原監督やダルビッシュも、人並み外れた実力と運は確かにあるのですが、やはり世界のイチローの実力と運は並大抵の人間が持っている運ではありませんでした。あの場面を持って来られる運と実力というのは、やはりスパースターでしかできない芸当だと思います。
かつて、ON(王や長嶋)に打たれた投手達が、
「誰も、好きこのんで長嶋さんや王さんに打たれる投手なんかいませんよ!寧ろ、他のバッターに対してより更に、全神経を集中して、全力で投げるのですが、なぜか玉が甘いコースに行ってしまうのですよ!信じられないでしょうが・・・。」と答えた選手がいました。
まさに、その通りなのです。実力のある者というのは不思議と、こういった場面を自ら呼び込む能力があるらしいのです。千両役者なんて言われますが、こうした場面を自ら作って、その期待に答えてしまうから実力者は凄いのです。つまり、”運は確かに実力のうちなのだ”と再確認出来た今年2009年のWBC決勝戦でした。