日本は、太平洋戦争で焦土と化した国土から奇跡の復興を遂げた国として、世界中の多くの学者や専門家はその理由をマスコミでコメントし、書物や文献等で、諸説が発表されてきた。特に、日本の多くのメーカーが、国際企業として成長してきた理由については、世界中に注目されるところとなって色々な理由が述べられていたと思う。それは、日本人の勤勉性だとか、教育の高さとか、はたまた禅にあるような文化だとか色々な理由が言われ続けて来たのであった。しかし、実感として”これだ”という決定的な理由に巡り会った事は無かったのである。
ところが、私は偶然にも20数年前に某国の国際共同事業での技術移転の現場通訳として参加した時に、日本と外国の製造メーカーとの決定的な違いとも思える多くの出来事を実体験することができたのであった。
勿論、私は学者でも専門家でもないし、今でもそうなのである。であるから、日本と外国のメーカーの歴然たる違いの源流を形成していると思われる根本的なシステムを考えたときに、この日本固有の独特のシステムしか思い浮かばなかったのである。そして、それは今でも変わらないのである。とはいえ、私個人としても、この日本固有のシステムにも多くの問題を抱えていると思っている。場合によっては、それが大きな弊害となっている製造メーカーも多々あると思っているのである。
そのシステムとは”終身雇用制”と”ボトム・アップ方式”である。な~んだと思われた方々は多いと思う。しかし、バブル崩壊以前の日本企業のほとんどは、”終身雇用制”と”ボトム・アップ方式”を採用していた筈である。勿論、世渡り上手な者が出世し易く、公正な個人評価が行われにくいとか、飛び抜けた優秀な人材が育ちにくいとか、古参の人員が占めて組織を硬直させるとか、終身雇用制の弊害は確かにあったと思う。また、ボトム・アップ方式によるビジネスシーンの決断力無さや決断時間の遅さなど、外国企業との交渉の際の問題点や弊害も多々あった事は事実である。
それでも、バブル崩壊によって、大手メーカーから中小零細メーカーまでの多くの企業が多かれ少なかれ、終身雇用制の部分廃止やら、トップダウン方式による経営という路線に方向転換をして来たのである。ところが、従来の終身雇用制とボトムアップ方式を頑なに堅持してきたトヨタ自動車やキャノンなどの企業だけが結果として業績の好調を維持し続けて、いわゆる勝ち組メーカーになってしまったのである。勿論、これらのメーカーも成長部分に於ける人員増加分を派遣や請負方式に依存したりしてはいたものの、基本的には従来の正社員に対する終身雇用制を維持・堅持したメーカーだったのである。
これらの勝ち組メーカーの方針に刺激されて、他の多くの製造メーカーはここ数年、急に再び方向転換を始めて、成果主義の見直しをしたメーカーが可成り増えているのである。結果として、これに伴って、業績を回復させたメーカーが急増しているという皮肉な結果が出ているようである。勿論、異論や反論が多々あることは承知の上で、敢えて従来の終身雇用制とボトムアップ方式の重要性を私が強調しているのは、それが日本の製造メーカーの強さの源流にあるからだと私は思うからであり、実際にその実例を知っているからなのである。
では一体、それはどんな実例なのだろうか? 私が体験した現場での実体験の一部を、次回このブログで具体的に書いてみたいと思う。